第7話 分身ツバキの最期
物語はクライマックスへ
いつもそばで案内役として助けてくれていたツバキと戦う時がきた。
しかし、これはただのボスであるガーファレンを呼び込む余興に過ぎない。
光はしばし余興を楽しむのであった。
円形のフィールドには大きな鐘が浮いていた。
大きな鐘に圧倒されているとすぐにツバキが追いついてきた。
「さぁ、愚かな光様はここで朽ち果てるのです。」
「く、くそっ! こんなもので・・・」
痛い芝居をするのもなかなか難しい。改めて、ツバキの芝居がすごいものなのだとわかった。
「あやつらの好きにやらせてもよろしいのか?ステンドガラスは粉々にして床は大きな亀裂が・・・」
「たいへんな道のりを繰り広げさせてしまったのだ。分身相手に楽しめるのならば少しくらい余興を楽しんでもいいだろう。あやつも誘き寄せる事が出来るんだ。一石二鳥というものだ。」
「お前さんのマイペースな性格にはたまに笑わされる。」
「さあ、無駄な心配はやめてお前も鑑賞するのです。」
初めて、ツバキの皮肉を聞いた時からいつか本気で戦いたいと思っていた。いつかは完膚なきまでに痛めつけようと思っていた。
こんな形で戦えるとは思ってもいなかったが良い機会だ。ボス前のウォーミングアップだ。存分に楽しんでやる。
「さあここからが本番だ!木っ端微塵にしてやる!」
「せいぜい、悪あがきしなさい!」
演技だとわかっていても腹がたつ。
「集中だ。あの力を! さあ行くぞ!!」
「こちらも行きます。光の剣よ。出でよ」
いつも魔法で戦っているツバキは剣を生成する。どうやら、向こうも本気のようだ。
僕はツバキに急接近し、高速で斬りつける。
「甘いですよ。さあくらいなさい!」
『聖なる鐘よ。私の語りかけに答え、敵を蝕むのです。 セイント・レイーナ・コリン!』
フィールドにある大きな鐘が前後に揺れ、あの嫌な音が流れる。無敵のバリアもすり抜け、脳に直接響いてくる。もし、生身でこれを受けてしまうとただでは済まないだろう。
「くっ、体が・・・」
ツバキは即座に僕に急接近し、剣を突き立てる。
「さあ、立ちなさい。」
「言われなくても、今に殺してやる。」
僕は受け止められることを承知で剣を下から振り上げ、魔法を唱える。
「スフィア!」
案の定、剣の攻撃は防がれたが、衝撃波によってツバキが少し、よろめいた。
「なかなか、動きがよくなってはいます。でも、力任せな攻撃が多すぎる。こんな事をしていたらすぐに力尽きますよ!」
「そうか。なら、力尽きるまでに殺してやるよ。」
僕はフティスと戦った時からこの強力な力を使いこなすうちに気づいたことがある。それは最初に手にした武器がその力と“共鳴”しているということだ。
どいうことか・・・この武器にも意思があるということ。最初に武器が語りかけてきたこと『剣は敵を斬りはらい、銃は敵を撃ち抜かん・・・この武器を使いこなさんとする者、いずれ、英雄とならん。』
しかし、共鳴しているからといってどうすればいいんだ。最大限にこの武器を活かす方法が何かあるはずだ。もしかすると・・・そうか・・・
「ふふふ、僕はとっておきを見つけたよ。喜んで受け取れよ。」
僕は意識を集中させる。再度、体に力がみなぎってくる事を思い出すんだ。
このゲームは想像すればなんだってできるんだ。
武器の力を最大限に引き出す事も容易いはず、ラージャの時にツバキが行なっていたような真似ごとをすれば成功するはずだ。
『我、汝の力をここに示さん・・・剣は烈風の如き速さで敵をなぎ払い、銃は烈火の如き火炎で敵を撃ち抜く。』
すると、武器が異常なまでの光を放ちさらに力と共鳴しはじめた。
『了承した。我が主人よ。汝のためにこの力分け与えん・・・』
ゲームが始まって2回目の武器からの返答だった。
「行くぞ! ツバキよ覚悟しろ!」
「光様その厨二病っぷり、お見事です。武器と貴方の力の共鳴反応を最大限に活かすことができていますよ。これは楽しめそうです。」
余裕の表情を見せるツバキに問答無用で突っ込む。
共鳴反応を起こしてから、剣には風のような物が纏はじめ、銃にも同じように炎が纏はじめた。
これなら、ツバキどころかガーファレンだって簡単に倒せる!
僕はツバキ目掛けて、思いっきり斬りあげる。しかし、やはりツバキのことだ。簡単に受け止められ、鍔迫り合いになった。
「まだ、力が順応していないようですね。 これならまだ、簡単に打ち返せますよ。」
そう言うと剣を下に払われ、打ち上げられた。
まだだ、ここで大人しく飛ばされるわけには・・・僕は空中で態勢を立て直し、ツバキに向かって発砲する。共鳴した銃は今まで戦っていた時よりも遥かに強い威力の銃弾が放たれた。
「うっ・・・」
流石に、この威力の銃弾を受けるのはツバキであっても態勢を崩すほどのようだった。
「どうだ、今の僕は一筋縄では行かないぞ!」
「光様、力の順応がまだできていないというのにこの威力、お見事です。油断すれば致命傷も免れませんね。ですが・・・そんなものではこの私に傷をつけることすら叶いませんよ。 では、次はこちらから行かせていただきます。」
『はああああ・・・! 我は光の巫女なり・・・この神々たる閃光で敵を消し去る。覚悟なさい。 さあ破滅の鐘を鳴らしましょう。 レイーナ・コリン!』
ツバキに眩い光が纏った瞬間、あの脳に直接響くあの音が鳴りはじめた。今度は先ほどと違い、もっと強烈で体が蝕まれている感覚がわかる。ここまできたらバリアなど関係ないみたいだ。
「私に隙を見せるとは余裕ですね・・・飛び散りなさい! ハイ・オルダースフィア!」
「くそっ・・・!」
いとも簡単に吹き飛ばされた。いつもより強烈な衝撃波が空気をも揺るがし、バリアーを貫通させる勢いだった。
「まだまだですよ、光様。貴方はバリアに頼りすぎです。気が向けばフォルテの魔法など、簡単消しされますよ。 さあ立ちなさい。」
バリアに頼りすぎだと・・・そうか・・・今までは少し間違えれば死に繋がっていた。
今はどうだ・・・ただの遊びじゃないか。
これはツバキからの忠告か・・・危機感が足りていなかったんだ。
「そうか・・・バリアにね・・・忘れていたよ。これは普通のゲームじゃなかった。」
僕は立ち上がり、剣を持ち直してツバキに再度、斬りかかる。
ツバキと対峙している間に死に対する感覚を思い出してきた。ツバキの攻撃は凄まじく何度も吹っ飛ばされた。。
その度に立ち上がり、反撃を繰り返す。エイギールに教わった事も実践した。
ツバキに教わった魔法も果敢に取り入れて攻撃をする。
しかし、全く歯が立たなかった。
何度攻撃しても剣で弾かれ、スフィアを唱えても魔法で掻き消される。
銃弾は剣で弾きとばされ、気が付けば武器との共鳴反応も消え去っていった・・・でも同時にツバキも体力が消耗していることにも気がついた。
「ハァ、ハァ、ハァ・・・攻撃が通らない・・・」
「当たり前です・・・何度も言っているじゃないですか・・・私に傷をつけることはできないって・・・しかし、力の順応は見られました。私も時間の問題かもしれません。ですので・・・次の一発で決めさせてもらいます。」
両者、息切れの中とうとう決着が着きそうになっていた。
これが、終われば次はガーファレンと戦うことになる。それまでの修行だ。
この一撃に全てを込めようじゃないか。
集中だ・・・武器とこの力の共鳴を感じるんだ。
『我、汝の力をここに示さん・・・剣は烈風の如き速さで敵をなぎ払い、銃は烈火の如き火炎で敵を撃ち抜く。 眼前の敵を消し去るのだ・・・』
さっきまでの力よりも強力に感じる。
「いいですよ。光様もその気のようです。では私も最大火力で挑みましょう。」
『我、光の巫女なり・・・裁きの剣よ、愚か者に鉄槌を下すのです。 ジャッジメント・パージ・・・』
ツバキはまた新たに光の剣を生成し、準備完了のようだ。
「さあ、行くぞ!」
「はい・・・いつでもかかって来なさい!」
僕は剣と銃を構え直してツバキの方へと攻撃を仕掛ける。
それを見計らったようにツバキも突っ込んで来た。
ツバキの姿を見て、今まで話して来たことが脳裏に浮かぶ。武器の使い方を教わった事、ラージャの宝玉から具現化したツバキを見たことも、全てを思い返せば凄く長いようで短い旅路だった。
そんな事を振り返る時にはもうツバキが目の前に来ていた。
僕は持てる力全てを使い、ツバキを銃で撹乱し剣でツバキの懐を突くように攻撃をする。いつもは反撃するはずのツバキがまた何もせずに攻撃を受け、あっさりと剣はツバキの懐を突き刺した。
分身とは言え、ツバキを殺したのは2回目だった。
「よく、やりました・・・光様。分身の私の役目はこれにて終了です。貴方を影ながら支えることができて光栄でした。どうかお気をつけて・・・」
「ああ、後は僕に任せろ。今後は僕がツバキを助ける。」
ツバキの分身の表情は本物のツバキのように微笑みながら目を閉じていった。
念願のツバキを倒すことができた。
次はあいつが姿を現すだけだ。
光はボスであるガーファレンを倒すことができるのか。
ではまた、違う物語でお会いしましょう!




