4 フィリアの選択
「「「どこ!?」」」
――と、驚く女子組に、俺は言った。
「まずフィリアは突っ込む前に、相手はノロいんだから時間がある。チェルシーは支援魔法を持ってるんならそれを使ってからいくべきだし、仮に支援魔法を使わないにしても、先に遠距離攻撃をして数を減らすべきだ」
「それって――私が遠距離魔法で先に攻撃するべきだったってことですか――」
エリス、呑みこみは速いな。俺は頷くと、フィリアを指さした。
「そして、フィリア!」
「ひゃ、ひゃい!」
「君……実は脚が遅いだろう?」
俺の指摘に、フィリアが青ざめる。
「そ……そんなことは――」
「敏捷性の数値、レベル5の今で、幾つだ?」
俺の問いに、フィリアがうつむいて恥ずかしそうに言う。
「……8です――」
10以下か! 予想を上回る低さ!
「君は、速剣タイプには向いてないから、真っ先に飛び込んでいくいような戦闘スタイルじゃないんだよ」
「けど! あたしは、そう戦いたいから――」
「強くなりたいんじゃなかったのか?」
俺は抗議するフィリアを、真剣な眼で見つめた。
「人は長所を伸ばした方が、成長が早い。やりたいことと、できること、向いてることは違う場合があるんだ。本当に強くなりたいんだったら、やりたいスタイルではなく、向いてるスタイルを伸ばした方が、より強くなれる」
俺の言葉に、フィリアが驚きと動揺の入り混じった顔で黙る。
俺はそこで軽く、微笑した。
「――と、俺は思うけどね。無論、君の人生なんで、君のやりたいように選択すべきだ。それが一番、重要なことではあるよ」
「……あたし――どうしたら、強くなれるんだ?」
フィリアは覚悟を決めた声で、俺を見つめた。
「そうだな……明かしたくないなら無理にとは言わないけど、現時点でのステイタスを教えてもらえば、参考になるスタイルが見えてくると思う」
フィリアは覚悟を決めたようで、手からステイタス画面を出すと、テーブルの上に出して俺に見せた。
フィリア・バックハウス 剣士 Lv5 スキルポイント 残り0
HP 78
MP 41
体力 25
気力 28
魔力 12
念力 13
敏捷性 08
技能性 17
獲得スキル:剣術Lv3 長剣術 lv2 防御の構え 毒耐性 回避
「これは……」
俺は思わず眉を寄せた。不安げな顔で、フィリアが訊いてくる。
「な、なにがまずいところがあるのか?」
「まず……スキルの取り方が、マズすぎる――」
「えぇっ!?」
フィリアが愕然とした表情になる。
「ど……どこが?」
「まずこの『防御の構え』は、攻撃を正面から受けて守りきるスキルだ」
「そうだが――」
「それに対し、『回避』は相手の攻撃をかわすスキル。……この二つを持ってるのは矛盾だ。どっちの戦い方をしたいんだ?」
「そ……それは、適宜対応で――」
フィリアはしどろもどろでそう言うが、俺は苦笑した。
「いい言葉知ってるな。けど、これは戦い方のスタイルを自分で見極めきれてない証拠だ。どっちつかずになって、戦闘の時に迷いが出る」
「た……確かに――」
フィリアは納得した。俺は気持ちが軽くなるように、微笑んでみせた。
「それから『毒耐性』。――これ、なんで取った?」
「いや……二階層のギガ・ムカデに前に刺されて、それで毒に耐性があった方がいいかと思って……」
そうだろうと思った。けど――
「この階層で、毒耐性でスキルポイントを使うのはもったいない。基本的には解毒剤があれば回復できる毒ばかりだからだ」
「けど――お金がなくて……」
「ま、そうなんだろうけど。けど、目先の利便性のために、将来のための1ポイントを使うのはもったいないって話だよ。――それから何より! どうして『長剣術』取ったの?」
フィリアは少ししょげて答える。
「それは……個別武器術もあった方が、より強くなるかなって思って――」
「確かに、それはそうなんだけど。けど、君がまずやることは、剣術をレベル5まで上げてカンストすることなんだ」
俺がそう言うと、フィリアは顔を上げた。俺は話を続ける。
「武器術系スキルは、スキルポイントで取れるのはレベル5までだ。レベル5まで上がった後は成長に応じてレベルアップするようになる。ここからが大変なんだけど、レベル10までいくと――上級スキルが取得できるようになる」
「剣術だったら……上級剣術!」
フィリアが眼を輝かせる。俺は頷いた。
「そうだ。それに何より武器術系がレベル6になると、取得できるスキルがある。それが『気力術』スキルだ!」
「あ!」
フィリアが驚いた顔をみせた。
「気力術を剣術に重ねることで、威力は段違いになる。本当の戦いは気力を使えるようになってから――だって言われてるくらいだ。だから何よりまず、剣術をレベル6にするのが先行なんだ。だから剣術レベル5までは、スキルポイントを真っ先に注ぎ込むのが正解なんだ。これは戦闘スタイルに関係なく、そう」
「そっかぁ……ああぁぁl! あたし、間違ってたー! 大分、寄り道をしてしまったってことだよね!?」
そう嘆いて声をあげるフィリアに、俺は笑ってみせた。
「大丈夫。まだレベル5だろ? レベル5までは――『リセット』ができる」
「『リセット』!?」
フィリアも、そしてエリスとチェルシーも驚く。
「そう『リセット』。これはレベル5までに、一回きり使えるものだ。それまでの取得スキルを、全部捨ててゼロに戻す」
「そ……そんなことが――?」
「ここ、見てごらん」
俺はステイタス画面の端の方を指さす。と、フィリアが声を上げる。
「あ! 確かに『スキル・リセット』って書いてある!」
そう。俺はこれを確認してたから、今までの話をした。
もしリセットできないレベルだったら、今までの無駄スキルの話をしてもしょうがない。これから、どういうスキル取得をするか――という話をしただろう。
だが彼女は――いや、彼女たちはまだレベル5だ。リセットができる。
「うん。けど、リセットするしないも君の自由だ。ここまでの選択を無駄にしない――って選択肢だってあるんだよ」
「いや、あたしは――リセットして、やり直す! とりあえず剣術レベル5にするとして……後は何を取得したらいい?」
フィリアは真剣な面持ちで訊いてきた。そう、俺はその言葉を待ってた。
「俺が思うに――君の適正スタイルは『反撃型』だ!」
「か……カウンター――?」
「そうそのために必要なスキルは、『パリイ』。そして『反撃』だ」
俺は確信を持ってそう告げる。と、エリスが声をあげる。
「な、なんか『反撃型』って格好良くないですか?」
「そうねえ。凄くいい感じ」
チェルシーもそう言って微笑む。
「『反撃』は、敵の攻撃を防いだ直後に攻撃を繰り出すスキル――は知ってるが、『パリイ』は?」
「『受流し(パリイ)』――それは武器で持って、相手の攻撃を弾いたり受流したりして防御する技術だ。そしてこれは『反撃』と相性がいい。――ここに注目だ」
俺はフィリアのステイタスを指さした。
女子組はみんなで覗きこむ。
「フィリアのステイタスの特徴は、剣士特性で体力・気力が高いのはもちろんだが、注目すべきはこの『技能性』の高さだ。レベル5で職業補正がなくて17という数値はかなり高い。フィリア、足は遅いけど、剣さばきは上手いだろ?」
俺がそう言うと、フィリアは顔を赤らめた。へえ、そんな顔もするんだ。
「ま……まぁな。剣の扱いには自信がある」




