第33話 私の知らない未来とこれから知る過去
中に入り、そのまま私の部屋に向かった。
「今日は楽しかったね! ちょっと疲れたし一旦休もっか!」
「うん」
琳寧も疲れているだろうし、私も疲れていた。
部屋着に着替え、隣同士でベッドに座った。
私は今すぐ琳寧とのイチャイチャタイムを始めたかったが、琳寧はそんな感じではなさそうだ。
旅行の帰り際から何か様子がおかしかった。
疲れたからだと思っていたがそれだけでないのかもしれない。
「琳寧? どうかしたの? 帰り際からあまり話してくれないけど」
我慢できずに聞いてしまった。
何も答えてくれない。
それどころか顔を背けてしまった。
「——琳寧?」
少しの間の後、再び名前を呼んだ。
無言を貫いていた琳寧から涙がこぼれ落ちた。
私に背を向けていたため、腕と体の隙間からそれが見えた。
なんで泣いているのか、何が起きているのか。
私は混乱していて何も分からない。
私は優しく抱きしめた。
「大丈夫。大丈夫だからね、琳寧」
「ごめん紫伊香。ごめん」
琳寧はこっちに振り向き涙を流し、苦しそうな声で謝ってきた。
「辛い時は泣いていいんだよ」
私は優しく頭を撫でてあげた。
「違うの……そうじゃないの!」
琳寧の表情に焦り、怒り、悲しみを感じた。
その感情に心当たりは何もない。
「紫伊香にはいくつも嘘をついてしまっていた……」
突然の言葉に驚いた。
「私のこと本当は愛してないとかじゃ——」
「違う! 愛してるのは嘘じゃない!」
私の言葉を遮るように、否定した。
ひとまず安心できた。
「じゃあどれのこと?」
琳寧は呼吸が乱れていた。
言葉にするのを恐れているように見えた。
「リカネアが地球を終わらせるのが今日ということを黙ってた」
意味が分からなかった。
「なんで? 地球の資源のみ目的じゃないの? てかなんで分かるの?」
「地球の中心部の核が取られたら地球は崩壊するの。私が分かるのは、過去だけでなく、未来を一度見たから」
「未来を?」
「うん」
琳寧は未来を、結末をすでに知っていた。
その事実が私を最も驚かせた。
「どうなったの?」
聞かずにはいられなかった。
「人がいなくなった後、地球に大量の上級魔術師が入り込んできて、地球の核が全て抜かれたの。そして私は崩壊から逃れるために紫伊香と地球を出て別の星に向かった。けど食料がなく長くは生きられなくて、再び時間を操作した」
スケールが大きすぎて理解しきれなかったが、琳寧が背負っているものの大きさは理解した。
「琳寧にばかり背負わせてしまってごめんね」
「紫伊香は何も悪くないよ」
お互いに抱き合い涙を流した。
私は自分の無力さを実感した。
敵は強大で、地球に人はいなく絶望的な現状。
琳寧が時間を操作したとしても未来を変えられなかった事実。
それでも私は琳寧に尋ねた。
「未来って、変えられないのかな……」
琳寧は答えない。苦しそうに見える。
この答えを知りたい。怖いが知りたい。
「何かわかるなら教えて、琳寧」
手を強く握り、深呼吸をした後、苦しそうな声で琳寧は答えた。
「1つだけ方法が見つかったの。この時間軸で紫伊香が前世を思い出し、上級魔法を封印された今だからこそできること」
「どうすれば……いいの?」
解決策が見つかったならそんな苦しそうにする必要はない。
つまり、これはそんな甘い話ではない。
そんなことを分かった上で私は聞いた。
「私のマナを全て紫伊香に流し、強制的に時間操作を行う」
琳寧の言っていることを1ミリも理解できなかった。
マナを私に流して、強制的に時間操作とは。
「ごめん。あんま理解できてない」
「分かりやすく言うと、私のマナを全て使って、それを紫伊香のマナ回路に流し込み、時間操作を無理やり行うの。そうすれば何年も前に戻って作戦を立て直せると思う」
細かい部分は理解しきれていないが大体は分かった。
「記憶を持ったまま戻れるの?」
「——う、うん」
一瞬の間の後琳寧は頷いてくれた。
記憶を持ったまま数年前に戻れるのは大きい。
知識がある中で鍛えられればさらに強くなるはずだ。
前世を超えることは容易だろう。
そんなことを考えていると爆発音や雷鳴のようが聞こえた。
窓の外を見ると空が揺れている。紫色の地獄の炎が広がっている。
始まったのだ。地球の終わりが。
今日地球が終わると言うのは本当だったんだ。
「琳寧! もう始まっちゃったよ! 早くそれやろ?」
「わ、分かってる。ごめん、ちょっと、緊張して……」
琳寧の手は震えていた。
今まで見た中で一番辛そうであった。
震える手を抑えながら私の背中に手のひらをくっつけた。
接触部分から琳寧の恐怖や不安を感じた。
何か、私は何か見落としているように感じた。
突然の状況で頭が回らない。
——待って。そういえば琳寧、マナ全部使うって言わなかったっけ。
「ねえ、琳寧? これした後琳寧はどうなるの?」
「黙ってて! そんなこと言ってられる状況じゃないの!」
琳寧は涙を流しながら強い口調でそう言った。
普段なら私はそこで言い返すのを辞めただろう。
けど今は聞かなければならない。
「答えてよ! マナが全部無くなったらどうなるの? 琳寧も記憶を持ったまま無事に過去に存在するの? ね——」
琳寧は音を遮断した。これ以上何も聞けない。
それどころか金縛りにあったかのように体も動かせなくなった。
身体中に電気を流されたんだ。
だんだん視界がぼやけてきた。
数年も過去に飛ぶなんてやったことがない。
どうなるかなんて分からない。
「紫伊香1人にしてごめんね。地球を、私を、救って……」
これが最後に聞いた言葉だ。
これで第一章は終わりです!
最後まで読んでいただきありがとうございます!
次の章から紫伊香の新しい戦いが始まっていきます!
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