第32話 魔法を使った世界に1つだけのサプライズ
「わあ〜! すごい! 来てみたかったんだよね!」
「私は紫伊香のことなんでも分かるからね!」
私のことを考えてくれたんだと、嬉しくなった。
鎌倉には神社や寺に、自然、そして大仏など様々な観光スポットがあった。
本来なら多くの人がそこらじゅうにいて、食べ歩きやお店の中が賑わっていたと思うと少し寂しく感じた。
私達のようなカップルや、家族、友達、観光客など多くの人が訪れていたはずだ。
この寂しい感情を消し去ることはできないが、今は琳寧と2人きりのデートを楽しみたい。
「もう回るところ決めてるの?」
「もちろん!」
かなり前から綿密に計画していたかのような自信を琳寧から感じた。
私はそれが凄く嬉しかった。
こんな状況でも私との時間を大切にしてくれるんだと。
「流石だ! ありがとう!」
「本当だったら食べ歩きしたいけど、こんな状況だからそれは飛ばそっか」
「仕方ないもんね! 食べなくても平気だし色々回ろ!」
魔法のおかげでエネルギー消費を抑えられるため、空腹になりにくい。
「最初は神社へ参拝しに行こうか!」
「うん!」
3分ほどで到着し、鳥居をくぐった。
2人はお賽銭箱に優しく静かに5円を入れた。
作法に従い、二拝二拍手一拝をした。
「琳寧は何を願ったの!」
「話したからって何か問題がある訳じゃないけど、心にしまっておきたいな」
琳寧が何を願ったか知りたかったが、その心を尊重した。
「紫伊香は?」
私はこういうのは全部友達や家族に言ってしまう。
「琳寧といつまでもこうして幸せにいられますように! って願ったよ!」
私の言葉を聞いて、琳寧は涙を浮かべていた。
そこまで、と思ったがきっと琳寧にとっては嬉しかったんだろう。
「紫伊香はさ、本当に優しいね。いつも私のために……」
啜り泣きながらそう言った。
「琳寧もいつも私のためにしてくれるからね」
私はそう言い優しく琳寧の頭を撫でた。
数十秒程そうしていた。
「うん! もう大丈夫だよ! 泣き虫でごめんね!」
「赤ちゃんみたいで可愛いからいいよ!」
私の冗談混じりの言葉で、琳寧は頬をふぐのように膨らましていた。
可愛い、私の彼女可愛すぎるよ。
「次の場所行こ!」
琳寧は笑顔を見せ、私の手を引っ張った。
次はどこに連れて行くんだろうとワクワクした。
何分か歩いていると、目の前に大仏が見えた。
「大仏〜!」
私はあまりの大きさにはしゃいでしまった。
「そう! 大仏だよ! ここで写真撮ろっか!」
「撮りたい撮りたい!」
「自撮り棒とかなくても私達なら自由自在に撮れるね」
そういうとスマホを宙に浮かせ、様々な距離や角度からたくさんの写真を撮った。
「あ、そうだ、vlog撮ってみない?」
「vlogって?」
琳寧は知らないみたいだ。
「最近流行ってるやつだよ! Video Blogの略で、動画に旅行先の体験とかを記録するの!」
「ヘ〜そんなの流行ってたんだ! いいね! 楽しそう!」
琳寧の同意を得て、スマホを宙に浮かし動画を撮ることにした。
なんだかインフルエンサーになった気分だ。
大仏を見終えて、一通り他も堪能し、太陽が落ちはじめようとしていた。
しかし、琳寧はまだまだ終わらないといった様子であった。
口角を上げて微笑んだ琳寧が口を開いた。
「次は私達しか味わえない景色を見せるよ」
琳寧が何を計画しているのか私は気になった。
「楽しみ!」
すると周りに風の魔法が生まれ、上昇気流が生まれた。
琳寧による魔法だ。
その魔法は柔らかく、暖かく、私達を包み込むように上空に持ち上げた。
「え! 何するの?!」
突然の魔法を使ったサプライズに心躍らせた。
「紫伊香。下見てみて!」
琳寧が指差した方を見ると素晴らしい景色が広がっていた。
広大な緑や、綺麗な海、そして先ほどまで見上げるように大きかった大仏が豆粒のように小さく見えた。
しかしサプライズはそれだけでなかった。
地面から花火のようなものが発射された。
頂点に達し、光り輝いた。
一瞬だけ文字が見えた。
——紫伊香のことをずっと愛してる——
琳寧のサプライズに私は感動して泣いてしまった。
こんなことをしてくれる彼女はどこを探してもいないだろう。
「ありがとう、琳寧! 私もずっとずうっと愛してる!!」
「大好きだよ、紫伊香!」
私は琳寧を抱きしめた。
空気の暖かさと、琳寧から伝わる柔らかい温かさが混ざり合い心地よかった。
1分ほどそうしていた。
満足した後、琳寧の魔法で下に降りた。
「ねえ! さっきのどうやっての!」
さっきは嬉しさでいっぱいであったが、今は仕組みを知りたかった。
「あれは花火ではなくて、魔法で色々混ぜたものなの! 召喚術式でマナ人形を動かし設置させたの」
仕組みもそうだが、前世よりも魔法のレパートリーが増えていることに驚いた。
召喚術式なんて使ったことを見たことがなかった。
「なんか凄いね! 私のためにありがとうね!」
本当に琳寧は尊敬できる点が多いと感じた。
「そろそろ帰ろっか」
琳寧の声に寂しさのようなものが感じられた。
「そうだね! あっという間だったけど楽しかった!」
「それはよかった!」
琳寧は笑ってくれた。
帰りの空飛ぶ車の中ではあまり会話が起きなかった。というよりも、琳寧は疲れたのかあまり会話が続かなく感じた。
無理に話す必要もないかと思い、下に見える人気のない虚無な景色を見ていた。
帰り道は長く感じた。
元あった場所に車を戻し、2人は家に向かった。
家までの帰り道も同じように、琳寧はあまり話さなかった。
大量にマナを使っているように見えたため、疲れているんだろう。
会話がないまま私の家に着いた。
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