第47話 トラウマになる前世の音
連絡先だけ交換してその日は解散した。
完全に信じ切った訳ではないが、敵意や悪意などは感じられなかったため仲間にした。
「は〜無駄に神経すり減らした……」
1人になり安堵のため息をついた。
敵か味方か分からない人と長い時間話したため疲れた。
相手は高校生で時間を戻す前の私と同じ学年の高校3年生。
もし本当に仲間になってくれるなら、瀬山君と穂乃果にとっても頼もしい存在だろう。
空音はちょっと変なところがあるように感じられたが、それでも高校生だ。中学生から見たら大人のようなものだ。
「ラーメンでも食べて帰るか」
渋谷には私が好きなラーメン屋さんがあるため、そこで食事を済ませ帰宅する事にした。
家に帰りシャワーや、歯磨きなどを諸々済ませ、自分の部屋に戻った。
「あ、気づかなかった」
通知が何件か溜まっていた。
開くと穂乃果からのメッセージであった。
そこには、
『今日一日頑張った分のご褒美』
という文章と、穂乃果と瀬山君が白桃のパフェを食べているツーショットが送られていた。
「は! なにこれ?! ずる!! てか、デートみたいじゃん」
男女が制服を着て放課後にパフェを食べてツーショットを撮るなど、カップルそのものだ。
つい最近関わるようになったため、まだそんな関係性では無いだろう。
まだなんて表現だとこれからそうなるみたいだが、2人はそのくらい親しくなっているように見えた。
私と違って2人は正真正銘の中学生で、彼氏彼女になる可能性もある。
穂乃果と瀬山君がそうなったら私はどうなる?
空音と?
「ないない!」
女の子同士がどうとか、歳の差がどうとかって訳では無く、あの子は未知の塊だからな。
他の人から見たら私も未知の存在過ぎるけど。
未だにどうしてエリーの記憶を持って紫伊香として存在してるかは分からない。
色々と背負っている事はあるが、恋愛くらい私もしたいものだ。
「パフェデートか……いいな……」
嫉妬心や、今日の出来事による疲れから眠くなってきた。
「もう寝よ」
紫伊香は布団に入り、数分もしないうちに眠りについた。
「エリーさん行きますよ!」
「少し休ませて……」
なぜローラがそこまで元気なのか分からない。
ローラは10代で私は20代だからだろうか。
ついさっきまで重要な会議が行われていた。
リカネアの今後についてと、フォール全体についての会議だ。
近頃、リカネアの至る所で上級魔法を使用した痕跡が確認されている。
どのように習得したかは記憶にないが、上級魔法は私とローラだけが知っているはずだった。
しかし魔法の痕跡によって、フォールだけでなく議会全体にも存在が広まった。
更には闇の情報屋経由で裏社会の住人にも広まったことにより、星全体の勢力均衡が崩れ、一般市民達が危険に脅かされる事態が発生してしまった。
それに対し、フォール内でも上級魔法を習得することになり、私は自分から既に使える事を話したため、隊員達に教育する役割が議会から与えられた。
加えて、裏社会の人間を殲滅する計画についても話し合った。
これらが会議で話した大体の内容だ。
「じゃあ先食堂行ってますね〜! せっかく奢ろうと思ったのに」
「今行くから待って!」
「こう言うとエリーさんはすぐ元気になるんだから! 困った人ですね!」
ローラは私の扱い方が分かっている。
この世で一番美味しい食べ物はただ飯なのさ。
私とローラは本日のオススメである、具沢山クリームスープとパンのセットを食べた。
パンはふわふわで、スープとの相性が抜群であった。
「あ〜美味しかった! ありがとね、ローラ!」
「私の方が年下なのに〜」
ローラは体を前方に折りたたむように俯き、嘆いていた。
「今度美味しいお肉奢るから!」
「え! ほんとですか! エリーさんだ〜い好きです!」
ローラは本当にちょろくて可愛いな。
少し休憩した後、隊員の訓練を行おうと考えていた。
「え?」
私の考えとは関係なしにサイレンが鳴り響いた。
これは緊急レベル5、つまり最大レベルの警報だ。
何が起こったのだろうか。
「行きますよエリーさん」
「あ、うん! 行こう」
私よりローラの方が早く動けていた。
気が抜けてしまっている。しっかりしないと。
「何が起こったんですか?」
そこには議会の人々と、軍の幹部達がやってきていた。
「お、エリー君! 君に頼みたいことがあって?」
「はい?」
「危険な研究施設があるんだ。そこのトップを生きたまま捕まえてほしい」
「分かりました」
そんなことのためにレベル5の警報を鳴らしたことが許せなかった。
私1人を呼ぶために。
あの警報はリカネア存続に関わるようなレベルなのだ。
しかし、歯向かうことはできなかった。
力自体では、私1人で軍も議会も相手にできるが、それによって何が起こるか分からない。
ローラや他の隊員、離れた土地にいる家族など、私1人で守り切ることはできない。
権力というものは恐ろしい、フォールは議会に従わざるを得なかった。
「じゃあよろしく頼んだよ!」
私は返事をせず目的地へ向かった。
蝉の鳴き声と共に朝を迎えた。
部屋はエアコンが効いているが、外はきっと暑いだろう。
「懐かしい夢だったな、嫌な思い出だ」
今でも鮮明に覚えている、レベル5のサイレン音。
あれは全身を刺すような音だった。
時間を戻してからは初めて前世の夢を見た。
少しずつだが感じている。いずれ全てを思い出すだろう。
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