第41話 男女のお泊まりはダメ!
会見が始まった。
全国規模での話だと聞いていたが総理は世界と言った。
これが世界に配信されている訳ではないだろうが、世界規模で何かが起こっているという訳だ。
「1ヶ月ほど前に日本国内の山奥で爆発のようなものを感知して、調べたところによると成分が地球のものではないと判明しました。それと同時にその周辺で超常的な力を使用する生物が確認されました。これを私達は——」
会見はまだ始まったばかりだというのに話している内容は、普通ならありえないようなものばかりだった。
ここにいる3人ならともかく、普通の人達は混乱に陥るだろう。
超常的な力とはきっと魔法のことだ。
総理大臣はそのまま10分ほど話していた。
話は分かりやすくまとめているようで、どこか重要な内容を隠している雰囲気が漂っていた。
地方公共団体に判断を任せ、国全体として緊急事態宣言は出さないそうだ。
わざわざ全国同時放送して、内容が一般人には理解し難いものを話し、国としては何も対応しないとなると何のための放送なのか分からなかった。
この放送で1つだけ私の中の怒りが溢れるような内容があった。
それは日本国内で何件か、人的被害が発生したというもので、被害者の体の一部が枯葉のように崩れてしまったというものだった。
これは異空間で康介が、リカネアの謎の存在から攻撃を受けた時の怪我と類似していた。
あの化け物はこの時から地球に接触していたのか、それとも時間を戻したことによって何か変化が起きてしまったのか、今の私には知る由もなかった。
「2人とも! 案の定すごい内容だったね」
穂乃果と瀬山君は会見の間、途中で話したりせず、最後まで真剣に聞いていた。
中学生にも関わらず、それができるのは凄いなと私は感心していた。
「理解できないかと思ったけど、思ったより内容は分かった」
「私も同じく大体は把握できたかな」
瀬山君と穂乃果はこの難しい内容を理解していた。
私が知識を与えたことによって理解しやすかったのだろう。
「私は紫伊香のおかげで理解できたみたいな所あるけど、普通の人からすると意味不明だろうし、かえってパニックが広がるよね」
穂乃果も同じことを考えていた。
会見終了後はそれぞれのニュース番組が生放送で考察したり、話を整理したりしていたが、明日から、いや、もしかしたらこの瞬間から国中がパニックに陥って、食料や紙類などの買い占めが起こってしまわないだろうか。
「紫伊香見てこれ」
穂乃果がスマホを見せてきた。
SNSでのトレンドは会見の内容で埋め尽くされていた。
英語のトレンドでも、同じようなことが書かれているのが分かった。
日本だけでなく世界中で混乱が起きているのだろう。
「あはは、しばらくはこの話題しか流れてこないだろうね」
私にとって見慣れた状況であった。
結局あのオカルト記事通りになってしまった。
あの記事の発行主は誰なのだろう。
再びこの前の記事のリンクを踏んだが、すでに削除されていた。
「はあ、まじか……」
私は1人でそう呟いた。
きっと公表しなかった内容があるはずだ。
世界を救うためには少しでも情報を集める必要がある。
近いうちに突き止めてやる。
そんな真剣な思考を妨げるように穂乃果が口を開いた。
「そういえば瀬山君はどうするの?」
「どうするって、何が?」
瀬山君は困惑していた。
「え? 泊まっていくの?」
穂乃果は何を言っているのだろう。
年頃の付き合っていない男女がお泊まりしていいはずがない。
というか、付き合っていたとしても私は反対だ。
もしそういうことになった場合責任が取れる年齢ではないのだから。
瀬山君は顔を赤くして、頭から湯気が出そうであった。
「何言ってるの穂乃果! 男女でお泊まりなんてダメだよ!」
私がそう言うと瀬山君も小さく頷いているように見えた。
「どうして?」
穂乃果は冗談ではなく本心で言っているみたいだ。
良い意味でも悪い意味でも純粋なのだろう。
だからこそ危なく感じてしまう。
「ちょっとこっちきて!」
私は穂乃果の腕を掴んで部屋の外に出た。
「どうしたの?」
「どうしたのじゃないよ! 男女でお泊まりなんてダメなの!」
「なんで?」
「この年の男の子はね、ん〜、えっとね——えっちな生き物なんだよ!」
穂乃果はやっと理解したようだ。
顔を赤く染め、両手で顔を隠していた。
「け、けど——」
それでもまだ引かない様子であった。
「別々の部屋で寝れば解決だよね?」
どうしてそこまで、一緒に泊まろうと、まさか……
「私が瀬山君のこと好きって訳じゃないからね! 誤解招かないように先言っておくと!」
どうやら違ったらしい。
私の頭の中でも読んでいるのだろうか。
「じゃあなんでそんなに泊まって欲しいの?」
「こ、怖い……」
「何が?」
「家に人が少ない状況が……」
そういうことか、やっと理解できた。
私だけじゃなく、もう1人いた方が安心できるのだろう。
「学校では怖くないって言ってたのにね!」
私は冗談混じりでそう言った。
「だってさ……」
顔を赤くして怒ってくるかと思ったが違った。
穂乃果の声は震えていて、目からは数的小さな雫がこぼれ落ちた。
泣いてしまった。
その理由を少し考えた後、私は理解した。
「そうだよね、怖いよね、ゆっくり深呼吸して」
私はそう言い、涙を流す穂乃果の頭を優しく撫でた。
穂乃果はこの世界であの会見の内容を2番目に理解しただろう。
会見終了直後は処理が追いつかなかったが、少し時間が経った今分かったのだろう。
私が話した地球が終わるということが、どれだけ現実的なのか。
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