第6話 核心へ
物語は遂に核心へと迫ります。
ツバキの執事を名乗る老人に連れられ辿り着いた場所は闇の街とは正反対の光の街だった。
老人に案内され、教会の中に入ると目の前にはツバキが立っていた。
怒りに身を任せ、たたみ掛ける光はなんとツバキの懐に剣を突き刺すことができてしまった。
しかし、その呆気なさに呆然とするのであった。
剣は見事にツバキの懐に突き刺さった。
「こ、これで・・・満足、ですか?」
「えっ・・・?」
ツバキは剣が刺さったまま、僕の方へ倒れかかり抱きしめてきた。
ツバキがやられるわけがない。なぜなら、ツバキは簡単にやられるような奴ではないんだから。心のどこかで容易く剣を受け止めて欲しいと思っていた。そしていつもの皮肉を言われることを。
なのになぜ。溢れ出していた殺意が一瞬にして消え去り、変わりに罪悪感が溢れ出した。
「私は光様に大変な道を歩ませてしまいました・・・案内役として失格ですね。」
「そんなこと・・・」
「申し訳・・・ありません・・・」
ツバキの言葉には今までになく、優しく暖かい言葉にまた罪悪感が込み上げてくる。
「もう光様は私の話を聞いてくれますね。ではこの剣を抜いてください。」
「そんなことをしてしまったら・・・」
「問題ありません。一度くらい死んだくらいでは何の支障もありません。光様ができないのであれば、私がやります。」
突拍子も無い事を言うと、ツバキは僕から離れ突き刺さった剣を抜いた。噴水のように血しぶきが吹き出し、その場に倒れてしまった。
「ツバキ・・・!」
すると、倒れたツバキから緑の光が輝き、宙に浮いた。
「それは緑の宝玉の力 永遠の命、そして永遠の癒し。わしの名前はセイント・ヴァン・フォルテ。このセイントの街の創設者であり、今はツバキの手助けをしている。」
その声の主はあの黒いローブをまとっていた老人だった。
セイントの創設者?執事というのも全て嘘だったのか・・・しかもなぜそんなやつが手助けをしているのか。そんなことをしている間にどんどんツバキの傷が癒えていき、元の姿に再生した。
「フォルテよ。前に出てこなくてもよいものを。それに加えて、素性まで明かすとは。」
「申し訳ない。ツバキよ。お前さんの覚悟を見ていると、こやつに1つ言わんといかんと思ってな。」
「まあよい、お前の働きは十分過ぎる。助かった。」
再生したツバキはまた老人と淡々と話をしていた。こんなにも簡単に再生するのならば、心配していたのがばかばかしくなった。
「ツバキ、何もかも全て説明しろ!」
「喜んで、光様。全てをお話いたしましょう。長くなりますがどうかしっかりとお聞きください。」
ツバキは意外にも素直に従った。そんな言葉を聞くのは初めてだ。
「お話しする前に2つ。あなたには全ての真実を受け止める覚悟はありますか?」
「ここに入る前にも言われたが、覚悟はもう出来ている。」
ツバキへの殺意が無くなった以上、僕の目的はただ一つ。このゲームをクリアし、化け物を殺すこと。ただそれだけなのだから。
「そして、もう1つ。私の事をツバキという存在を忘れることはできますか?」
「は?何を言っているんだ・・・そんなことできるわけっ・・・」
「忘れることができるかと聞いているのです。できないなど許されません。少しでも未練を残せば終わりです。いいですね?」
全て言い切る前に言葉を遮られた。
「おう、わかった。」
それほどの覚悟が必要だと言うことなのか。ここまできて足止めなんて許されない。この話を聞くまでに僕はツバキを殺そうとしたんだ。忘れることなんてたやすいことだ。
「あなたの覚悟、しかと受け取りました。では初めに、単刀直入にお答えします。私はあなたと同じ人間です。私も貴方と同じ装置をつけてプレイしています。私にとってゲームは所詮、子供の遊び程度。簡単にクリアしました。無傷で。もう一つ付け加えると今の私には光様のように現実世界でも傷跡が残る仕様はありません。これで先ほどの行動も頷けるはずです。」
「人間・・・?無傷でクリアした・・・?」
人間ということはそもそもAIプログラムというのも、口調も全て嘘ということか。
しかも、僕が死ぬ気で倒してきた敵を簡単に倒して来たということなのか・・・
「でも、そんなこと普通に話していいことなのか?あいつにバレたりしたら・・・」
「バレることはありません。この教会内だけは魔法で外からの干渉ができないシステム
になっています。そして、無傷でクリアしたことも本当です。ラスボスまでは・・・」
「それは無傷でクリアとは言えないじゃないか。」
「ええ、私は最後にゲームの製作者である男を殺して終わりだと思っていました。しかし、あの男は私の力を見込んで、セイント、ここのボスなれと命じられました。」
「ということは・・・」
嫌な予感がした。ボスの役割はただ一つなのだから・・・
「はい。光様が思っている通り、私は初めて人殺しをしました。普通、このゲームはNPCは死んでしまった場合、チリとなって消滅します。具体的に言えばそのNPCのデータが強制的に消去されるのです。しかし、人間の場合、死んでしまうと死体が残ってしまうのです。気づけば、私の周りには死体の山であふれかえってしまいました。」
僕は絶句してしまった。これまでどれほどの人を殺したんだ。
想像するだけで吐き気がした。
「そして、いつしか何も感じなくなっていました。心が荒んでしまったのです。」
しかし、そんな非業。許されるはずがない。
「でも、こんなことをして許されようなどとは微塵たりとも思っていません。そんな時、ふと妙案を思いついたのです。案内役として攻略を手助けする中でこのゲームの適合者を探すことにしました。1つ目に武器が使いこなせること。2つ目に魔法。3つ目にあのあなたがフティス討伐時に見せたあの力。これら全てを使いこなす者を探しました。」
それが僕だとしたらそれはおかしい。武器にしても魔法にしてもツバキの助言なしでは何もできなかった。他にもっとできるやつがいるはずなのに。
「僕はお前が言うような適合者じゃない!武器にしても魔法にしても全部っ!」
「それは違います。最初に武器を使いこなせるようになった時から。魔法を使えるようになった。そしてあの力。あの力を物にできるものではないといけないのです。」
「それは、全てツバキに教わったことで自力で編み出したものじゃない。それなのに・・・」
僕はツバキが思っている以上に強くなんかない。
「今までに見てきた方には武器を使いこなせたとしても魔法が使いこなせない者。あの力を手にしたとしても力が暴走し、死んでいった者もいる。そんな中、現れたのが光様、貴方なのです。しかし、あれではまだあいつを殺すことはできません。1つ問題があるのです。」
「問題点?」
「はい。光様はフィアンマで戦ったボスを覚えていますか?私もあいつと一度手合わせをしたのですが、苦戦しました。光様はエイギールの気まぐれでクリア条件が変更され、クリアすることが出来ました。実は後に彼はあの男によって冥界、いわゆるサーバーの歪みに飛ばされました。それくらいしないと彼の実力は本物です。そしてもう一つあの男も私たちと同じ人間です。」
まさか、あんなに強いやつが人間だと・・・
「このゲームを潰すということは・・・ツバキも死ぬということ。」
「正解です。物分かりの良い光様に良いことを教えましょう。私がボスに恨みを買っているのは全て一撃で倒したからです。エイギールを除いては・・・それほどの実力なのです。」
ツバキの表情が緩んだ気がした。しかし、恐ろしい言葉に硬直してしまった。と同時に本気の力に興味が湧いてきてしまった。
このゲームには僕とツバキ、そして消息を絶ったエイギールの3人がリアルな人間だ。
化け物はこの優秀な2人を使い、ゲームに参加する人を全て殺し、楽しむこと。
やはり、あいつは許すことは出来ない。僕を捕まえてこのデスゲームに参加させられたことではない。
「で、僕は何をすればいいんだ?」
「よく、聞いてくれました。私を救ってください。」
説明の中で一番意味がわからなかった。どういうことだ・・・
「っと言ってもわからないでしょう。簡単に言います。私を正真正銘、殺してください。」
「でも、そんなこと意味がないだろ。」
「私が簡単に死ぬわけがありません。こうするのですよ。 レプリカッション!」
ツバキが魔法を唱えた瞬間、もう1人のツバキが現れた。
「光様がよく知っているツバキという人物は私の分身です。」
「久しぶりですね。そのマヌケ面は変わりませんね。」
いつも、そばにいたツバキだ。僕の知っているのは分身の方だったのか。
「そして、あともう一つやらないといけないことがあります。フォルテ、出番です。」
「承知いたした。小僧よ。構えろ。 インビンシブル・カーバリー!」
僕の周りにバリアのようなものが付与された。
「これでお膳立ては出来ました。後は簡単です。私の分身が貴方をハイオルダースフィアで本当は私と戦うべきはずのフィールドに飛ばします。その後に分身を刺し殺し、この最後の宝玉で例の男をおびき寄せるのです。」
「でも、僕が持っているのはエイギールからもらった物とミクマリを倒した時の物しか持っていないぞ。」
「大丈夫です。それもここに揃っています。先にこれらを渡しますね。」
やはり、全ての宝玉を管理していたのか。その理由は聞かなくてもわかる。化け物からの妨害を防ぐためだろう。
「これが、最後の戦いになるでしょう。私は例の男が現れたのを機に参上いたします。では、準備はよろしいですか?」
「いつでも、来い!」
これが最後の戦いとなるのか。ここまでの道のりは長かった。
しかし、化け物を倒せば全てが終わる。覚悟も準備を出来ている。
「光様、さあ粉々にして差し上げましょう。」
「ふんっ、お前の皮肉を聞くのもこれで最後だなぁ。ただ刺し殺ろすだけじゃ面白くないからなぁ。少し遊ぼうじゃねえか!」
「いいでしょう!少しお相手しましょう。頃合いを見計らって殺してください。」
「おう!」
この瞬間だけとても楽しく、ワクワクした。一瞬だけ本当のゲームをやっているようなそんなワクワク感だ。
「では、行きますよ! 衝撃に備えなさい。私の魔力よ。轟くのです。 ハイオルダースフィア!」
とてつもない衝撃波は教会の床に亀裂を入れ、僕を簡単に吹き飛ばす。
あの、フォルテのおじいさんがかけてくれた魔法のお陰で全く攻撃を感じない。とても不思議な感覚だった。
衝撃波で吹っ飛ばされ、たどり着いたのは見たことのあるような円形のフィールドで大きな鐘が浮いていた。
遂に物語はラストスパートへと進みます。
果たして、光はこのゲームを破壊することができるのか。
ツバキの運命はいかに・・・
最終話までのカウントダウンはもう進んでいる。
それでは、また違う物語でお会いしましょう!!




