2 エリス、チェルシーのリセット
俺はエリスの声に、笑って答えた。
「まあ、そうなる。まあけど、それはレベルが上がるに連れて仕方のないことなんだ。どの属性の魔法も、レベルが上がるとコストはかかって来るようになる。今のコスト削減値は10だろう?」
「はい。じゃあ、スティール・ベルトはコスト2で登録、ということですね」
呑みこみのいいエリスに俺は頷いた。
「コスト0で使っていたのと比べると不便な気がするかもしれないが、その分、魔法の威力は上がってる。後で検証してみたら判るよ」
「はい! 楽しみです!」
エリスはそう言って笑った。
「――で、中、近距離はいいとして、遠距離用の魔法が必要だ。金属製の遠距離魔法は?」
「アイアン・ナイフとかです。コスト10。あ、これはゼロコストで使える!」
嬉しそうに声をあげたエリスに、俺は言った。
「うん。後でゆっくりと見るといいけど、コストゼロで登録できる魔法は、全部登録しておくといい。で、コストがかかる強力な魔法は、じっくりと自分のコストと相談しながら登録するんだ」
とは言うものの、魔力が30もあれば、コスト削減した後の魔法は光魔法も含めてほぼ登録できるだろう。エリスはこれで心配ない。
「エリスはそれでいいと思うよ。――で、チェルシーはどうする?」
「わたしはぁ……ちょっと恥ずかしいな」
そう言いながらも、チェルシーはステイタス画面を出して見せた。
チェルシー・ノア 僧侶 Lv5 スキルポイント 残り0
HP 51
MP 71
体力 18
気力 15
魔力 23
念力 25
敏捷性 18
技能性 14
獲得スキル:治癒Lv3 回復Lv2 解毒Lv1 気力増加Lv1 念力増加Lv1
「うん。ステイタス値は平均的に高い。優秀だな、チェルシー」
「ホントですかぁ、嬉し」
チェルシーはそう言って微笑むが、問題はその先だ。
「で、スキル取得は――やっぱりこういう感じか」
「やっぱり、わたしも直した方がいいのかしら?」
チェルシーが隣から身を摺り寄せてくる。いや、今、それをされると集中力が!
「え~と、治癒する人はまず治癒をカンスト。これはパーティー全体の命に関わって来るんで最優先だ」
「やっぱり、そうなるんですね」
ほぉ~、とチェルシーは息をついた。
「で、回復がその次。そして今のレベル帯では、増加魔法はまだ必要ない。治癒と回復がカンストしたら、増加魔法をとればいい」
ちなみに僧侶や治癒士の使う支援魔法は、五行属性の魔法とは別の支援魔法という枠だ。こちらにもコストが存在するが、沢山の魔法を使いこなす魔導士に比べれば、魔法コストの計算はそこまでシビアなものにはならない。
と、チェルシーがちょっと不満そうに言った。
「けどそうするとライトさん、わたし、フィリアとエリスが元気な時は、することがないんですよ」
「ん? まあ、治癒に特化するとそうなるな」
「けど、それじゃ寂しい~」
チェルシーはそう言って、腕をぐっと寄せてブンブンと身体を振る。
いや! そうすると胸の谷間が寄って、揺れて、凄いことになるから!
「わ、判った――チェルシーは、メンバーが戦闘してるときも、一緒に戦いたいんだね?」
「そうですぅ~」
チェルシーは、そう言って微笑んだ。
「じゃあ……ちょっと変則的だけど『使役』なんて一つとってみるのはどうだろう?」
「テイム?」
チェルシーは首を傾げた。う~む、色気があるのに可愛いポーズ……
「そう。モンスターを使役するスキルだ。これを専門にする人はテイマーと呼ばれるけど、チェルシーは念力が高いからそれなりのモンスターがテイムできると思う。モンスターを使役できると、戦闘中はモンスターに指示を出しながら戦って、仲間が傷ついたり回復が必要になったら助けることができる」
俺がそう説明すると、チェルシーはぐっと腕を寄せた。うわ!
「それ! ……凄くいいですぅ! その感じでいきたいですわぁ」
「なら治癒を5、回復2、使役1 ――という感じかな」
「それでいきますぅ~」
チェルシーはニコニコ顔で、あっさりリセットし、スキルを再取得した。
全員のリセットとスキル再取得が終わったところで、俺は言った。
「それじゃあ、ダンジョンに戻って新しい戦い方を検証してみようか」
「「「はい!」」」
そうして俺たちは、再びアングラ迷宮に入った。
「俺は後ろで見てて、基本的には口出ししないから――自分たちの新しい力を試してみるといい」
三人は緊張した面持ちで頷くと、迷宮を進んでいった。
「あ、敵がいます、先の方――三匹」
エリスが声をあげる。
「私がまず仕掛けます。向かって来た奴は、フィリア、頼みます」
「判った、まかせて」
と、先の方に見えた剣ウサギに、エリスが魔法を飛ばす。
「アイアン・ナイフ!」
数本の鋭い金属片が、空中を飛んでいく。と、三匹にアイアン・ナイフが突き刺さる。
「さあ、来い!」
と、フィリアが身構える。――が、剣ウサギは来ない。
「あれ……? まさか、全滅させちゃいました?」
エリスが驚いている。当然だ、レベル5金属魔法なら、1階層の剣ウサギなど、全滅で当然。これが本来、あるべき姿だ。
「凄い……今までと――全然違う」
「そうだな。これなら、私の出番がないかもだ」
フィリアはそう言って笑った。が、もちろん、先に進むとそんなはずはない。
奥に進んだところで出てきた、ツリーマンの群れで、戦闘になる。
ツリーマンは木のような人型モンスターだ。手のような枝葉を伸ばしてきて、攻撃してくる。動きは遅いが、攻撃力は強い。
遠距離魔法で2体は倒してしまったが、わらわらと群れでやってくる。
フィリアが剣を抜いて、応戦体制をつくった。
「来い! ツリーマン!」
ツリーマンが木の枝を叩きつけてくる。
「パリイ!」
フィリアはそれを剣を頭上に斜めにかざして受流す。そしてすかさず――
「反撃!」
一気に返す刀で、ツリーマンを斜め斬りにした。
と、フィリアの顔つきが変わる。
「いける……」
フィリアの顔は驚きから確信へ、そして気迫へと変わると、傍のツリーマンに向かっていった。
ツリーマンの攻撃を弾いて反撃、別の敵の背後からの攻撃を受け流して反撃、突きこんでくる剣線を逸らして、逆に突きこみ!
「いい動きだな……」
俺は感心した。技能性は確かに高かったが、フィリアには剣の才がある。
敵の攻撃を捌いては、瞬く間にツリーマンを次々と倒していった。
――と、見惚れていた俺はふと気づいて、声をあげた。
「おい! 最後の一体は、とどめをさすな!」
「あ――はい!」
フィリアは少しだけツリーマンを傷つけると、その場を離脱する。
俺はチェルシーに声をかけた。
「チェルシー、試しにこいつをテイムしてみるんだ」
「判りましたわ」
チェルシーは前に出てきて、掌をツリーマンに向けた。




