第二幕
「師匠、ありがとうございました」
「おう!また来るんじゃよ」
俺たちは手を振って別れを告げた
隣街は遠いから、もうここにはあんまり来られないかな…
「ミラノさん、行きましょう」
「はい!」
遠ざかっていく師匠の顔には
少し寂しさがあったように思える
「術はどうですか?」
「かなり使いこなせるようになりました!
早く成果を見せたいです!」
そんな会話をしながら歩いていると
俺は違和感を覚えた
後ろから気配がする…
つけられている…?
でも、振り向いても誰もいない
(気のせい……かな?)
その違和感を抱いたまま、家に着いた
「お風呂入りますか?ご飯にしますか?」
「あー風呂にします
先入りますか?」
「いえ、私はご飯の準備をするので
お先にどうぞ!」
「了解です」
俺は風呂場に行き、服を脱いだ
異世界に来てから二週間経った
今、現世はどうなってるんだろうなぁ
両親は心配してるだろうし
事件にはなってるか
現世について考えるのはやめよう
シャワーを浴びて、風呂に入る
……
自分で言うのもなんだが、俺は勘が鋭い
嫌な予感がする…
このムズムズする感じ
もしかしたら、ミラノさんに何かあるかも…
すぐに風呂を出た
(服を着ている暇はない)
「ミラノさん!!!!!」
「…はい?ってなんで…」
普通にいるんかい
「あ…すみません…」
……………………
俺異世界で2回も裸見られなあかんの
マジでなんなん(タイトル変更推奨)
俺はゆっくりと風呂に入って
若干気まずげに飯を食って寝た
その次の日も、その次の日も
師匠に言われたことを意識して
剣を振った
ミラノさんも、俺とは次元の違う特訓をしていた
いいなー
異世界に来て17日目
「ヒラメさん!この街でお祭りがあるみたいです!行きませんか…?」
へーこの世界にも祭りという概念はあるのか
「それはいいですね、行きましょう!」
「やったーー!」
笑顔が眩しい…
「ちなみに、どんな祭りなんですか?」
「んー、いつもよりもお店が多かったり
あとはー、んーと、よく分かりません!」
後半Siriみたいな感じになってたけど?
「詳しくは知らないんですね…」
「はい…子供の頃、1回連れて行ってもらったぐらいなので」
「まあ、祭りで楽しくないわけないか」
「そうですね!夕方になったら行きましょう!」
まさか異世界で女の子と祭りに行くとは
ちなみに高校の時は、男と行ってはぐれた
夕方になりまちた
外で剣の練習をした後、家に戻ったが
ミラノさんがいなくなってた
(どこ行ったんだろう)
また嫌な予感がする
前にもこの感覚があった
もしかして…
「お待たせしました!」
ミラノさんが浴衣を着てやってきた
嫌な予感とは真逆オブザファイヤー
俺の勘カスすぎる
てか浴衣可愛い
「どうですか?」
ここにきて、男子高校生、硬直
わたくしはこんな経験をしたことがないため
どうすればいいか分からぬ
「ニアッテマス」
「ありがとうございます!」
「イキマショウカ」
「はい!」
祭りは人で溢れている
この辺りでもかなり人気な祭りらしい
店がいっぱいあるし、なんか知らんけど、どこかから大きな声が聞こえる
「変な祭り…っすね」
「なんか昔と変わってますね
昔はここまで人いなかったんですよ」
「ミラノさん知り合いとかいますか?」
「んー、いるにはいるんですけど
ここにはいなさそう…あ…」
「ん?どうしましたか?」
「なんで来てるの?」
聞いたことある声だ
「かぐや…」
かぐやことミラノさんの妹だ
正直、あんまり会いたくない
「なんでお姉ちゃん祭りなんかで遊んでるの?ほんっと呆れる」
「どうした?かぐや」
さらに、最悪な状況になった
おそらく
「お父さん…」
「ああ、お前か」
まさかの祭りで、お父さん妹コンビに会うとは思わなかった
「はあ…お前の姿は見たくなかったんだがな」
「お姉ちゃん、恥ずかしいと思わないの?」
「………」
ミラノさんは黙り込んでしまった
そして、無意識に俺の服を掴む
「てか、その男…」
急に俺に矛先が向いた
「お父さん!この人!」
「ああ、君か。少し話したいことがあるのだが、いいかね?」
「はい?」
「かぐやがこの前、街で君を見かけて一目惚れしたらしいんだ。
ぜひ、家に来てくれないかな?
聞くところによると、家も金もなくて困ってるらしいじゃないか。家に来てくれれば
最高のおもてなしをしよう」
「私の目は確かなの。あなたの雰囲気は
私の好み。家に来れば、永遠に幸せにしてあげる。こんな落ちぶれと離れられるわよ」
「どうかな?ヒラメくん」
名前まで…俺のことをよく調べているらしい
周りの人たちも
「あいつ羨ましい…」
「確か、かぐや様って次期王女だよな」
「まじかよ、なんであいつが…」
と、口を揃えて言った
次期王女…?とかはよく知らんが
すごいらしい
俺はミラノさんの方に目を向けた
一生懸命、何かを堪えている
大丈夫だよ…ミラノさん…
「すみません。お断りさせていただきます」
そう言った瞬間、周りの人も含めて全員が驚いた
「おい、あいつ断ったぞ…」
「どういうことだ…」
次々に疑問の言葉が投げかけられた
「ヒラメさん…なんで…」
「どうしてだ…?ヒラメくん」
「うーん、俺の勘…ですかね
ちなみに、俺はあなたに感謝しています
ミラノさんをこの世に送り出してくれたこと
そのおかげで、今俺は幸せです。
妹さんなら、俺なんかより、いい男を見つけられるんじゃないですか?知らんすけど」
「俺、ここに来てからずっとミラノさんに助けてもらってるんです」
みんな、口をポカーンと開けていた
「とりあえず、俺はこの人と生きていきます!失礼致しました!」
俺はミラノさんの手を握って、走って、その場から離れた
よく分からん場所に来た
「はあー俺そういうキャラじゃないのに」
かっこいいこと言って湧かせるのは得意じゃない
ちゃんと断れてよかったー
「ミラノさんを裏切るわけないじゃないですかーってあれ…」
ミラノさんは何も言わず、俯いていた。
「……ミラノさん?」
次の瞬間、ミラノさんが急に抱きついてきた。
「ど、どどど…どう…しました?」
ミラノさんは泣いている
「ほんとに…ほんとに嬉しかった…」
「え?いや、大したこと言ってないですよ!」
他の漫画の主人公の方が良いこと言ってる
俺は残念な高校生男子
ボキャブラリーが下の下の上のため
あれぐらいの言葉しか出てこなかった
けど
「あんなこと…誰にも言われたことなかったんです…嬉しかった…」
そうだったのか…
ミラノさんの頭を撫でた
めっちゃ熱い
「祭り…ヒラメさんと来られてよかった」
「…俺もです」
この一瞬がずっと続いてほしかった
ついこの前まで何も楽しくなかった人生が
急に彩られていく
俺は、幸せでいっぱいだった
現世のことを考えると、少し胸が痛む。
でも――
今は、この世界を離れたくないと思った。
ミラノさんと、もっと色んな場所に行きたい。
もっと色んなものを見たい。
……そんなことを考えられるようになっただけで、俺は幸せだった。
その瞬間、花火が上がった
この世界にも花火ってあるんだ
いや、花火とはちょっと違う…
そういう魔法…かな
「綺麗…」
「そうですね…」
息を吸う
「ミラノさん、俺はずっと一緒に――」
―――みんな、知ってた?
不幸の始まりは、いつだって幸福の中にあるって
灰色の雲、灰色の空気、赤く染まった木
「おい!何突っ立ってんだ!死ぬぞ!」
耳元に煩わしい声
ああ、
黒崎ヒラメ、2度目の転生




