第46話 意味のある情報と意味のない情報
「あ! 海外の攻撃から日本を守ってくれたのがホワイトラットだ!」
「え? そんなことしてないけど?」
しまった。そうだった。
ホワイトラットが日本を救ったと有名になったのは時間を戻す前の私が高校2年生の頃であった。
つまり今から2年後だ。
「あ、ごめんなさい、勘違いでした」
自分のせいだが、恥をかいてしまった。
「あ、そう? てか私ってそんな有名だったんだ!」
「ハッカーって素性明かさないものですよね? いいんですか? そんな教えて」
普通ハッカーはインターネット上で情報戦をするため、物理的な力がない。
そのため、身元がバレる事が一番の脆弱性になり得る。
「もちろんダメだよ! けど、君は信頼できる。もう仲間みたいなものだよ!」
なぜそこまで信頼できるのかは分からない。
向こうは仲間だと言っているが、私はまだそうだとは思っていない。
「次は君が自己紹介してよ!」
空音はそう言い、笑顔で私が話すのを待っていた。
「分かりました。私は風山紫伊香です」
「え! それだけ?!」
怪しい人物にあまり情報を渡したくなかった。
「せめて、年齢を!」
それくらいならいいか。
「14歳。中学3年生です」
17歳と言わないようにだけ気をつけてそう言った。
「そんな下だったんだ! よし、しーちゃん! これからよろしくね!」
しーちゃん?
初めてそんな風に呼ばれた。
まあ別に呼び方なんてなんでもいいか。
「よろしくです。それで本題に入りたいのですが……」
「その前に! 敬語じゃなくていいよ!」
「分かった」
意識していた訳ではない。
なんとなくそうなっていただけだ。
「よし! しーちゃんが聞きたいことなんでも聞いて!」
「今この国、そして世界に起こっている事についてどこまで知ってるの?」
「えっとね、それは——よく分かんない!」
「え?」
「実は政府の機密情報全部抜き取って調べたんだけどさ、な〜んにも無かった!」
私が勘違いしていただけなのだろうか。
いや、間違いなくあの会見以外に重要な情報が隠されているはずだ。
けど空音は嘘をついているようには見えない。
「まだ調べ切れてないとかは——」
「ない! 私にとって呼吸をするのと同じようなものだからね」
「けど、政府は何かを……」
「私もそう思ってるよ! じゃあ、情報セキュリティの話でハッキングからの情報漏洩を防ぐにはどうすればいいと思う?」
いきなり情報の授業のような話が始まった。
そんなこと言われてもすぐには浮かばない。
「パスワードを定期的に変えるとか?」
「あはは、それもいいかもね! けどそれは個人レベルの話かな」
精一杯の回答だったが、笑われてしまい悔しかった。
「ちなみに私はシステムの最深部、OSのカーネル領域にバックドア仕掛けてるから、どれだけ頑張っても防ぐことはできないよ!」
「何言ってるか分からない、防げないなら答えなんて存在しないじゃん」
「ちっちっち! あるんだよそれが!」
私は信じられなかった。
本当にそんな方法があるのだろうか。
ふざけた回答をされるのではと思った。
「それは——紙で保存すること! そもそもデジタルではなくアナログで保存するの!」
「なるほど。じゃあ、政府は紙でのみ最重要機密情報を保管している。ってこと?」
「私はそう考えてる!」
確かに紙でならハッキングしたとしても見つからないだろう。
やはり直接向かう必要がありそうだ。
「他には何か知ってるの?」
私からは何を聞き出せばいいか分からなかったので、空音の方から言って欲しかった。
「ん〜、面白いのだと、世界中に使える人が現れたんだよね、魔法みたいな力」
やはりそうか。
瀬山君や空音だけでなく、世界中に魔法か超能力かは分からないが非科学的力を扱える人が発生しているという訳だ。
「空音もそうだよね? 魔法使えるよね」
「魔法? 分からないな〜」
「空音が見た夢はただの夢じゃないよ。あれはきっと、特殊な力だと思う」
私の時間を戻す前の世界を見たとは言えなかった。
詳しく話すにはまだ信用し切れない。
「あ、あれって魔法だったんだ!」
「た、多分? 後、私には見えるけどマナ回路が開いてるから魔法使えると思う」
瀬山君と同じように、魔法が使えるような状態になっていた。
私が関わらなくても魔法を使えるようになれる人が増えることは良い事だと考えて良いのだろうか。
「え、しーちゃん凄いね! なんか見せてよ!」
この前の失敗を活かして簡単な魔法を見せることにした。
「こんな感じかな」
椅子に座ったまま指を軽く動かし、水のロープのようなものを作り出し、空音の周りを囲った。
「わあ、面白い! けど、出会った時のに比べたら迫力に欠けるかも」
そうだった、出会って早々上級魔法を使ってしまっていた。
上級魔法特有の全身に電気が走り、寒気がする感覚を味わった後に初級元素魔法を見ても面白くないのは当然だ。
「まあこんなもんだね、てか色々と重要な情報を持ってそうだね」
「もちろん! 沢山あるよ! 芸能人の不倫とか、アイドルの恋愛とかのゴシップも!」
確かにそれも気になるが、今優先すべきことでは無かった。
「それもいいけど、もっと重要な情報とかは?」
「ん〜ここから先は有料だよ?」
いきなりぶりっ子のような口調で上目遣いをしてきた。
「え、お金取るってこと?」
中学生でバイトもできないため、この時の私はお金がほぼ無かった。
「違うよ! 私も仲間に入れてってこと!」
そういうことか。お金を要求されなくて良かった。
「分かった」
こうして謎の高校生ハッカー三城空音を仲間として受け入れた。
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