第3話 化身を作り出し者
ミクマリの化身と対峙することになった光。
なぜ、ミクマリの姿をした化身が襲いかかったって来たのか。
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ミクマリの化身は素早く細剣で襲いかかってくる。
しかし、今の僕にはそんな攻撃なんとも思わなかった。
「弱い! この程度なら余裕だ!」
化身の攻撃を全て剣で受けて発砲すると、化身はあっけなく姿を消した。
これで確信が持てた。ミクマリは残念ながら黒だ。
「君・・・すごいね私の化身を簡単に倒すなんて。」
「でも、僕の化身ではなかったな。僕に魔力が無かったからか? なあミクマリ。」
僕の言葉でミクマリの明るい表情が一変、ボスで感じるようなただならぬオーラを感じた。
「本当に君、面白いね。なんで私が疑われているのかな?」
「宝玉を僕が潰した時からお前を試そうと思ったんだ。僕の魔力を吸い取ってもらおうとしたのもお前を試すためだ。他人の魔力を吸い取り化身を作るはずができなかったもんな。そして先ほどの化身の弱さ。どうやら自分の魔力で化身を作るのはどうやら難しいらしい。正確に力を化身に送れなかったんだよな?」
どんどん、ミクマリからすごい気配を感じる。
やはり、こいつがここのボス。
「ふっ、ふふふ。ふはははは。傑作だよ。黙って私の世界に触れ伏せば良いものを。そうだよ。私の本当の任務は君を殺すこと。」
「そうか、ならツバキのこともよく知っているよな?」
「ふふふ、ツバキ様がどうしたと言うんだい? 君はツバキ様がどこにいるか知りたいんでしょ? でもね、それは知ることはできないんだなあ。 なんでかって、それは私が君の命を刈り取るんだから! さあ、構えて!」
「ああ、やってやるよ。僕の前に立ちはだかる奴は有無を言わせず皆殺しだ!」
ミクマリから感じる殺気は本物だ。なら、こちらも殺しにかかるしかない。
このゲームをクリアするためだ。
立ちはだかる奴は全員、敵だ。それを今まで攻略してきた町で学んだ。
「行くよ! どこまで耐えられるか楽しみだよ。」
そう言い放ちながら身につけていた細剣を抜き、素早い動きで襲いかかってくる。
細剣の剣筋は風を断つように素早く、受けるのが精一杯だった。
早さも、攻撃の強さもさっきの化身とはまるで違う。
「どうしたの? もう終わりかな?」
この素早く、手数の多い攻撃。しかし、全て前のめりで力で押し切れると思われているのだろう。見くびられたものだ。
『攻撃した後の事も考えないと勝つことはできんぞ!』
僕はエイギールに言われたことを思い出す。どれだけ殴っても後のことを考えない攻撃、いわば前の僕の攻撃の仕方みたいだ。
「悪い、ミクマリ。お前、弱えよ。話にならない。」
「何を言っているのかな?君、さっきから私の攻撃を剣で受けているだけで精一杯じゃないか。」
なぜ、僕が黙って剣で受けているかもわかっていないようだ。
確かに反撃に出ようとしてこの強烈な攻撃を食らってしまうとひとたまりもない。しかし、最初は相手の出かたを見るのが先決だろう。そう判断しただけだ。
しかも、この攻撃なら受け流してしまえば終わりだ。
「そうか。ならかかってこいよ。一捻りにしてやるよ。」
「やられて後悔しても遅いんだよ!」
一度、距離を取ったミクマリがまた先程のように襲いかかってくる。
綺麗な剣筋で喉元に目掛けて突き刺してくる。僕はその剣筋を剣で受けながら横へと避ける。思った通り、バランスを崩したミクマリの後頭部に銃口を向けた。
「終わりだ。ミクマリ。お前の動きは単純すぎた。お前が終盤のボスとはがっかりだよ。」
「ふふふ、ひどい。君の動きはお見事だったよ。でもね、私も君の頬に傷をつけたんだよね。」
言われて頬に手をかけると、このゲームが始まって2つ目の傷が入った。
しかも、ボスに傷をつけられたのは初めてだった。
手についた血を見て、動揺が隠せなかった。さっきまで威勢が嘘のように体から力がどんどん抜けていき、力が入らなくなった。
「君、やられるのが怖いんだ。わかるよ。死んじゃうのは嫌だよね。でもね、詰めが甘いんだよ。あそこで私を撃っていれば勝ってたのにまだ殺すの躊躇ってるんだね。大丈夫だよ。もう楽になるからに。」
ミクマリが手を広げて近づいてくる。
後頭部に向けていた銃は知らぬ間に降ろされていて気付けばミクマリの手が僕の顎に触れていた。
「大丈夫。すぐに終わるよ。私に身を預けて・・・」
誘惑されているのか・・・まずい状況だ。体の力が抜けていき、意識もどんどん薄れてきた。剣と銃が地面に落ちた音が聞こえた。だめだ・・・このまま終わるのか。
「いいよ。その調子。君の命、私が頂くよ。」
微かにミクマリの顔が近づいてくるのがわかる・・・唇に何か当たる感覚があった。
ダメだ・・・どんどん力が抜けていく。
死んでしまうのか・・・もう終わりにするか・・・何故だか体が軽くなり宙に浮くような感覚に陥る。
いや、待て・・・まだ僕にはツバキを倒すという目的がある。こんなところで生気を吸い取られ、やられる訳には・・・いかない!
僕は必死にない力を振り絞り感覚だけを頼りに左手をミクマリの腹に向ける。
そしていつもの魔法を頭の中で唱える。
見事放たれた魔法はミクマリを街の民家へと吹き飛ばした。
僕はそのまま地面に膝をつけ、茫然と座り込んでしまった。
だめだ・・・まだ力が入らない。どうにか切り抜けたが・・・このままやられて本当に終わりだ。
「痛い・・・今のは痛かったよ・・・フフ、フフフ・・・私、少し本気を出してもいいってことで大丈夫かなあ?」
瓦礫から不気味な声が聞こえる。その瞬間だった・・・
民家の方へ飛んでいったはずのミクマリが僕の目の前に現れ、細剣を喉元に突き付けてきた。
万事休す、もうゲームオーバーが見えた。
すこし意識が戻り、感覚も徐々にであるがまだ動くことができない。相当、生気を奪われたのだろう。
「残念だったね。まだ、動けないみたいだね。本気を出す必要なかったみたい。君の生気、最後まで吸い取りたかったんだけどな。気が変わっちゃってね。君のこと、殺すことにするよ。」
このままでは終わる。意識はあるのに体にまだ力が入らない。何か策はないのか・・・フティスを倒した時のような力があれば・・・
どうすれば発動できる・・・そうだ、このゲームは意識をすれば何だってできるんだ。エイギールを倒した時も、初めて剣を抜いて振った時から。
もしかすると、フティスを倒した時にツバキが僕に力を与えたのはこのため・・・
僕はツバキに試されている・・・ツバキを倒せる、このゲームを破壊する器かどうかを・・・
集中しろ・・・体に力がみなぎったときの感覚を思い出すんだ。
「もう、命乞いすらできないみたいだね。ツバキ様が言うほどたいしたことはなかったみたい。さようなら。」
ミクマリはもう一度、構え直して心臓を目掛けて突いてきた。
だが、何故だろうか攻撃が遅く見える。もう終わりなのだろう・・・
いや、違う・・・力がみなぎる感覚が蘇ってくるのがわかる。
これだ、この感覚だ。そう考えている時にはもう体が先に行動し、ミクマリの細剣を片手で受け止めていた。
いいぞ・・・さっきまで脱力感が嘘みたいに体に力が溢れ出す。
「えっ・・・君、そんな・・・僕の攻撃を片手で・・・」
「ふふふ、ごめんな、ミクマリ。僕はさあ、他の人と違ってそんなに容易く殺されないんだわ。」
「おかしいよ・・・もうそんな力は残ってないはず・・・」
いとも簡単に攻撃を受け止められ、ミクマリは困惑しきっていた。
「耳障りな奴だ・・・お前の攻撃が遅いだけじゃないのか。」
受け止めていた細剣を振り払い、落とした剣を拾い上げて斬りかかるが流石に受け止められてしまった。
「君、面白いことを言うじゃないか。悪いけど私の早さについては来れないと思うんだけど。」
「そうか、そう言うなら来いよ。本気で来ないと今のお前では僕に傷1つつけることはできない。」
「じゃあ、手加減はしないよ。」
ミクマリは僕の剣を撃ち払い、再び凄まじいスピードで攻撃を仕掛けてくるが、今回は違う。全て動きが見える。剣の持ち手を引きながら助走をつけて心臓に目掛け、一直線に突いてくるところまで。全てがスローモーションのように。
こうなれば早い話だ。僕はこのまま剣を弾いて、額に銃口を向けるだけ。
細剣の弾かれる音が聞こえた時にはすでに僕はミクマリの額に銃を突きつけていた。
「残念、もう引き金を引いていれば僕の勝ちだったよ。それじゃあ面白くないからね。引かなかったけど。」
「え?そんなのまぐれに決まってる・・・」
「そうか・・・ならどんどん仕掛けて来いよ。余裕だからさ。」
完全に動揺したミクマリの剣筋は最初とは比べ物にならないくらい荒れていて、容易に受け流し反撃をすることができた。
数ヶ所の傷をつけたところでミクマリの攻撃が止んだ。
「なんで、なんで・・・私の攻撃だけ当たらないの・・・しかも・・・そんなこと・・・あるわけがない。」
「どうしたんだ?あれだけ自信満々だっただろうが。」
完全に流れを支配してしまったらもうこっちの物だ。
動揺し、我を失っているミクマリの攻撃は先程よりも増して汚く、力もまばらだ。
こんな攻撃、前の僕でも簡単に去なすことができる。
「汚い・・・お前の攻撃はそんなものじゃなかったぞ。」
それでも、しつこく攻撃をしてかけてくるミクマリを回転しながら斬りつけ、もう一度民家の方へと吹っ飛ばした。
圧倒的なパワーに苦戦しながらもミクマリの攻撃を去なすことができた光。
果たしてミクマリを倒すことはできたのか。
では、また違う物語でお会いしましょう!




