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なぜか無双の盗賊は、婚活パーティーに入れこむ!?  ~お人好し転生者の盗賊ライフ~  作者: さとうはるか


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2 追放――その後


 ブラウンのロングヘアの侍女長は、俺に向かって頭を下げた。

 慌てたように、俺の腕を掴んでいた兵士たちが手を放す。


「あの……こちらの部屋へどうぞ」


 アガサと名乗った侍女長は、そう言うと微笑んで俺を促した。

 俺はアガサの後についていき、案内された部屋に入る。


「まずはお座りください。そして……改めてお名前をお伺いできますか?」

「あ……御厨頼人――って、こっちではひっくり返すか。ライト・ミクリヤってことになるかな?」

「そのお名前で登録、ということで、よろしいですか?」


 アガサは椅子に座った俺にそう訊ねる。


「登録?」

「はい。国民としてもの身分証をお作りします。あの……転生勇者様がたは、皆、前の名前をお捨てになってると聞きましたものですから」

「そうなんだ。って、そりゃそうか。あいつが転生前の出身が一緒なら、アーサー・ブラックなんてありえないもんな。前の名前は何だったんだろう?」

「確か――黒田朝雄さま、と仰ってたかと記憶します」


 アガサの答えに、俺は思わず吹いた。


「まんまじゃねえか! まあ、なるほどね。俺はそうだな……ライト・ミクリヤでいいよ」

「そうですか、承知いたしました。それでは手続きを済ます間に、お食事などお取りください。それでは」


 アガサは丁寧なお辞儀をすると、部屋を出て行く。

 一人、やたら豪勢な部屋に取り残された俺は、少し待っていたが、何の音沙汰もないので手持ち無沙汰になった。


 ので、ちょっと席を立って部屋をうろつく。部屋には大きな鏡があった。

 その前に何気なく立った時。俺は驚いた。


「……若返ってる。それに――髪が赤い」


 顔が幼い。し、ちょっと背が低い。それに何より驚くのは、髪が赤茶っぽい色で、しかもいい感じにバサッとなってることだ。


「転生して――若返って……ちょっとイケメンになってるぞ」


 元の俺の面影を残しつつ、ちょっとイケメンになってる。こんなことがあるのか……と、感慨にふけろうかと思った瞬間、俺に一つの閃きがあった。


「そうだ! この歳でイケメンなら、充分に恋愛して彼女つくって結婚する――そんな可能性が俺にもあるじゃないか!」


 うほほほーっ! なんか盗賊を選択しただけで殺されそうになった挙句、追放されることになったけど――案外、いいんじゃね? 若いってことは、可能性があるってことだよ!


 とか喜んでるうちに、部屋のドアが開いて食事が運ばれてきた。

 ――凄く豪勢で、高級そうな料理。


 けど俺はふと思う。この料理に毒が入っていて、俺を静かに殺す気じゃないか、とか。あるいは料理自体は美味いけれど、それは最後の晩餐を与える慈悲で、食事が終わった途端に首をはねられる、とか――


「ミクリヤ様、お食事の準備ができました。どうぞお召しあがりください」


 戻ってきたアガサが、微笑んで俺に言う。

 ……この笑顔が偽物ってことがあるだろうか?


 いや、もう仮にこの笑顔が偽物だとしたら――もうそれはしょうがない。俺には運がなかったと思って諦めよう。どうせ、今さらジタバタしても始まらん。


「ありがとう……実は腹が減ってたみたいだ。ありがたくいただくよ」


 俺は席に座ると、美味しい料理を思う存分たいらげた。

 料理には毒は盛られてなかった。……まあ、考えてみれば、殺すつもりならそのまま兵士に引きずらせて始末するのが一番早いもんな。わざわざ、止める意味がないか。


「それではミクリヤ様、こちらがこのタイラニア王国の身分証になります」


 アガサは銀のカードを差し出した。見ると――『ライト・ミクリヤ』と書いてある。あぁ……この世界の文字、読めるのね。


「そしてこちらをミクリヤ様に進呈いたします」


 アガサは腰にベルトで巻きつけられる革製のポーチを差し出した。


「些少ですが……中には金貨で50万ワルド入ってます。当座の生活費にご利用ください」

「あぁ、色々ありがとう」

「あと、この地の地図が入ってます。多分、ミクリヤ様はご入用になるかと思いまして――身分証もあるので、冒険者として登録するのが一番、手っ取り早く収入を得られるのではないかと……」


 アガサはそこまで言うと、申し訳なさそうな顔でうつむいた。


「わたしにできるのは、ここまでです。ミクリヤ様、大変申し訳ないと思いますが、あとはこの王宮を出てご自身の力で――なんとか頑張ってください……」


 俺は笑ってアガサに言った。


「まあ、へんなことになっちゃったけど……判った――やってみよう。ここは一つ頑張るよ。アガサさんも、そんなに気にしないで」


 そして俺はアガサさんに連れられて、王宮の出口へと向かう。

 王宮の扉を出る時、アガサさんがもう一度、俺に言った。


「ミクリヤ様、くれぐれも……どうかお気をつけて――」

「ありがとう、アガサさん。貴女の親切は忘れないよ」


 俺は笑ってそう言うと、王宮を後にした。

 なんか王宮を出てしばらくすると――妙にウキウキした気分になってきた。


 そうだ! 俺は自由になったんだ! もう、便利屋として休日返上、毎日残業で擦りきれるほど働く必要もない。

 いや、働く必要はあるだろうけど――少なくとも、俺は自分の時間配分で働くことができるはずだ!


「ハハハッ! やったね、異世界にきてノー残業ライフ! 働き方改革だよ、これは!」


 俺は上機嫌になったが、そんな俺を街ですれ違う人がちょっとチラ見する。

 あ――浮かれ過ぎたか。


「そうだ……地図貰ってんだよな」


 俺は腰につけたポーチから、ごそごそと地図を取り出す。

 そして、その地図を見て――俺は思わず声を洩らした。


「やっぱり……『アザルド・ファンタジー』のマップと同じだ――」


 地図を持つ俺の手が震える。

 何故って、これが俺の知る通りの地図なら――


「――俺は、無駄なく最強の盗賊になれる……」


 俺はごくり、と唾を呑んだ。

 こうしちゃいられない。早速、行動を開始しないといけないが、まずはキャラ作りからだ。


 しかし前はゲーム画面で自分の能力がステイタス画面で確認できたが、この世界でそんなゲームっぽい真似ができるのか?


「ステイタス・オープン――なんちゃって」


 と唱えると、いきなり俺の目の前に光の画面が現れた。


「うわ! うわわわ! ちょっと、クローズ!」


 慌ててステイタス画面を閉じる。いや、街を歩きながらやる事じゃなかった。

 どっか、落ち着けるとこに行ってやらないと。


 俺は街中にカフェを見つけた。黒板が店の入り口に置いてあって、簡単にメニューが書いてある。

 それを見ると、『コーヒー 500ワルド』とある。なるほど……大体、円と同じか少し安いくらいか?


 店に入って、奥の隅の席に座る。コーヒーを頼むと、俺はステイタスをオープンした。


 え~……俺の能力値は――っと。


 ライト・ミクリヤ 盗賊 Lv1 スキルポイント 残り3


HP   31

MP   29

体力   12

気力   07

魔力   10

念力   09

敏捷性  16

技能性  18


 ――うわぁ……予想はしてたけど、ひっくぅー! 低すぎる! もう、今にも死にそう。

 多分、『盗賊』職業補正で、敏捷性と技能性にはプラス加算があるんだろうけど……それにしてもだよね。


 けど、Lv1だからな、こんなもんか。

 問題はスキル取得だ。ここで運命が変わる!


 とは言うものの、俺の知ってる『アザルド・ファンタジー』の知識がそのまま活かせるなら、最初に取得するスキルはこいつらしかない!


『罠技』『隠密』『探索』


 どうよ、この『盗賊』っぽいスキル! すぐに戦えそうな『剣術』とかは取らないで、敢えてこの三つ。そしてこれを取ってどうするかというと――


 目指すは、ナノパの高原――剣ウサギの巣窟!

 ここで俺は、まず最初にやるべきことをやる!


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