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前世の過ちを今世で活かす。そして君の存在を次元を超えて証明する。  作者: 茉莉レイ


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第22話 あの日の横顔を今でも鮮明に覚えている

 視界のぼやけが消えた。

 目の前には渋谷ではなく、自然に溢れた景色が広がっていた。


 スマホで調べると23区外のようだ。


「みんな大丈夫?」


 周りには仲間たちが眠っているようであった。

 私が全員を起こしに行った。


 私が受けた傷も、重症者達も傷が癒えていた。


「小雪! 千住君! 大丈夫?」


 小雪と千住君も無事目を覚ました。


「紫伊香〜!」


 小雪は私に飛びついてきた。


「何とか戻って来れたみたいだな」


「そうだね」


「そういえば穂乃果と康介は?」


 私は固唾を飲み込み、最後にあいつが言った言葉を思い出した。


 あいつは生きている奴だけ無事に戻すといった。

 

 ということは穂乃果は分からないが、康介はもう戻らない……


「どこか別の場所に出たのかもしれない」


 私は事実を伝えることができなかった。

 目の前で悲しむ姿を見てしまうとこの先耐えられなくなると感じていた。


「また必ず会えると思うから、みんな今日はゆっくり休もう。スマホはもう使えるみたいだから近くまで歩いて家に帰ろ」


 そう言うと2人は頷き、駅まで歩いた。



 帰りの電車は疲れからなのかは分からないが全員無言であった。

 


 家に着いた。

 帰り道の頭の中は常に真っ白であった。


「おかえり〜楽しかった?」


 母親の一言で理解した。

 あの空間での時間と地球の時間の流れは若干違っていた。


「うん!」

 

 私は、今出せる最大の力で笑顔を見せ部屋に戻った。



「康介、穂乃果……」


 私は急に悲しくなった。

 なぜ私がいながら守れなかったのか、なぜこんなにも無力なのか。


 考えれば考えるほど自分を追い詰めてしまった。

 

 そして琳寧に関する手がかりも得られなかった。


「時間を無駄にしただけなのかな」


 そう思ってしまったが、小雪と千住君を救えたことは無駄じゃなかったと自分に言い聞かせた。


「17時か、一時間だけ休も」


 肉体的疲れはなかったが、精神的疲労があったためスマホのアラームだけセットしてベッドに横になった。

 気絶するように紫伊香は眠りについた。



 

 夜空には様々な形をした美しい星達が輝いている。


 そんな日の夜にサイカは私を散歩に誘った。


 私にはあの日のサイカの言葉が忘れられない。

 魔法と出生についていつか話してくれると言ったが、既に半年も過ぎていた。

 サイカがフォールに入ってから1年であった。


 普段サイカは私を散歩になんて誘ったりしない。

 こんな素敵な夜空の下の散歩はロマンチックそのものであったが、彼女の口から出る言葉は愛の告白なんかではない、そんなことは理解していた。


 それ以上の思考を許さないかのようにサイカが来た。


「お待たせ、エリー」


「私も今来たよ」


「そうなんだ。じゃあ行こっか」


 手を繋ぐ関係性ではなかったが、手が軽く触れ合う距離感で歩いていたため私は変に意識してしまっていた。


「エリーって強くて優しいよね」


 想定していた話題と違うものが飛んできて、体に走っていた緊張のベクトルが変化した。


「——き、急だね! どうしたの突然!」


「だって私が最初冷たく接したのに、何度も話しかけてくれたでしょ? 私感情表現苦手なんだけどさ、すごく嬉しかったんだ」


「リーダーとして当然のことをしたまでだよ! サイカの容姿とのギャップがすごくて仲良くなりたいと思ったんだ!」


「馬鹿にしてるでしょ?」


 サイカは微笑みながらそう言って、2人は声を出して笑った。


「サイカが入ってから1年間、あっという間だったね」


「一瞬だったね」


 サイカは夜空を見上げていた。

 星々が反射させた光はサイカの横顔を照らして見せた。


 いつもに増して美しさを感じ、サイカの瞳に映る夜空の星達に見惚れてしまった。


「私の顔に何かついてる?」


「ううん! 何でもないよ!」


 急にこっちに顔を向けられ驚いた。

 見惚れていたことがバレないようになんとか誤魔化した。


 その後サイカ先に歩き出した。

 これまでは横並びであったが、サイカが横並びを嫌うようなペースで進んだ。


 先ほどまでの明るい雰囲気ではないことは既に理解していた。

 私は覚悟した。


「エリー」


「何?」


 私は手に汗を握り、サイカの言葉を待っていた。


「実は私、孤児だったの」


 突然の告白に驚いた。


「孤児?」


「うん。私が住んでいた場所は紛争がよく起きていて、そこで小さい頃にお父さんとお母さんは死んでしまった」


 急な情報に胸が痛み、かける言葉が浮かばなかった。


「今はもう平気だから、そんなに暗い顔しないで!」


 サイカは振り返って私に笑顔を見せた。

 その強さに勇気をもらった。


「それでその後、ある人が私を引き取ったの。名前はウィージンといって研究者だった」


 私は著名な研究者はある程度把握していたが、ウィージンなんて研究者は聞いたことがなかった。


「ウィージンなんて初めて聞いた」


「それもそうだろうね。この国は、富、権力、名声を基準としてしか評価されない。だから彼は無名だった」


 確かにリカネアでは権力による影響は大きかった。


「あの人は無名の研究者であったが、当時の彼には今の研究者達でもきっと歯が立たない。そしてこの人が私に魔法の真髄を教えてくれたの」


 サイカの言葉には嬉しさと悲しさの両方を感じられた。


「魔法の真髄?」


「うん」


「2段階の魔法しかなかったと思うんだけど、それを超える魔法が生まれたの」


 リカネアの魔法は元素魔法と、応用魔法のみが存在していた。

 つまりサイカによるとそれ以外が誕生したということだ。


 私は全ての音を無視して、サイカの言葉全部を聞き逃さないように準備した。


「私は3段階目の魔法の登場によって、それらを再分類した。下から初級魔法、中級魔法、上級魔法。つまり私が使用しているのは上級魔法なの」


 納得が行った。初めて戦った時の異次元的な強さはこれによるものだったのか。


「具体的にはどんなものなの?」


 私はとにかく知りたかった。


「色々あるから今は1つだけ。上級魔法は時間を思うように操作できるの。行こうと思えば過去にでも未来にでも行ける」


 衝撃的だった。そんなの非常識的すぎる。


「そんなやばい魔法使えるの?」


「うん。それだけあの人はすごかった。しかしこの魔法による代償も大きい。過去、未来を変えるということは空間が崩壊する恐れがあるの」


 私は情報を処理しきれずにいた。

 空間の崩壊が何を指すかも分からない。


「強い分それだけリスクがあるってこと?」


「うん。だから使い方を気をつけないといけないの」


 確かに強力な力にはそれなりの代償はつきものだよなと思った。


「今日それをエリーにも教えるね。きっとこれを教えたらエリーには勝てなくなっちゃうかも」

 

 サイカは目を細め、優しい笑みを浮かべていた。




 心臓に悪いスマホのアラームによって現実に連れ戻された。

 ちょうど18時になっていた。

 

「懐かしかったな。あそこから色んな意味で世界が変わったんだった」


 そう私は懐かしみ、晩ごはんを食べるためにリビングへ向かった。

読んでいただきありがとうございます!


ぜひ、面白い、先を読んでみたいと思っていただけましたら、リアクション、ブックマーク、コメント等していただけると励みになります!

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