第45話 少女の正体
「わ〜凄いな! まいったまいった! 降参だよ!」
そう言い謎の少女は両手を上に上げていた。
銃だと思ったが、ただの指だったみたいだ。
その少女の髪の毛は黒髪で肩ほどの長さがあり、制服を着ていた。
高校生なのだろうか。
「貴方が私に向けてあの変な投稿をしたんですか?」
「そうそう私だよ! いや〜本当に会えるとは!」
「私のこと知っているんですか?」
「少し若いように感じるけど君だってすぐ分かるね!」
「いったい何を言っているのかさっぱりです……」
話している内容が意味不明だった。
まるで私が時間を戻して若返っていることを知っているかのように聞こえた。
しかしそれを知っているのは穂乃果と瀬山君だけで、他の人には教えていない。
「詳しくは分からないんだけどさ、つい最近さ! 夢で見たんだよね!」
「夢?」
「渋谷で女の子が変な力みたいなのを使っている夢を」
「それが私ってことですか?」
「うん! 今よりもお姉さんな見た目だったけど」
理解が追いつかないが、夢で時間を戻す前の世界を見たということだろうか。
瀬山君だけでなく、同じように謎の力に目覚めたのかもしれない。
「それは分かりましたが、SNSの件はどういうことですか? なんで私を見つけられたんですか?」
「実は私——ウィザードなんだよね!」
「貴方も魔法使いなんですか?」
「あはは、そうなるか! おっもしろいね!」
この人はなんでこんなに笑っているのだろうか。
「ウィザードとは言っても、ハッカーの方の意味ね!」
「まさか……」
普通の可愛い女子高生に見えたため、そっちの意味だとは思いもしなかった。
ウィザードと言ったら、ハッカーの中でも卓越した存在で、常人では理解できないような技術を扱うことができる人のことだ。
時間を戻す前、高校での情報の授業が面白く、ネットで調べていくうちに出てきたことを思い出した。
「そうだよ! 驚いた? 本気を出せば政府や企業、海外の機密情報だって得られちゃう!」
私の知っている世界とはまたレベルが違った話だ。
言葉の通り魔法を使えるような存在だ。
「ハッキングで私に接触したってことですか?」
「詳しく話すと長くなるんだけど、独自で集めたデータを元に一定のエネルギーを感知した場合にのみ表示されるようなシステムを構築して、アプリのソースコードを書き換えた!」
マナの存在を認識せずに、エネルギーを感知する仕組みを作ったのだろうか。
もしかしたら魔法と科学は完全に独立している訳ではないのかもしれない。
「さっきの停電も貴方が?」
「そう! 渋谷に来たはいいものの人多すぎてさ! 光を全部消して君を見つけやすくしたんだ!」
GPSで探せばいいのにと思ったが、そういう訳ではないのだろう。
「本当にハッカーなんですね」
「まだ信じてくれない? じゃあ私が過去にや——」
「もう大丈夫! 信じてますから!」
私はこの子が自慢話を始めるのを阻止した。
「一旦場所を移しましょう」
私は魔法を解除した。
上級魔法を維持するのも結構大変だ。
時間を戻す前に比べてマナが存在すると言っても、無限に使える訳ではない。
「お、みんな動き出した」
「ついてきてください。いい場所があるので」
時間を戻す前の世界で初めて魔法を使った場所へ向かった。
人がほとんどいなく、建物もない、空き地のような場所。
「あ、そっか……」
時間とは恐ろしいものだ。
空き地だからといって3年前も空き地とは限らない。
そこは人で溢れた公園であった。
「ここ結構人多くない?」
「ごめん勘違いしてました……」
こうなると渋谷に人が少ない場所などないだろう。
「じゃあ私について来てよ!」
少女はそう言うと歩き出した。
敵か味方かも分からない今、信用はしてないが新たな情報が得られると思いついて行った。
しばらく歩き人混みを抜けて住宅街のようなところに入った。
いったいどこへ向かっているのだろう。
「着いた!」
2階建てのアパートが目の前にあった。
お世辞にも綺麗とは言えない、古そうなアパートだ。
「なんですかここ?」
「私の隠れ家の1つ!」
「なるほど……」
ハッカーは至る所にそのような物を持っているのだろうか。
家の中にはミニマリストのように何も置いてないのを想像していたが、実際は家具がしっかりとあり、整理整頓されていた。
いざという時のために普通の家と同じようにしているのかもしれない。
「そこ座ってて!」
私はテーブルの横に置かれた椅子に腰掛けた。
少女は飲み物を入れ持って来てくれた。
「はい、どうぞ!」
「ありがとうございます」
「あ、毒とか入れてないから安心して!」
「そんなこと考えてもないですよ」
敵意など感じられなかったため、そのまま一口飲んだ。
「そう言えば自己紹介まだだったよね?」
確かにまだお互い名前を知らない。
「じゃあ私から! 三城空音18歳! 高校3年生だよ! ネット上ではホワイトラットって呼ばれてるハッカー!」
高校3年生と言うことは、今の私の3学年上ということになる。
それよりホワイトラットという名前を見たことがある。
「ホワイトラットって、ネズミの絵の周りが全部白くなる感じのですか?」
「わ〜凄い! よく知ってるね!」
名前だけ聞くと白いネズミのシンボルだと思うが、実際はネズミは色が無く、その周りの画面一帯を白く染めるといったものだ。
どこで見たのだろうか。
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