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前世の過ちを今世で活かす。そして君の存在を次元を超えて証明する。  作者: 茉莉レイ


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第4話 出来ないことなんて何もない

「紫伊香! ねえ紫伊香起きて!」


「ん〜? あれ、琳寧? パトロールはもう終わったの?」

 

「パトロール? なんのこと? 寝ぼけてるのか〜!」

 

 琳寧は首をかしげ柔らかい笑みを浮かべていた。


 ものすごい違和感があり、琳寧がいることに気を引かれ気づかなかったがここは学校の教室であった。

 

「琳寧は透明になって、街に異常がないかパトロールに行ったじゃん!!」 

 

 現状がよくわからず焦りながら言葉をぶつけた。

 

「え、ほんとにちょっとよくわからない、詳しく説明してよ」


 琳寧が冗談を言っていないのが分かっていたため余計に焦り、これまでのことを全部話した。

 

「え、私がそんなこと言った? 嘘だそんなSFチックなこと起こるはずないし前世って何?」


 琳寧は可笑しく思い、くすくすと笑って紫伊香を見つめた。

 

 話しているうちに琳寧の方が正しく感じ、私が寝ぼけていただけかもと思い始めた。

 それと同時に雷、暴風、大雨が起こり天気が悪くなったかと窓の外を眺めた。


 幻覚だったのかもと疑い始めていた記憶で見た、黒みがかった濃紫色の空と、螺旋状の亀裂なんかを凌駕するレベルの地獄のようで、どこか悪魔が微笑んでいるようにも見えた。


 めまいと吐き気がするような歪みを生んでいて、心臓の動悸が止まらずに立ってることすらできなかった。

 

「りん、ね、――ごほっ―― だいじょう、ぶ?」

 

「しい……か、もういし……きが、持たな……」

 

 琳寧は耐えきれず気絶してしまった。


 周りを見渡すとクラスメイト達は血を吐き出し倒れており、悲惨な状況であった。

 

 とりあえず琳寧を抱えて、誰も来ないであろう使われていない部室に入り込み、スマホを急いで取り出し何が起きているか調べた。


 snsで大量に投稿が出ているだろうと思い開いたが恐ろしいくらい直近の投稿が何ひとつなかった。ニュースもラジオも何もない。


 現状を知る術がなかった。琳寧に自分が着ていたセーターをかけ、近くのソファに横たえて部室を出て外に向かった。



 そこで目にしたのは災厄そのものであった。


 もう動かない人達がタイルのように敷き詰められていた。


 その周辺に見るだけで目が潰れるような圧力を感じさせ、今すぐ死んでしまいたくなる程のオーラを放っている者たちがいた。

 

 私たち人間と見た目が変わらない者が空中に浮いていた。


 その周りにいた近衛兵のようなものが3~4メートルほどで実体がなく悪魔のような見た目をしていたので、恐怖のあまりその場を動けず金縛りにあったかのようになった。


 こっちの都合に関係なく向こうにすぐ気づかれ、体から血の気が引いて死を覚悟した。

 

「まだ生きてたか。E……」

 

 その言葉の続きを聞く前に私は飛び起きた。外は雲ひとつない明るさと、鳥のさえずりが聞こえていた。

 

「なんだ、夢か……」

 

 夢で良かったという安堵と、あまりにも鮮明であったためあれは予知夢なんじゃないかという不安が残った。


 とても疲れが溜まる夢であり、もう1度眠りにつきたいと思ったがまた怖い夢を見るのを恐れてやめた。


 琳寧と夜に会えるのを楽しみに今日は学校に行くことにした。


 

 夢で見た教室と全く同じであったため不安が込み上げてきたが、クラスのみんなの元気な顔を見ている内に落ち着いてきた。


 私はスポーツが好きで、どんな競技でどんな大会でも出たもの全て全国大会で優勝していたが、スポーツ選手になりたいとか、大学にスポーツ推薦で行きたいとかの気持ちはなかった。


 そのため私は理系に進み熱心に勉強をしていた。

 今日の授業も集中したかったが先生の言葉が全て右から左に抜けていくようであった。

 

 そんな中最後の授業は物理であり難しい計算を説明していて、その言葉の中で"次元解析"という言葉が聞こえた。


 今日一日過ごしていて全く耳に言葉が流れてこない中唯一聴き馴染みのある次元というワードに反応し、説明を聞いていた。


 先生が言うには長さ、質量、時間などから物理の数式を解くときに両辺の次元が一緒にならないといけないらしく、それを利用して未知のことに対してある程度の予測が立てられるそうだ。


 正しく理解できたか確信はないが科学の世界は奥深いなと感じていた。

 授業が終わると先生に質問しに行った。

 

「先生質問があるんですけど時間大丈夫ですか?」

 

「風山さんが質問なんて珍しいね! 時間は問題ないよ」

 

「ありがとうございます。さっきの物理の次元と3次元、4次元とかの次元って一緒なんですか?」

 

「面白いことに気づいたね」


 褒められているようで少し嬉しかった。


「似ているようで少し違うんだ。さっき授業で説明していたのはいわゆる単位ってやつでメートル(m)とキログラム(kg)とかで、空間を意味する次元は任意のベクトルが直角に交わっていると言う状態でどちらも独立しているから次元という言葉が使われるんだよね」

 

 難しい言葉がたくさんありながらも、琳寧との会話の影響で理解はできた。

 

「それで先生。もし4次元とか、5次元とかに住民がいてその人達が地球にやってきた場合はどうなると思いますか?」

 

「すごい難しいこと聞いてきたね。私はそんなにSF物とか見たりしないからあまりわからないんだけど、仲良くなって新たな研究ができたら楽しいかもね」

 

「けどもし、悪意があって襲ってきたら勝ち目がなくないですか?」

 

「確かに必ずしも友好的とも限らないかもね。けど私は不可能なことなんて何もないと思っているんだよ」


 どこか先生から熱意を感じた。


「ガリレオが信念を貫いたように、空を飛ぶことができ月にもいけたように、限界は決まっている物じゃなく自分が決めつけている物なんだと思うよ」


 その言葉に私はハッと思わされた。


「けど、辛いとき無理しろってことではないからね!」


 最後の一言に先生の優しさも感じ取れた。

 

「すごく勉強になりました! ありがとうございます」

 

 先生の言葉に励まされ、未来は暗いものだと自分で決めつけてしまっていたと恥じた。


 

 家に帰り部屋のドアを開けると琳寧がいた。

 

「琳寧! もう来てくれてたの! 昨日は大丈夫だった?」

 

「うん! 昨日はなんともなかったよ。学校楽しかった?」

 

「ほとんどの授業話が入ってこなかったんだけど物理が楽しくてさ、先生といろいろ話したんだ!」

 

 琳寧に話せることが嬉しかった。

 勉強を頑張ることも、理系に進むことを決めたのも琳寧と話を合わせられるようにするためだったからだ。

 

「紫伊香が先生と話して楽しかったなんて珍しいね」

 

「でしょ〜! あ、そういえばさ変な怖い夢を見たんだけどさ」


「え、どんな夢?」


 琳寧の不安そうな顔を見て話すのを躊躇ったが全部話した。


「そっかそれは怖かったね。けどそんな者達の記憶なんて私にはないし、きっと心配事がそのまま夢に反映されただけだよ! 大丈夫!」

 

 琳寧の優しい声と微笑んだ顔で不安が飛んでいった。

 

「な〜んだ! 良かった!」

 

「いきなりだけど紫伊香に嬉しいニュースだよ!」

 

 琳寧は自慢げな顔をしながら言った。

 

「え! なに!」


「防御術式を解明できて姿を消したり出したりが自由にできるようになったの!」


「本当?! すごい! 私の記憶を戻せたりもしない?」

 

「残念なんだけど誰かに使用するのはまだできないみたいなんだ」

 

「そっか! 過去を共有できる日を楽しみにしているね! せっかくだしさ、今日は一緒にお泊まり会をしよう!」

 

 昨日見た夢が怖かったので今日は一緒にいたかったが恥ずかしくてそのまま言えなかった。

 

「昨日見た夢が怖かっただけでしょ! いいよ! お泊まり会しよ!」

 

 琳寧には全部お見通しで恥ずかくなり、顔が赤い果実のように色づいた。

 

 しかし恥ずかしさよりも今日一緒にいられることの嬉しさが勝った。

 

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