第28話 私の幼馴染は強がり
2026年7月14日にタイトルを「前世の過ちを今世で活かす。そして君の存在を次元を超えて証明する。」から
「 前世の記憶を手に入れた女子高生は、終わりを迎える地球で世界と幼馴染のどちらを選ぶ」に変更しました。
最初に動き出したのはサイカであった。
土属性の魔法を使い地面から何本ものスパイクを出し私を狙った。
それを必死で避けているが、攻撃の速さに反撃できずにいた。
「そんなんじゃ私に勝てないよエリー」
サイカの煽りに反論したいが手も足も出なかった。
それどころか追い打ちをかけてきた。
地面からの攻撃だけでなく、同時に火の槍と電撃を放った。
これを防ぎ、避け続けることは不可能だと感じた私は、何とか攻撃を仕掛けようとした。
風の魔法と水の魔法を融合することで、地面や空中をスケートリンクのように滑らかに移動し琳寧との距離を詰め近接攻撃を仕掛けた。
ほとんどの初級魔法に溜めなど必要ないが、ある程度の集中が必要なのと、一瞬の間がある。
近くでずっとみてきたため私はサイカの弱点を知っていた。
元素魔法を発動する前に、一瞬の隙も与えないように高速で近接攻撃を繰り返せば良い。
私は全身に電気を走らせ打撃を繰り返した。
今度はサイカが追い込まれた。
「どう? サイカこれきついでしょ」
「流石ずっと一緒にいただけあるね」
しかし私の全身全霊の攻撃でも一瞬の隙はできてしまう。
その隙を逃すはずもなく、土のハンマーのようなものが急に現れ私を吹き飛ばした。
「いっっっったあ〜!」
手加減のない攻撃で防御を貫通する痛さであった。
「今日はここまでにしよっか紫伊香」
優しい表情で近づいてきた琳寧は、勝負はもうついたと言っているような目をしていた。
「流石にお手上げ! というか最後の痛すぎだよ!」
「ごめんごめん! え、っていうか血出てるじゃん!」
そういうと琳寧は焦って回復魔法を使ってきた。
全身を保護しながら戦っていたため、絆創膏を貼っておけばいいような傷であったが、琳寧にとってはきっとそうでなかったんだろう。
その優しさに私は嬉しくなった。
「はい! これで大丈夫!」
琳寧がそう言うと痛みも、傷もなくなっていた。
「ありがとう!」
「紫伊香今でも十分魔法使いこなせてるし、戦闘センスも昔のままで流石だったよ!」
私は負けたのに急に褒められ恥ずかしくなった。
「上級魔法なしでここまで強い琳寧の方が凄いよ!」
今回の戦いは私が上級魔法を使えないことから琳寧は初級魔法のみで戦っていた。
それでいてあの強さなのだから、今の私では到底超えることができないように感じた。
「紫伊香が上級魔法を使えない理由聞いてもいい?」
戦闘が終わり私に疑問をぶつけてきた。
「実は使えていたんだけど、異空間で何かによって使用を妨げられて、戻った今も使えないの……」
琳寧は数秒何かを考えた後、口を開いた。
「——もしかしたらそれ、呪縛かもしれない」
「呪縛?」
単語自体は知っているが、琳寧がどんな意味で使っているか分からなかった。
「うん。上級魔法の強力さからそれを阻害するための呪縛という術式が作られていたと聞いたことがある」
「聞いたことが? いつ?」
「私達が前世で最期を迎える少し前に、議会の人間が話しているところが聞こえた程度なの」
そういうことか。
私達が持っているリカネアでの記憶から遥かに時間が進んでいて、上級魔法に対抗するものを生み出してしまっていたのか。
「それの解き方とかわかる?」
「ごめん。私には分からない」
「だよね、大丈夫だよ。ていうかそんなもの作り出しちゃってる奴らに私達で勝てるのかな?」
「勝てるか、勝てないかじゃない。そうするしかない運命なんだよ……」
琳寧の弱々しい声、震える手、目から溢れる涙、それらをみてやっと理解した。
私なんかとは比べ物にならないほどの未来を想像していたのだ。
きっと最初から勝つつもりなどなかった。勝てるわけがなかった。
昨日再び出会えた時から、琳寧は私にまだ希望があるように明るく見せていたんだ。
よく考えれば分かる事だ。奇跡なんて起こったとしても勝てるはずがない。
残酷にもそれが運命というやつだ。
私は琳寧を優しく抱きしめた。
「大丈夫だよ琳寧。私がずっと一緒にいるから。今日はもう家に戻ろうか?」
「うん……ありがとう……」
弱々しい声で返事をしてくれた。
琳寧の転移魔法で私の家まで戻った。
「先シャワー浴びちゃおっか!」
「紫伊香先浴びていいよ」
琳寧の表情は暗く、無気力に見えた。
このままじゃまずいと私は思い、
「だめ、一緒に入る。あ、お風呂にも入っちゃお!」
一緒にお風呂に入ることを提案した。
琳寧は返事をしてくれなかった。
とりあえず先にお風呂にお湯を入れることにした。
当然人が誰もいないわけだから水もお湯も出るはずがない。
普通の人にとっては死活問題であったが、紫伊香にとっては関係ない。
「はあ、仕方ないか」
元素魔法を使い大気の水分を集め、それをお風呂の温度まで温めることは容易であった。
「ほら早く!」
無気力な琳寧の手を引っ張りお風呂場に連れて行き、服を脱がせてあげようとした。
「じ、自分でできるから」
これまで無反応であったが、やっと喋ってくれた。
服を脱ぎ、ボディタオルを持って中に入った。
「シャワーでないから私が水出してあげる! 常温だからぬるいかもだけど」
私はそう言った後軽く指を振り、琳寧にぬるま湯をかけた。
「次私が出してあげるから紫伊香洗っていいよ」
今度は交代して私が一通り体を洗った。
「ありがとう琳寧! じゃあ入ろっか!」
2人でお風呂に浸かった。
これから先の不安が強くあったとしても、お風呂の温かさはそれすらも忘れさせてくれるようであった。
「琳寧、少しは落ち着いた?」
「うん。ありがとう」
お風呂のリラックス効果は本当にすごい。
琳寧の顔色が良くなってきた。
「良かった!」
「けどこの状況は少し落ち着かないかも」
「この状況?」
「彼女と一緒にお風呂に入ってること」
そう言うことか、意識していなかったが付き合ってから最初のお風呂でお互い裸なわけだから落ち着けるはずがない。
琳寧に言われてから私も落ち着かなくなってきた。
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