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前世の記憶を手に入れた女子高生は、終わりを迎える地球で世界と幼馴染のどちらを選ぶ  作者: 茉莉レイ
第二章

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第36話 私の知る世界と知らない世界

 穂乃果を家に送った帰り道、私は歩きながら違和感の正体を考えた。


 なんだろうこの、モヤモヤとする感じ。

 当たり前にあった物が抜け落ちたようだ。


 それが人なのか、物なのか、それとも場所なのかは分からない。

 ただ何かが抜け落ちた感覚だ。


 時間を大きく戻したんだ。何かしらのリスクはあるのだろう。

 失った物がわからない今、悲しみや絶望などの感情はない。

 

 ただ1つ、違和感があるだけだ。


 

 家の前に着いた。何だか道のりが長く感じた。

 家の明かりはついており、換気扇からはカレーの匂いがする。


「ただいま〜!」


「おかえり! 少し遅かったね」


「友達と遊んでた!」


「学校帰りそのまま遊ぶなんて珍しいね!」


 確かに私は中学の頃、学校帰りにそのまま遊びに行ったりは滅多にしなかった。


「まあ、たまにはね!」


「ご飯できてるから先お風呂入っちゃいな!」


「は〜い!」

 


 あの匂いからして今日はカレーライスか。

 またこうしてお母さんの手料理が食べられるなんて。

 

 私は感極まって泣きそうになった。


 浴室のドアを開けるとお湯が溜められていた。


「お湯が、出てる!!」


 ゆっくりと足を入れ、熱さに慣らしながら入った。


「あったか〜!」


 科学の力って凄い。そう思ってしまう。


 日本人にとって当たり前のことかもしれないが、水、ガス、電気を使えることは当たり前じゃない。

 その裏側で頑張ってる人々のおかげで使えてるんだ。


 私にとって日常は、家族、友達など、狭い範囲でのことであったが、実際に人がいなくなった世界を経験したことによって、多くの人がいて成り立っているんだなと実感した。

 

 まるで温泉に浸かっているかのような暖かさや安心感、それが私を癒した。


「何だろう。ぜんっぜん分かんない」


 気にしないようにしていても頭の中から消えることはない。

 小さな違和感が徐々に全体を侵食するように、私を悩ませた。


 場所の記憶が抜け落ちたとしたらどうだろう。

 前世リカネアや、時間を戻す前の高校、異空間、1人温泉旅。


 しっかり覚えている。

 もし忘れていたとしても、絶望するほどの場所などないだろう。

 この憶測自体が良くないのかもしれないが一旦そう結論づけるか。


 物の記憶が抜け落ちたとしたらどうだろう。

 大好きな服や、スマホ、大会のトロフィー。


 他に大切な物って何かあるかな。って考えても忘れてたら無理か。

 命と同じくらい大切なアルバムとか人形とか、あるとしたらそこら辺かな。


「私、人形集めとかしたりはしないだろうな」


 考えたくはないが残されたのはこれか。

 人の記憶。


 人の記憶が抜け落ちたとしたら。そう考えるだけで少し怖い。


 全く知らない人の記憶がなくなる分には、申し訳ないがあまり気にしない。

 ただ、対価として弱いからそれはないだろう。


 私の大切な人か。

 お父さんやお母さん、小雪、康介、穂乃果、千住君、ローラにフォリアさん。


「他にいたかな……」

 

 私の人生に大きく関わった人はこれくらいかな。

 どうしてかは分からないが、違和感がある。

 重大な何かを忘れているとしたら人の記憶だろう。


 私の感が何とかなくそう言っているだけであって、絶対ではない。

 決めつけは視野を狭めてしまう。


 失った記憶を取り戻す方法はないのだろうか。

 これから3年後、地球滅亡の危機が再び訪れるだろう。


 その過程のどこかで、リカネア側から地球へのバックドアが仕掛けられるだろう。

 次元が異なる星同士の接触によってエネルギー密度が高まるはずだ。

 それを利用すればもしかしたら、何か変えられるかもしれない。


 全てが憶測だ、けどモヤモヤを紛らわすには考えているしかなかった。



 お風呂から出てカレーライスを食べた後、自分の部屋に戻った。


「動画も、ニュースも見たことあるような物ばっかでつまらないな」


 当然過去に戻ったのだから仕方がない。


「数字当てる宝くじみたいなのやれば儲かるかも!」


 そう思ったが、時間を戻す前に覚えていなきゃ意味がない。

 そもそも過去に戻ってズルをしてお金持ちになるなんて良くないか。


 地球に異変が起こってないかオカルトや陰謀論などの類を調べた。

 1つ気になるような記事があった。


 私はそれを声に出して読み上げた。


「近い内に政府は公開する。魔法の存在と、未知の存在について」


 普通の人ならよくあるUMA特集とか、オカルト記事だとかって思うだろうが私は違った。

 政府、魔法、未知の存在なんて単語が普通組み合わされないだろう。

 

「政府ね……」


 何だか気になる。

 近いうちに公開するなら、嘘でも本当でも待てばいいか。


 時間を戻す前、中学生の頃の私は魔法を使えるわけでも、前世の知識があるわけでもなかった。

 だから、その当時政府が何か知っていたとか、リカネア側の何かが侵入してたとかそんなのは認識できない。


 時間を大きく戻したことで、記憶が抜け落ちただけでなくそもそもの世界が変わってしまった可能性もある。


 1つの根拠として、大気にマナがあること。

 地球にマナが存在するはずがないのに、なぜか戻った時からマナがあった。


 もし政府が何か隠しているようなら、私が力ずくで明らかにするしかない。

 魔法を使える私にとって、この国の権力や武力は相手ではない。


 真実のためになら普通の人間に対して魔法を使うのを厭わない。



 紫伊香が怪しい記事を見つけてから一週間が経った。

 良くも悪くも、その記事通り政府は何らかの発表を決めた。

 

 

 

読んでいただきありがとうございます!


ぜひ、面白い、先を読んでみたいと思っていただけましたら、リアクション、ブックマーク、コメント等していただけると励みになります!

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