第48話 もう1人の仲間について
支度を済ませ学校へ向かった。
「おはよ〜」
「おはよう紫伊香!」
穂乃果は既に来ていた。
その隣には当然のように瀬山君が座っていた。
早い時間であったため他にはクラスメイトがいなかった。
「瀬山君もおはよ」
「おはよう紫伊香さん」
女の子に対する緊張のようなものはもう感じられない。
「なんか2人とも距離近くなった? 昨日の写真とか今の様子とか」
私の言葉に反応するかのように2人は少し椅子を離した。
「べ、別にそんなことないよ! 一緒に訓練して仲良くなったみたいな!」
怪しさ満点であった。
しかし無理に2人の関係性に首を突っ込む必要などないため、それ以上は聞かなかった。
「そっか! そういえば2人に話したいことがあるんだけど——」
私が大事な話をしようとした時、クラスメイトが教室に入ってきた。
それに続くように次々と入ってきた。
「またお昼話そ!」
私がそう言うと2人は頷いてくれた。
3人は自席に戻り、朝のホームルームの準備をした。
今日は読書の日であったため、私は机の上に本を出した。
知識を増やそうと思い、異世界ファンタジーのライトノベルを買っていたのだ。
先生に怒られないよう表紙を隠すため、本屋のカバーはつけたままだ。
先生が教室に入ってきた。
「はい皆さんおはようございます! 今日は特に連絡はないので、もう読書に入ってもいいですよ!」
私は早速本を開いた。
栞を挟んでいなかったため大体の所から読み進めた。
普段本を読む機会はあまりなかったため、文字から想像する行為が難しく感じた。
「はいじゃあそこまでです! 1時間目の授業も頑張ってください!」
先生の声で現実世界に戻されたような感覚だった。
15分ほどであったが、小説の世界に没入していた気がした。
主人公の少女が因果を書き換えることができる代わりに、ランダムで大切なものが消えるという大きな代償を払う展開だった。
その対象は、記憶、体の一部、人、概念などであった。
恐ろしさもあったが、自己犠牲の精神と強大な力に惹きつけられた。
「紫伊香〜! 行くよ〜!」
「え! 何?!」
穂乃果が話しかけてきた。
「なんか心ここに在らずって感じだね、どうしたの?」
「小説が面白くってさ!」
「じゃあ今度私にも見せてもらおうかな」
「うん! それでどうしたの?」
「どうしたって、1時間目体育だよ?」
あ、忘れていた。
今日はバスケットボールの授業で、更衣室で着替えた後、体育館まで行かなければならない。
「危ない忘れてた! ありがとう穂乃果!」
「色々大変だもんね、1人で抱えすぎないでね」
穂乃果の心遣いはありがたかったが、そういう訳ではない。
単に私が間抜けで授業のことを頭に入れてなかっただけだ。
恥ずかしさを抑え準備をした。
「待たせてごめん行こっか!」
「大丈夫だよ!」
そう言ってもらい、2人で走って向かった。
午前の授業が終わった。
「じゃあ2人とも行こう」
瀬山君の方からそう言ってきた。
少しの間で成長したんだなと私は感心した。
「私提出物あるから先行ってて!」
宿題の出し忘れを先生に渡すためにそう言い、2人に先に行ってもらった。
「これで良し!」
何とか宿題を出し終えた。
怖い先生で有名だったが、何とか怒られずに済んだ。
急いで屋上へ向かった。
「あれ! あ、鍵ないかごめん!」
屋上は私しか開けられないのを忘れていたため、2人は屋上前の階段で座ってご飯を食べていた。
「大丈夫だよ! 提出物は出せた?」
「もちろんバッチリ!」
そう言いながら鍵を開けた。
「やっぱ屋上はいつ来ても気持ちがいいな!」
「そうだね! 私達だけの秘密基地!」
穂乃果がそう言った。
秘密基地か、なんか良いな。
「それで紫伊香さんが朝話そうとしてたことって何?」
瀬山君がそう聞いてきた。
朝少し口に出したことを覚えてくれていたんだと嬉しく感じた。
「そうそう2人に言わなきゃいけないことがあってさ! もう1人仲間ができたの!」
「仲間?!」
穂乃果と瀬山君が声を揃えてそう言った。
突然のことで驚くのも無理もない。
「仲間ってもしかしてこの学校の人?」
「違う」
「僕達が知っている人?」
「ん〜、多分知らない」
穂乃果と瀬山君の質問に答えた。
「高校3年生の女の子なんだ! 私より少し背が高い子!」
「高校生?!」
また2人は声を揃えてそう言った。
「う、うん! けど凄い助っ人になってくれると思う!」
私は空音について2人に詳しく話した。
「ハッカーって悪い人じゃないの?」
穂乃果は眉をひそめながらそう聞いてきた。
「ハッカー自体は悪い人じゃないよ! 悪意を持ったハッカーはクラッカーって言うんだよ!」
私が持つ知識で穂乃果に伝えた。
私が仲間として受け入れたからと言って、この2人が拒絶したらそれまでだ。
「それでその三城さんって人と今度会わせてくれるの?」
瀬山君がそう聞いてきた。
「うん! 土曜日とかどうかな?!」
「私は空いてるよ。凛兎君は?」
「凛兎君?」
穂乃果がそう呼ぶのを初めて聞いた。
「ち、違うよ! 仲良くなろうってことで、私も下の名前で呼ぶことにしたの!」
「あ、そっか! そう言えば私も名前で呼ばせといて名前で呼んでなかった! 凛兎君って呼んでもいい?」
「べ、別に好きに呼んでもらっていいよ」
顔を赤くし明らかに照れていた。
何だか2人はただ仲良くなった訳ではないように見えるが、私達3人は仲良くなれているような気がしていた。
読んでいただきありがとうございます!
ぜひ、面白い、先を読んでみたいと思っていただけましたら、リアクション、ブックマーク、コメント等していただけると励みになります!




