第5話 セイントの支配者 ツバキ
今回から物語は終わりの一歩を迎えます。
ミクマリを倒した次に光の前に現れたのはある老人の姿だった。
この老人は何のために現れたのか。
それでは本編へとお進みください。
暗闇の中から現れたのは黒いローブを身にまとった老人だった。
手には水晶玉を抱え、いかにも怪しい人物だった。
そんな風貌のやつ簡単に信じるほうがバカだ。
「そんな奴の言うことを簡単に認めるわけがない!」
「無理もありません。そりゃこんな姿の老骨を信じるほうがおかしい。これだったらどうでしょう。私めは光様をお迎えに参りました。」
こいつ、ツバキと同じ心を読み取ることができるのか・・・
しかもこいつ、僕の名前を知っている。間違いなくツバキの配下だ。
「じゃあ悪いがすこし質問させてもらう。」
「なんなりと。」
「お前はツバキの配下か?」
「まさか、そんな直球の質問が来るとは。その通りです。私はツバキ様の配下であり執事を務めさせて頂いているただの老骨です。」
執事・・・だと。あいつはそんな立ち位置に存在する奴だったのか。
ますます、この老人が怪しい。
「お前、執事ということは、それ相応の力はあるということでいいのか?」
「はい。ですが、忠告をいたします。ツバキ様の持っている人の心を読み取る能力。あれは私の物です。それを理解した上で行動を取ってもらいたい。」
「そうか。なら、これはどうだ。」
僕は老人に向かって発砲する。
しかし老人は避けることなく、打ったはずの弾はなにかに掻き消されてしまった。
「そんなことをすると思いましたよ。では、私が悪者ではないということを証明しましょう。よく考えて下さい。私が直々にここに来たことを」
「まさか、お前・・・」
僕をツバキの元へと連れて行く。そんな馬鹿げたことを言おうとしている訳じゃないだろう・・・
「そのまさかです。先ほども申し上げました、が私は貴方をお迎えに参上仕りました。」
「ボスが直接、迎えに来る?そんな間抜けな話、信じられる訳が・・・」
前の老人がわざとらしく呆れ顔を見せながら返す。
「光様はツバキ様が言う通り、理解力に欠けるようだ。ここシュバルツェに来たこと、貴方がアキュアで気絶させられたこと全て、ツバキ様が説明いたします。」
あのツバキが全てを明かすとでも言っているのか。そんなことがあるのか・・・しかし、ここで食いついたところで前に進むことはできない。ここは黙ってついて行くことを選択したほうがよさそうだ。
「そのご様子では覚悟が決まったようですね。早速ですが、貴方をツバキ様がいらっしゃる教会へとお連れいたします。この水晶玉に触れて下さい。」
心を読み取る卑怯な技で発言させないつもりか。今はそんなこと、関係ない。僕は恐る恐る水晶玉に触れる。
「では、行きます。」
この一言で前が見えなくなってしまった。
その数秒後、先程いた場所とは一転、まばゆい光と共に堂々と建てられた教会が目の前にあった。
「ここがシュバルツェと対になる街。セイントです。」
「またまた、眩しいな。」
極端に気候が変わったり、さっきまで闇の世界にいたと思いきや、次は光の世界か。もう気持ち的にも疲れてきた。
「無理もないでしょう。ここは天界に一番近い位置に存在するのですから。それはさておき、この扉の向こうにツバキ様がお待ちです。覚悟してお開きください。」
「覚悟はもうとっくにできている。ツバキは僕の手で葬り去る。」
執事にとんでもないことを言ってしまった気がした。
でも、僕にはもう迷いはない。すぐに大きな扉に手をかけてゆっくりと開いて行く。扉の開く音はラスボス感が漂うそんな音がした。
大きな扉の向こうには一般的な教会と作りは似ていて木の長椅子が置かれ、正面には大きなステンドガラスが設置されていた。
教壇の前にはツバキの後ろ姿があった。
「フォルテ、珍しく仕事が遅かったな。」
「申し訳ありません。私、人間の相手は苦手でして。」
「承知している。だから、お前を使ったのだ。よくやった。ゆっくり休め。」
「承知いたしました。」
中に入ると2人の淡々とした会話が繰り広げられる。『フォルテ』はあの老人の名前か・・・なんとも執事らしい名前だ。
2人の会話に耳を貸すこともなく、僕はツバキを見てうずうずしていた。目の前に憎い相手がいる。今にも剣を抜いて襲いかかりそうだ。
「遅かったではないですか。光様、私はもう待ちくたびれました。ミクマリの討伐、お見事です。」
「ツバキ!お前を!」
僕はツバキの話をろくに聞かずに剣を抜いて襲いかかる。
「集中するんだ。あの力を!」
「ほう、もうフティスの時の力を使いこなせるまで成長しましたか。さすがは光様、でもそれではただ、体力を消耗するだけです。」
「うるさい!」
どれだけ、斬りかかっても全て受け止められてしまう。
「話をするのは今の状態では無理そうですね。では少し光様のお遊びに付き合いましょう。」
『さぁ、破滅の鐘を鳴らしましょう! レイーナ・コリン!!』
エイギールの時に使っていた技だ。脳内に直接、響いてくる嫌な音。
僕はもうすでに強力な力を手にしているんだ。
「こんなもの、効くわけがないだろ!」
ツバキへとまた斬りかかる。
今度は素手で受け止められてしまった。
「そうですか。ならば、これはどうでしょう。踏ん張りなさい! オルダー・スフィア!」
木で出来た長椅子をなぎ倒して、僕は教会の壁へと吹き飛んだ。
「光様、お願いです。少しだけ、私の話を聞いてください!」
「話を聞け、だと・・・?」
ツバキの足音が聴こえてくる。チャンスだ。ここで刺し殺せば・・・
「お願いです。話を!」
ツバキがどんどん近づいてくる。なぜか少し、懐かしく感じる。しかし、それを掻き消すかのように殺意が溢れ出してくる。 今だ!
剣はツバキの懐に見事に刺さったのだ。
いとも簡単にツバキを倒すことができた。
しかし、呆気なくやられてしまったツバキを見て困惑する光だった。
遂に物語は核心へと迫る。
それでは、違う物語でお会いしましょう!




