第54話 4人で初めての基礎訓練
「これは、何の為のものなのって!」
私は恥ずかしさを我慢して、露出があるナースコスを指差しそう聞いた。
穂乃果と凛兎君も顔が真っ赤になっていた。
「え? 3人でこれ着て凛兎君看病すれば元気になるかなって!」
「んなもん誰が着るか〜! 空音1人で着ときなよ!」
私は反射的にそうツッコミを入れた。
凛兎君は今にも湯気が出そうで、再び熱が上がりそうだ。
「凛兎君に迷惑になるから、しっかり持って帰ってよね?」
私はそう言い袋にしまい空音に返した。
「分かったよ〜。じゃあ、スイーツだけ食べて訓練しに行こっか」
「そうそう、それでいい!」
空音が落ち着いてくれて良かった。
空音が持って来てくれた甘い物を4人で食べる事にした。
食べ終え少し休んだ後、空き地へ向かった。
「じゃあ空間に他の人が認識できないように魔法かけとくね」
「ありがとう紫伊香!」
「どういたしまして!」
この中で穂乃果だけが時間を戻す前から友達であるため、何だか心が落ち着く。
「私にもなんかビーム出せるようなの教えてよ」
「まずは基本のからね、空音は風を操る適性があるかもね。何となくだけど」
「風か〜雷とか火とかがいいのに〜」
「頑張れば全部使えるようになるから、やるよ!」
まずは基礎訓練を行う事にした。
これは以前穂乃果と凛兎君に送ったメニューと同じだ。
具体的にはマナを感じながら深呼吸を30分、その後にマナを回路に流し魔法を使うイメージの特訓、そして実際にそれを魔法として作り出す流れだ。
真ん中のイメージがかなり難しいが、これが最短だろう。
「穂乃果と凛兎君はちょっと待ってて」
私はそう言い空音の元へ行き背中に手を置いた。
「マナの流れ分かる?」
「何だか内側が燃えてる気分」
「じゃあそれを目を瞑って深呼吸しながら感じてね」
「頑張ります師匠」
空音の言葉を無視して2人の元へ行った。
「じゃあ2人も始めよっか」
穂乃果と凛兎君は無言で頷き目を瞑った。
私も暇だし感覚を鍛える瞑想でもするか。
スマホのアラームが鳴った。
「よし終わり! どうだった?」
「私はもう慣れてきた!」
「僕も!」
2人は汗をかいていたが、息は切れていなかった。
「はあ〜限界死んじゃうよ〜」
空音は滝のように汗をかいており、地面に溶けていた。
「はいはいお疲れ様」
私は空音の顔に魔法で生成した冷たい水をかけた。
「あ〜気持ち〜!」
「最初のうちはきついよね、よく頑張ったよ」
私はそう言いあらかじめ買っておいたペットボトルの水を渡した。
脱水症状で倒れられても困る。
「く〜生き返る〜! ありがとね、しーちゃん!」
「う、うん」
唐突に無邪気な笑顔を見せてきてびっくりしてしまった。
そんな顔するんだ……
「じゃあ次に行こう!」
穂乃果と凛兎君は前に水を扱えるようになっていたが、2人の適性元素は火だと思っている。そのため、今日は火を扱えるようになってもらおう。
「穂乃果と凛兎君は水じゃなくて、火を想像してみて。自由自在に形や出力を変えるイメージ」
「分かった」
「頑張ってみる」
よし2人とも偉い!
私は心の中でそう褒めた。
「空音は風を使って自分の体を浮かせたり、他人を浮かせたりするイメージね」
「任せて!」
疲れはもう取れたのだろうか。
楽しんでいるように見えた。
「はい終わり!」
10分経過した後私はそう言った。
これは先程と違って、ただイメージするだけなのでそこまで疲れない。
「私はいつでも大丈夫だよ!」
「僕も大丈夫」
「私もいける!」
「じゃあ順番に見せてね! まずは穂乃果!」
「うん!」
穂乃果はそう言うと、人差し指を水平方向に向けた。
その指の先に空気中の酸素が渦を巻いて集まっていくのが見えた。
そこに指から放出したマナが合わさり発火した。
指を振り上げた。
マナを中心とした火の球体が空に浮かび上がり、花火のように散り、火の雨を降らせた。
「わ! どうしよ、この先——」
「大丈夫」
私は穂乃果の考えを理解し、一瞬で水の屋根を作り3人を守った。
「ごめん、紫伊香……私、みんなを危ない目に……」
穂乃果は俯き震えていた。
「大丈夫だよ、私がついてるから! 凄い成長だったね! 偉い!」
私はそう言い穂乃果の頭を優しく撫でた。
「本当!」
目に光が戻り、表情が明るくなった。
「うん! けど、その先の事まで考えられるともっといいかな!」
「あ、うん! 頑張ります!」
穂乃果は笑顔でそう言った。
前世で隊員に上級魔法を教えていた頃を思い出す。
こうやって先生みたいな事するのはやっぱり恥ずかしいな。
「よし! じゃあ次、凛兎君!」
「はい。頑張ります」
そう言い私達の前へ行き、両掌を前方に突き出していた。
強大なマナが集まるのを感じた。
さっきの穂乃果の魔法はマナを熱源として、酸素と合わせる事で火の魔法を使っていた。
いわゆる燃焼によるエネルギーで温度を上げていたのだ。
当然熱いが、魔法を使える人間にとっては攻撃にすらならないレベルだ。
しかし、凛兎君のは違った。
凝縮された、濃度が極端に高いマナに、空気中の酸素とは違う物質を合わせて火を発生させていた。
穂乃果が生み出した火の5倍以上はあるだろう。太陽すらも超えるかもしれない。
紫伊香は分かっていなかったが、この時凛兎はマナにオゾンを用いて燃焼を起こしていた。
通常の酸素で燃焼させた炎は1500℃程度で、オゾンを使うと5800℃ほどになる。
「そこまで!」
私はそう言い、今にも凛兎君が放とうとしていた小型太陽のように凝縮された火の塊を、中級魔法を用い相殺した。
初級レベルを優に超えていた。
「え?」
「そんなの放ったら、ここら一体吹き飛んじゃうから!」
「ご、ごめん」
「怒ってないよ! むしろ褒めてる! これは中級レベルに匹敵するよ!」
私がそう言うと照れているようだった。
「次は空音! って、なんであんた服脱いでるの!」
空音は全身下着姿になっていた。
「なんか炎のせいで暑かったし、他の人から見えないんでしょ?」
「そうじゃなくて!」
凛兎君の方を向くと目を逸らしていた。
ちゃんと目を逸らしてて偉いぞ、思春期の男の子よ。
「はいはい、分かりましたよ」
そう言い空音は脱いだ服を着ていた。
「じゃあ仕切り直して、お願いね」
空音は風の魔法だ。
どのような物をイメージしたのだろうか。
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