3 三人の戦闘スタイル
翌朝――女子組は元気に食堂にやってきた。
「おはようございます、ライトさん!」
あんなに酔ってたエリスだが、普通にしてる。
「お、おはよう……」
なんか気持ち、緊張感のあるフィリアだ。どうかしたのか?
と、チェルシーは笑顔だが、少し気怠い感じだ。――朝から色っぽすぎるだろ!
「おはようございます……ライトさん――」
「どうした? 酒が残ってる?」
「嬉しすぎて、ちょっと飲み過ぎたみたいですわ。――けど、多分、朝御飯をいただけば大丈夫!」
チェルシーは元気にそう答えた。
俺たちは朝食を食べた後で、4階の休憩ルームに移動する。
休憩ルームにはジュースやコーヒー、紅茶の無料自販機が置いてあり、自由に飲める。いやぁ――魔道具、凄いな。
「最初にだけど――君たちが目指してるパーティースタイルとかある?」
「「「え?」」」
俺の問いに、女子組は首を傾げる。
どうやら考えてなかったらしい。
「あ~……パーティーってのは役割分担をして、戦闘に臨むものなんだ。君たちは剣士、魔導士、僧侶だからある程度決まっては来るけど――例えば魔導士が支援しつつ剣士がメインで戦うスタイルが、判りやすいかな。後は剣士がかく乱して、魔導士がとどめをさすスタイルもありうるけど」
俺の言葉を聴いて、フィリアが腕組みをする。
「そう言えば、今までそんな打ち合わせしたことなかったな……」
「そうですね――なんとなく、みんなでワーッと」
「戦闘って、そういうものだと思ってましたわ」
やっぱり。道理で半年経っても二階層を攻略しきれないわけだ。
俺はさらに話を続けてみる。
「まあ、役割分担はパーティーで必要だけど、パーティーのために自分の個性を殺したりするのは却ってよくない。――っていうのも、パーティーが解散したりした時、そのパーティーに特化したスキル取得をしたりして、他のパーティーでは全然、使い物にならなかったりしたら困るからだ」
「おぉ……」
フィリアが感心したように声を洩らす。
「だから事前に、『自分の目指すスタイル』をまずちゃんと見極めておくことが重要になる。その自分の理想とする姿をイメージしつつ、パーティーの中で戦うことを、仲間内でよく話し合って成長することが重要なんだ」
「ふ~む……やっぱり、ライトさん凄いです!」
エリスがそう声をあげる。いや――実は俺はそのすり合わせが面倒で、ソロスタイルになっちゃったんだけどね。
そんな俺がパーティー指導か……
「というわけで――フィリアの目指す剣士っては、どんな感じ?」
「うむ! もちろん、強い剣士だ!」
「いや、そうじゃなくてスタイル。素早く相手の攻撃をかわして斬りつけるとか、相手の攻撃をドーンと受けて反撃で返すとか――そういう違いだよ」
俺がそう言うと、フィリアは動揺した顔をしたが、なんとか答える。
「相手を素早くかわしつつ、強力な一撃でドーン、とやっつけるスタイルだ!」
「なるほど……」
こりゃあ、イメージしてなかったな。
次はエリスに訊く。
「エリスはどういう魔導士を目指してるの?」
「はい! それはもう――全ての魔法に精通した大魔導士です!」
「あぁ……そう。なるほどね」
これもちょっと漠然としていて――怪しい。次はチェルシー……って寝てる!
「チェルシー! ちょっと起きろ! やっぱり、昨日、呑み過ぎだったんだろ!」
「あ……ライトさん……。おはようございます」
「ちょっと! 話し聴いてた?」
「いえ~……。なんですかぁ?」
眼をこすりながら、チェルシーが訊いてくる。
「チェルシーが理想とするスタイルだよ。イメージとかある?」
「う~んと……皆が困ってる時に、『さあみんな、元気を出して! わたしが癒してあげます、ヒール!』『おぉ……さすが聖女様!』――みたいな感じの」
何故かアニメのワンシーンだよ! てか、エロ保険医まがいの服なのに、目指すの聖女様かよ!
「……うん、まあ色々判った。――とりあえず、ダンジョン行ってみようか。そこでみんなの戦いっぷりを見てみる」
「「「はい!」」」
そんな感じで俺たちはカプセル宿屋を出て、再びアングラ迷宮へ。
しばらくは普通に進むが、一階層の終わりごろ――俺の目指すポイントがくる。
この先はジャインアント・アーントの群れが出るところ。
だが俺は敢えて、何も教えない。ここでパーティーの特徴が浮き彫りになるはずだ。
――角を曲がると、巨大蟻の群れが見える。
「ジャイアント・アーントだ! あたしが出る!」
フィリアが剣を抜いて駆け出す。
ジャイアント・アーントは決して素早いモンスターじゃない。奇襲が成功すれば、少し数を減らせるが――
――ってぇ!? 足遅いよ! 全然、蟻に気付かれてる!
「イヤァァァッ!」
蟻に斬りつける。一撃で蟻を粉砕するが、なにせ相手は数が多い。
「私も攻撃します! スティール・ベルト!」
金属のベルトが幾状にもなって飛来していく。
その金属ベルトが蟻の首を跳ねる。おぉ! 威力は大したものだ。
「わ、わたし支援しますわ。念力増加!」
チェルシーがエリスに支援魔法を使う。……ホントは、最初にやるべきことなんだけどな。
「ハッ、ハッ、ハッ!」
フィリアが蟻の群れの中で奮闘している。と、背後からの蟻の触覚攻撃に、背中を攻撃された。
「あぁぅっく!」
「フィリア、戻ってきて! 治癒します!」
「すまない、チェルシー!」
フィリアが走って戻って来るが、まっすぐこっちに駆けてくる。
エリスが移動して、フィリアを背中から狙う蟻に掌を向けた。
「ファイア・ボール!」
次は火炎魔法? 確かにスティール・ベルトでは少し届きづらい距離だったかもしれんが……
戻ってきたフィリアが、チェルシーに治癒を受ける。
「よし、もう大丈夫だ、チェルシー! 行って来る!」
「あ、少し待って! 気力増加!」
支援魔法、二種類目か……
その後、威力の増したフィリアの剣技が炸裂し、エリスのスティール・ベルトで斬り裂かれた蟻の群れが全滅した。
「イェーイ! あたしたち、やったな!」
「うん、ちゃんと倒せましたわ!」
フィリアとチェルシーがハイタッチをして喜んでいる。
と、エリスが俺に訊いてきた。
「ライトさん、どうでしたか? 私たちの戦いは?」
全然、なってねえっ! ――と、叫びたいところだったが、努めて平静に俺は言った。
「うむ……こう言ってはなんだが…ちょっと不十分なところがあるな」
「「「えぇ!?」」」
不満げな女子組に、俺は言った。
「とりあえず、君たちに欠けてるものは判った――一度、迷宮を出ようか」
「は……はい――」
エリスはちょっと、しょげて。フィリアは不満げな顔で、俺についてくる。
俺は迷宮の外の喫茶店に入って、三人に改めて言った。
「全体を通してみて判ったことがあるけど、とりあえず最後のジャイアント・アーントとの戦いで、その特徴がはっきり判るから、あの戦いを振り返ってみよう」
「……お願いします」
エリスが真剣な顔で頷く。
「まずあの蟻軍団とは、何回か交戦してるだろう?」
「あ、はい」
「ならば、あいつらがそんなに素早く動くモンスターじゃない、ってのは判ってるはずだ」
俺の言葉に、女子組は頷く。フィリアが口を開いた。
「だから、あたしが真っ先に奇襲を仕掛けて――」
「そこだ!」




