第176話 追放幼女、貨物駅を構想する
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途中の地形などを確認しつつ、あたしたちはスカーレットフォードの正門前まで戻ってきた。
「うーん。街壁はどうやって超えようかな。やっぱり上を高架で通す感じかなぁ。でもそれだと結構高いところをずっと通す感じになっちゃうし……」
思考を整理するために呟いていると、メレディスが口を挟んできた。
「我が主、トロッコを直接中に入れるおつもりですか?」
「え? うん。そのつもりだよ。だって、金塊は盗賊に狙われるんでしょ?」
「そうですね。ですが、見えやすい位置にそのような設備を置くと敵の侵入経路となってしまいます」
「あ、そっか。そういえばそうだね」
前も水路を伝って侵入されたし。
「じゃあ、どうしたらいいと思う?」
「そうですね……」
メレディスは腕を組み、じっと考え始める。
「街壁の外に専用の荷卸し場を作るのはどうでしょう? そこも街壁で囲ってしまえば騎士団も守りやすくはなりますよ」
「なるほどねぇ。でもそこから金庫まで運ぶのも……あれ? そうだ! だったら地下に埋めちゃえばどうかな?」
「地下に?」
「うん。地下室を作って、そこから通路……あ! そもそも金庫まで繋げればいいんじゃない? ねぇ! どう思う?」
そう言って見上げるが、メレディスは困ったような表情を浮かべていた。
あ、あれ?
「我が主、何を言っているのかよく分かりません。つまり? 地下室を作るのですか?」
「あのね。地下鉄にするの。それならお堀の地下を通るし、それだけ深いところなら敵も見つけられないんじゃない?」
「……そうですね。ですが金鉱山からたどれば入口はすぐに見つかってしまうのでは?」
「あ、そっか……じゃあ! 金鉱山の地下からトンネル、掘ればどう?」
「そのようなことが?」
「うん。多分? それにさ。ロイドたちに協力してもらえば早くできると思うんだよね。土の精霊魔法って、岩を動かしたり割ったりするのは得意なんでしょ?」
「そうですねぇ。ただあいつらの役目は工事ではなく我が主を守ることですから、あまり長期間工事に動員されると困りますね」
「そっかぁ」
「土属性の魔法が使えるスケルトンはいないんですか?」
「いないよ。魔法が使えるのはシルバーウルフのスケルトンだけ」
「そうですか……」
メレディスは難しい表情で、もと来た道のほうへとちらりと視線を送る。
「ねぇ、土の魔法を使う魔物ってどんなのがいるの?」
「……良く知られているのはゴブリンメイジですかね」
「ゴブリンメイジかぁ……」
あのときせっかく倒したのに、無駄にしちゃったからなぁ。
「ああ、あとはアースドラゴンなんてのも」
「えっ!? ドラゴン?」
「ええ。アースドラゴン。大地を司る巨大なドラゴンで、岩を自在に操り、天変地異を引き起こすとかなんとか」
メレディスはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「そ、そんなすごい魔物がいるんだ……」
「一国を一夜にして滅ぼしたとか、その姿を目にして生き残った者はいないとか。とにかく恐ろしい存在だって噂ですよ」
「そうなんだ……」
こ、怖いね。そんなのがもし攻めてきたらうちなんかひとたまりも……。
「我が主、噂ですよ」
「えっ?」
メレディスは少しバツが悪そうしている。
あれ? どういうこと? 噂って……あっ! そっか!
「目にして生き残った人がいないなら、一国を一夜にして滅ぼしたかどうかなんて分かるわけないってこと?」
「ええ。そういうことです。なんで、現実的に考えればゴブリンメイジでしょうね」
「そっか。でもあたし、無駄にしちゃったんだよね」
「無駄にした?」
「うん。うちね。昔、ゴブリンメイジの率いる群れに襲われたことがあるんだ。それでね。なんとかやっつけたんだけど、スケルトンにしようとしたら失敗しちゃってなくなっちゃったの」
「へぇ。そうですか。よく無事でしたね」
「うん。ホント、そう思う。あたしも死にかけたもん」
「そうでしたか」
「うん……」
当時の絶望的な状況を思い出し、なんともイヤな気分になる。
「それなら、次に襲われたときはちゃんと骨はお持ちしますよ」
メレディスは自信満々な様子でそう答えた。
そっか。ゴブリンメイジくらいなら余裕ってことかな?
でもゴブリンキングとは戦いたくないし……。
「うん。ありがとう。でも、無理しないでね?」
「もちろんですよ。ありがとうございます」
「うん。じゃ、そろそろ中に入ろっか」
「はい。かしこまりました」
こうしてあたしたちは正門をくぐり、村の中へと入るのだった。
◆◇◆
一方その頃、ダヴベリーにサウスベリーから派遣された侯爵騎士団の部隊が到着していた。そんな彼らをダヴベリー男爵は村の入り口まで出迎える。
「サウスベリー侯爵騎士団の皆様、ようこそお越しくださいました。私はダヴベリー男爵を拝命しておりますケネス・ハルクヤードと申します」
ダヴベリー男爵はそう言って、恭しく礼を執った。
「ダヴベリー男爵閣下、お初にお目にかかる。私はサウスベリー侯爵騎士団副団長、フランク・ハーディーだ」
フランクはそう言って下馬すると、男爵と握手を交わした。
「侯爵閣下の勅命で、ダヴベリー水源確保のための西方開拓を支援することとなった。これからよろしく頼むぞ」
「これは助かります。我々だけではとても、シルバーウルフの相手はできませんでしたからな」
「そうか。だが今回の部隊は選りすぐりの精鋭たちだ。よほど大きな群れに襲われるようなことでもなければ問題ないだろう。安心するがいい。」
「それは心強いです。さあ、こちらへ」
こうして彼らは門をくぐり、高い木の壁の向こうへと姿を消すのだった。
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