第27話 2つの選択肢
「あんな風に3人で訓練していた時が一番平和で楽しかったな」
そんな独り言を口から漏らし、隣でまだ寝ている琳寧を見た。
すやすやと無垢に見える寝顔は可愛らしく、天使に見えた。
いつもは私より早起きだが、昨日色々あって疲れていたんだろう。
「起きろ〜!」
布団を剥がすと、パジャマがはだけて、下着やお腹が見えそうになった。
慌てて布団を戻すと、琳寧は目覚めた。
「ん〜紫伊香? 今日は早起きだね」
そう言うと布団をどかし起きてきた。
「琳寧! 胸元危ないから!」
さっき目を逸らしたのに意味がなくなっていた。
「彼女なんだから気にしないよ」
「いいから!」
私は外れたボタンを目を逸らしながら閉めた。
恋人といえど、マンネリ化はしたくない。
「いつも通りの朝のようだけど、今日も私達しかこの世界にいないのかな?」
琳寧は寝ぼけ眼でそう聞いてきた。
「朝起きたら何もなかった、みたいなね!」
そうなっていたらどれだけ楽かと思い私はスマホを開いた。
圏外になっていた。
「なんか圏外になっててニュースもSNSも見れない」
人が消えたことによる影響だろう。
私が琳寧にそう言うと琳寧は何かしているようであった。
数十秒ほど待った後琳寧は口を開いた。
「——東京にも人が全くいなかった」
「え、どうやって調べたの?」
魔法を使える同士であったが、そんな広範囲を調べられる術を私は知らなかった。
「円状に空間圧縮を使って、人型の体温が存在しないか確認したんだ」
理論的には不可能ではないだろうがそれを軽々と試す琳寧に驚いた。
「凄い色々と使いこなしてるね」
「前世での魔法の知識に今世で学んだことが合わさるとなんか色々浮かぶの」
「今世で?」
リカネアの方が遥かに発展していたため、今世での知識の何が役に立っているのか知りたくなった。
「うん。リカネアと違って地球には魔法がないでしょ?」
「無いね」
「魔法がないからこそ、この世界の住人たちは想像力を働かせてそれを言葉に、絵に、アニメーションにしてきた。そんな作品達を私は、青瀬琳寧としての17年間で大量に知識をインプットしてきたからね!」
なるほど。それは盲点であった。
魔法が当たり前にあるリカネアではその類の作品など面白みがないため目立つことはなかった。
だからこそ、魔法関連の作品などには奇天烈なアイデアが溢れており、それを魔法を扱える人間が読めば、実世界にも応用できるというわけだ。
「琳寧って本当に天才だよね」
「そ、そんなことないよ」
あからさまに照れていて可愛かった。
少しの間の後、琳寧は口を開いた。
先ほどとは違った真剣な表情に、息を呑んだ。
「——これからの私達には2つの選択肢があると思うんだ。1つはゲートを通り、リカネアに侵入する。もう1つは地球で待機して相手の動きを待つ」
私から言い出せなかったことを琳寧が先に言った。
目を逸らすことはできない現実であった。
「仮にリカネアに2人で入ったとしても戦力差が大きく勝てないだろうし、待機したとしてもその間地球の人達の安全は保証されないよね」
せっかく出してくれた案に文句をつけるようで気が引けるが、作戦は生半可にしたくなかった。
「ごもっともだよ紫伊香。だからこそ行き詰まってるんだよね」
当然琳寧も想定済みであった。
魔法を使えるといっても相手は同じような魔法使いや、記憶にないクリーチャー達だ。
行き詰まるのも無理もない。
「まずは情報収集じゃないかな?」
とりあえずの提案をしてみた。
「そうだね。私達の記憶と今のリカネアが同じとは限らないからね」
「一度リカネアに行って気づかれずに情報集めて帰ってくる、なんてことは無理だよね?」
「もし行くとしたら私が1人で行くよ」
琳寧が語気を強めてそう言った。
同じように私も言い返した。
「絶対ダメ! 自分1人で何でも解決しようとしないで。これからは2人で行動だよ!」
「そうだよね、分かった」
なぜか私の回答に安堵しているように見えた。
とりあえず同意してくれたから細かいことはいいか。
私は異空間の中で、魔法を使えない仲間と共に行動していて学んだことがある。
1人で動くよりも、仲間で動いた方が強いということだ。
琳寧だけじゃなく今は私も魔法を使える。
そして幼馴染なだけでなく、恋人にもなった。
そんな2人が力を合わせたら強いに決まっている。
私はそう思い込んだ。
「じゃあここで紫伊香の今の体を前のように戻すために訓練してからリカネアに進入してみよう」
「ありがとう」
今の私は琳寧と違い前ほどの力を出せていなかった。
「けどここで訓練しててバレないかな?」
「安心して、今地球にいるのは弱い敵だけだから直接攻撃仕掛けなきゃ大丈夫だよ」
私の不安に対し、自信ありげな顔で琳寧が答えた。
「そうなんだ! 良かった!」
「近くの広い公園で訓練しよ。認識阻害魔法かけて空間を切り離すから」
琳寧の魔法は頼もしかった。
「じゃあ行こっか!」
2人は準備を済ませ転移魔法により公園に飛んだ。
念の為阻害魔法で姿を消していたが、あたりに敵となるマナ人形はいなかった。
急いで琳寧は公園全体の空間を認識魔法を使い切り離した。
「そういえばさ、私、今上級魔法使えないんだよね……」
なかなか言い出せずにいたが戦ってから言い出すわけにもいかないため今伝えた。
「え、そうなの?」
「うん。終わった後詳しく話すから、今は上級魔法なしでお願い!」
「分かった。——じゃあ始めようか、エリー」
「出せる本気全て出すね、サイカ」
2人は静かな公園の中で、戦闘態勢に入った。
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