↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
46/64

第46話 新ヒーロー誕生

◇


「はい、これ」


アメリアが抱えてきた服を、ソフィーへ差し出した。


白いブラウス。


紺色のリボン。


淡い水色のカーディガンと、紺色のスカート。


黒いタイツまで揃っている。


「変身を解いたら服がなくなるなんて、思わなかったわ」


「ご、ごめんなさい……」


「ソフィーが謝ることじゃないでしょ。あたしが用意したんだから、ちゃんと着なさい」


ソフィーは頷き、治療室の奥へ引っ込んだ。


しばらくして戻ってきた彼女は、以前学校で見た時と同じ姿になっていた。


白い肌。


腰まで流れる白銀の髪。


淡い青色の瞳。


もう獣の耳も、牙も、黒い縞模様もない。


「どうかな?」


「似合ってるよ」


「うん。いつものソフィーだね」


僕がそう言うと、ソフィーは嬉しそうに笑った。


その顔を見ているだけで、胸の奥に残っていた不安が少しずつほどけていく。


ジムおじさんが診察用の魔導器を持って、治療室へ入ってきた。


「喜ぶのはまだ早い。身体の状態を確認するぞ」


ソフィーはベッドへ腰を下ろす。


おじさんは胸元へ器具を当て、魔力の流れや心臓の動きを調べていった。


魔導器の画面に、青い波形が表示される。


しばらく画面を確認していたジムおじさんが、ようやく器具を離した。


「体内のD因子が休眠している」


「休眠?」


アメリアが尋ねる。


「完全に除去されたわけではない。だが、今のところ暴れている様子はないな」


僕はソフィーの胸元へ視線を向けた。


そこには、プロテウスが埋め込まれている。


「どうやらプロテウスが、D因子を抑え込んでいるようだ」


「じゃあ、もう獣にもならないの?」


ソフィーが身を乗り出す。


「D因子の影響で不本意に肉体が変異することも、ないと言っていいだろう」


「やった!」


ソフィーが両手を握りしめた。


「よかったね、ソフィー!」


僕も思わず笑っていた。


アメリアも安堵したように息を吐く。


僕たちはソフィーの手を取り合った。


魔導器の身体を経て戻ってきた小さな手。


「もう、誰も傷つけなくていい」


ソフィーが、繋がれた手を見つめながら呟く。


「ソフィーは安心して普通に暮らせるね」


「うん。もうラクーンのような悲劇は起こさせない」


その名前を聞くと、ソフィーの表情が少し曇った。


「……アレク」


「なに?」


「獣になった私を護ってくれて、ありがとう」


ソフィーの淡い青色の瞳が、まっすぐに僕を見つめる。


「喋れなかったけど、みんなの声は届いてたよ」


「本当に?」


「うん。アレクがずっと手を握ってくれていたことも覚えてる」


ソフィーは少し恥ずかしそうに笑った。


「最初は、生のお肉はちょっとびっくりしたけど」


「あれは、他に食べられそうなものがなかったんだよ」


「でも、変身しててもオレンジソーダは美味しかった」


その言葉に、治療室の空気が少しだけ柔らかくなった。


ソフィーは、ゆっくりと自分の手を見つめる。


「それで思ったの」


「何を?」


「私も、護られるだけは嫌」


ソフィーの声から、先ほどまでの不安が消えていく。


「ラクーンみたいに苦しんでる人も助けたい」


「ソフィー……」


「私も、2人みたいに戦う!」


アメリアの表情が変わった。


「ソフィー、戦いは危険なのよ?」


「分かってる」


「ケガもするし、最悪の場合は命を落とすわ」


「アメリア」


ソフィーは、静かにアメリアを見返した。


「せっかく助かった命を捨てるつもり?」


「違うよ」


ソフィーの目は、真っ直ぐだった。


「助かったからこそ、助けたいの!」


アメリアは返す言葉を失った。


ソフィーは、自分の胸へ手を当てる。


「私、ほんの少しだけ氷の魔法が使えるの」


その言葉に、あの日の光景が蘇った。


ラクーンの身体を覆った氷。


止めようとしても止まらなかった力。


「ラクーンを凍らせちゃったのも、きっとその魔法が暴走したせい」


ソフィーは指先を見つめた。


「でも、機械の身体なら、ちゃんとコントロールできると思う。練習して完璧にする。2人の役に立ちたい!」


迷いのない言葉だった。


僕は少し心配だった。


せっかく助かったのに、また危険な場所へ向かわせることになる。


けれど、ソフィーの瞳を見ていると、決心がついた。


この子はもう、護られるだけの存在ではない。


自分の意思で、誰かを助けようとしている。


アメリアは長く息を吐いた。


「……分かったわ」


「アメリア?」


「ソフィーを護るし、ソフィーにも護られる」


アメリアは、ソフィーの肩へ手を置いた。


「頼もしい仲間が増えたわね!」


ソフィーの顔が明るくなる。


僕も頷いた。


「うん。よろしく、ソフィー」


「こちらこそ、アレク」


アメリアが手を叩いた。


「さて、じゃあソフィーのヒーローネームを決めましょ」


「ヒーローネーム?」


「白い機体に、氷の魔法……」


アメリアは少し考えたあと、指を立てた。


「スノーホワイトはどう?」


「スノーホワイト……」


ソフィーはその名前を何度か口にした。


「カッコかわいい!」


「じゃあ決まりね。変身後はスノーホワイトって呼ぶこと!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。