第3話 絶望の接近と残された可能性
「私が消えた次の日さっき説明した異次元同士が繋がる次元開通が起こり、街中に謎の生物がいたでしょ?」
「うん。変なのがたくさんいたよ」
「あれは私たちの過去の星から送られた偵察部隊で間違いない。あれはこの地球に住んでいる生物なんてものじゃなく。マナを動力源とした操り人形なの」
私はあれが生き物ではない事に驚いた。
「次元開通にもレベルがあり、最初のレベルでは不完全な状態であの星の人間は通過するには危険が多すぎるため偵察部隊という名の環境の歪みや数値、地球上の人間の性質などを調べ上げている」
「その話を聞いている感じだと、近いうちに地球に侵攻してくるってこと?」
「詳しくは私もわからない。それが明日かもしれないし、数年後かもしれないし、実際には人間が通過することは不可能なのかも」
「開発者なのにそんなに曖昧な認識なんだ!」
紫伊香の煽りに聞こえる発言に琳寧は恥ずかしさと苛立ちを感じた。
「しょうがないじゃん! 私が生み出したのはプロトタイプで実際のデータなんて何も知らないの!」
「言葉が過ぎたね、ごめん。じゃあもし侵攻してきたと仮定すると世界は、世界は対抗することができると思う?」
紫伊香の発言で一瞬の静寂が起きた後に琳寧は口を開いた。
「……100%勝てない。勝つ未来が全く見えない。私が持つ記憶であの星は魔法と科学両方が存在していている」
私は琳寧の言葉にゾッとした。
「科学だけでも向こうは数万年レベルで進んでいて、魔法も合わさることで戦闘力も技術力も、この星が太陽に飲み込まれる日まで待ったとしても到底追いつけるレベルではないと思う」
「じゃあその時が来る時まで怯えながら待つしかないの?」
紫伊香の不安そうな顔が愛くるしくてキュートアグレッションが起こるのを抑え、真剣に答えた。
「難しいことがたくさん絡むせいで断言できはしないけど、選択肢がないわけではないと思う。一番可能性があるのはあなたが持つポテンシャルなんだよ」
「私? 私に何かあるの?」
「紫伊香は前世の記憶が全くない状態だからわからないと思うけど、魔法を使った戦いにおいてあの星であなたの隣に出るものはいなかったんだよ」
私の前世について知りたいと内心思っていたため琳寧の口から出た言葉に驚いた。
「私ってそんな強かったんだ。私も琳寧みたいに前世の記憶を取り戻す術ないのかな?」
「あると思う。術式のプログラムを理解すれば記憶が徐々に戻るはずだよ。けど、まだ自分に作動している防御術式を完全に解除することができてないから時間がかかるかもしれない」
「わかった。ゆっくり待つね。そういえば、」
私が話すのを遮るように琳寧は言葉を被せてきた。
「紫伊香ごめん、制御が効かなくなってまた姿が見えなくなってしまう。また明日話そう」
「待って、姿は見えないかもしれないけど話すことはできるよね? 泊まっていってよ」
紫伊香の寂しさと不安を取っ払って安心させてあげたい気持ちがあったが、やるべきことがあった。
「そうしたいんだけど、姿が見えない間に街のパトロールみたいなことと、自分の前世の知識と力を使っていざという時のために後悔しないように研究をしておきたいんだ」
琳寧が背負っていることの全てをわからないことが苦しく、軽々しく頑張ってとか、無理しないでとか言えるわけなかった。
「さすが琳寧! とてもかっこよくて惚れちゃうな〜! また明日ね!」
「何言ってるの! うん! また明日」
ただ冗談っぽくおどけたように送り出すことしかできなかった。
琳寧が出ていった後、非現実的な色々なことを考えた。
魔法、前世の記憶、地球の未来など、まだ17年しか生きていない少女にとって哲学的すぎてとても難しく感じた。まあ実際にはプラスで何十年か生きているのかもだけど。
と頭の中でセルフツッコミを入れた。
前世について、地球より進んでいるとか、魔法が存在するとか、私は強く、琳寧は研究者のような立ち位置だったくらいしかわからなく、まだまだ多くの疑問が残っていた。
「あ〜もう色々考えても何も進展ないし、ただ疲れるだけだ」
考え事の多さのあまり弱音を吐いた。
魔法についての記事はいくら調べても現実的なものなどはなかったため、次元について調べることにした。
まず私達が住む世界が3次元、2次元は平面で、1次元は長さのみの線で、0次元は点。
4次元については3次元に住む私達では観測不可能らしい。
ただ、考えるとしたらもう1つベクトルを加え、それを時間軸と捉えるらしいが諸説あるそうだ。
学者の中にはその上の次元もあると言ってる人もいるみたい。
読んでるだけで頭の中がパンクしそうになった。
「4次元か。縦横高さに加えて時間軸。この次元に住むことができた場合は過去、未来、前世、来世も自由に行き来することができるのかな」
SFの世界のようで、それを想像している間はこれから来るかもしれない不安を一時的にでも忘れることができたので考え続けた。
琳寧は私達の前世は次元が違うと言っていたから、もしかしたら記憶が蘇れば理解できるかな。
そういえばなんで私達は前世からいわば転生したんだろうか。
これも前世での魔法によるものなのかどうか気になったが知る術がなかった。
琳寧は前世の記憶が蘇り強いのかもしれないが、私が知る琳寧はただ学ぶことが好きで、常に探究心があって、けど少し臆病な普通の17歳の少女。
心配はなくならないし隣に立っていてあげたいという気持ちが強くあり、何もできない現状が耐え難いものであった。
「もう疲れたし寝よう」
いつもより少し早い時間であったがこれ以上考え事をしていても精神的に疲れてしまうだけだと思い眠りについた。




