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前世の記憶を手に入れた女子高生は、終わりを迎える地球で世界と幼馴染のどちらを選ぶ  作者: 茉莉レイ
第二章

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第56話 希望か絶望か

 木曜の学校が終わった。

 あれから3日間、変な夢を見る事は無かった。

 今日は(そら)()の友達がいる病院へ行く日だ。


「私達はもう行けるよ」


 穂乃果(ほのか)(りん)()君が私の席に来た。


「私も大丈夫! 行こっか!」


 空音とは病院で集合する事になっていた。

 都心部にあるそうだ。


「何か買って行った方がいいかな?」


 穂乃果がそう言った。お見舞い品の事だろう。


「軽めのにしよっか。私が治してすぐ退院できるかもだし」


「そうだね! 治せるといいね!」


 万が一治せなかった場合お菓子などを置いても意味がないため、汗を拭いてあげられるようなタオルを買っていく事にした。

 空音が言うには石のように固まりそこから動かなくなったみたいだが、実際にどうなっているかは分からない。



 そろそろ病院に着く。スマホのマップなど必要無い程、最寄駅から目立って見えた。


「お待たせ空音」


「あ、しーちゃん。来てくれてありがとう」


 いつもと違い、テンションが低かった。


「どうかしたの?」


「え? あ、ううん。もしかしたら今日治るのかなって思うと、凄く緊張して」


 緊張だけでなく、不安や怖さもあるのだろう。

 

 テンション低めだと、空音も18歳で大人なんだなと実感する。

 まあ私の方が生きた時間が長いんだけどね。


「私が、私達がついてるから大丈夫だよ」


「頼ってくれていいんですからね」


 私の後に穂乃果が励ますようにそう言った。


「ほのちゃん……!」


 空音は瞳を潤わせ、そう言った。


「僕達はもう仲間ですからね」


 凛兎君の言う通りだ。

 私達はもう仲間なのだから、感情を共有したっていい。

 

「みんなありがとう! ちょっと心がスッキリしたよ!」


「良かった! じゃあ、案内してくれる?」


「うん。行こっか」


 空音はそう言い病院の中へ入った。

 私達3人も空音に続いた。



 長い廊下を真っ直ぐ進んだ後、地下に降りた。

 他には人がいなく、少し不気味に感じた。


 そしてついに空音は足を止めた。目的地に着いたのだろう。

 そこには本物のナース服を着た女性が立っていた。

 

「あら、空音ちゃん! 今日はお友達ときたの?」


「あ、はい。そんな感じです」


 看護師さんに対し空音はいつもと違った対応をしていた。

 真面目なところは真面目なのかな。


「ちょっとここ外してもらえますか?」


「分かった。変に触れたりはしないようにね」


「分かりました」


 空音がそう言うと看護師さんは、軽く会釈をして外に出ていった。


 目の前には空音の友達——()乙女(おとめ)瑠夏(るか)ちゃんがいる。

 そう思い部屋の中に入った。


「うそ……なん、で……」


 私は目の前の光景が信じられなかった。


「ひどいね、これ」


「全身が固まってる……」

 

 穂乃果と凛兎君はそう言い、暗い表情をしていた。


 確かに見た目は酷く残酷で、所々が痣のように青白く固まっており、不完全な化石のようだった。


 けど、私が驚いたのはそれだけじゃない。

 首元の紋章だった。


 これはあの時、異空間で見た。赤と青色で、細長く潰した人間を捻って交差させているような紋章。

 見るだけで胸糞が悪く、不気味で、残酷な記憶を思い出させてくる。

 これがどんな物で、誰によってつけられたかは未だに分からない。

 ただ、すでにリカネアからのバックドアが仕掛けられているのだと確信した。


 時間を戻したからか、それとも戻す前からなのかは分からない。

 ただこの子は重要な手掛かりになるだろう。


紫伊香(しいか)? 大丈夫?」


 穂乃果が心配そうな顔でそう聞いてきた。


「ん? あ、うん! 何でもないよ」


 私は反射的にそう言ってしまった。

 別に紋章の事を話してもいいだろう。

 けど、変に負担を増やす必要なんてない。


「じゃあ、しーちゃん。お願い」


「分かった」


 空音の目は長く広く深い暗闇の先に見えた一筋の光を見つめているようだった。

 ずっと心に闇を抱えていたのだろう。

 1年。それは友と別れている時間として十分過ぎるほど長い時間。

 私は2人を苦しみの渦から助け出してあげたい。


 初級魔法や中級魔法などでは治せない事を直感的に分かっていた。

 上級系統魔法の1つ、肉体操作を行わないと治せないだろう。


 損傷部位の回復や、死者蘇生といった事をできる力を持つ魔法。

 私はそれらを使いこなせるサイクラーでは無いが、今までの知識を融合させればできるだろう。


ダプル・ホープ(希望の闇)


 私は中級魔法の中でも優れた術者しか使えない。万能分析魔法を使った。

 通常のマナ感知とは違い、ダプル・ホープは対象を紫色の霧で包み込み、水素や酸素などといった元素解析から魔力推定など何でもできる魔法だ。


 これで状態を見た後、上級魔法での治療を試みてみよう。


 紫色の霧が瑠夏ちゃんを包み込んだ。


 やはり地球上の元素ではない。別の物質が混ざっている。

 そして全身には強力な術式が埋め込まれている。解析せず下手に解除したら何が起こるか分からない。


「——しーちゃん、どう?」


 空音が心配そうな顔でそう聞いてきた。


「ごめん。すぐには無理みたい」


 心苦しいが嘘はつけない。本当にごめん。

 私は空音の方を見る事ができなかった。


「なんでしーちゃんがそんな暗い顔してんの!」


「え?」


 私は反射的に顔を上げて空音の方を見た。


「すぐにはって事は方法がない訳じゃ無いんでしょ?」


 空音は凄い。きっと心の中では今日しーちゃんが治してくれるんだ、と思っていただろう。

 それを私が無理と言ったのにも関わらず、明るく微笑んでいた。


「そう。これは私の前世の星の何者かが仕掛けた物。その術式を解除しなければならない」


 3人は青ざめていた。

 私だって怖い。前世の記憶が断片すぎて分からない事が多い。

 なぜ、どうして、私の頭にはそんな言葉しか出てこない。


「術式はスキャンできたから、後は家で考えてみるよ。今日は解散しよ」


「1人で抱え込んじゃダメだからね?」


 穂乃果がそう言ってくれた。


「うん。ありがとう」


 

 空音はまだ瑠夏ちゃんのそばにいるそうだ。

 私は穂乃果と凛兎君と駅に向かい、家へ帰る事にした。


 帰りの電車は衝撃的な物を目にした疲れからなのか、会話が起きなかった。

読んでいただきありがとうございます!

上級系統魔法については第9話、謎の紋章については第15話、18話参照。


ぜひ、面白い、先を読んでみたいと思っていただけましたら、リアクション、ブックマーク、コメント等していただけると励みになります!

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