第20話 友の失踪と、旧友との再会
天空のタイマーは3:00となっていた。
開始から半分経過していた。
体感としてはすでに丸1日経っているようであった。
森を抜け出し、次のステージにでも進んだかのように状況が変わった。
なぜか上級魔法のみ使用できなくなっていた。
そして私には4人の他に20人ほどの仲間ができた。
戦力が増える訳ではないが、見殺しにすることはできない。
残り3時間を過ごすために食料や水を確保するべく、街の中を探索することにした。
「とりあえず危険が迫る感じはしないので、安心して探してみてください!」
私はみんなに向かってそう言った。
街中にある次元の歪みを生み出している球体を除けば、異常なマナ反応はなかった。
街の中には、コンビニやスーパーなどが何個かあった。
「紫伊香。あそこのスーパーに行かない?」
小雪が提案してきた。表情は少し明るくなっており、足取りも軽くなっているように見えた。
たくさんの人が仲間に加わったことで、精神的に安心できてるのかなと考えた。
「うん! 見てみよっか!」
スーパーの明かりはついていなかったが、なぜか冷蔵設備は機能していて、食料も当然のように陳列されていた。
この空間にスーパーがある意味は分からず、なぜ綺麗に商品が陳列されていて、冷蔵設備が作動しているのかも違和感があった。
しかし、精神的疲労と、空腹感によって大半の人はそんな違和感を気にもしてない様子であった。
危険は感じなかったため、私は何も言わずみんなと共に品を選んだ。
「紫伊香は何食べるの?」
小雪は私の隣に立ち、そう聞いてきた。
「この鮭のおにぎりと、緑茶にしようかな?」
私の体はマナ防護により、そこまで食べる必要がなかった。
と言うよりも、戦場において満腹になるべきではないと聞いたことがある。
瞬時に判断する事と、俊敏に動く必要があるため、おにぎり1つで十分であった。
「そうなんだ! 私もそうしようかな」
「私はお腹減ってないからだからね! 小雪は好きなの食べなよ〜!」
そう言うと小雪は笑みを見せ、別のコーナーに向かっていった。
千住君は唐揚げ弁当とチキン南蛮弁当を手に持っており、康介はカツ丼とハンバーグ弁当を持っていた。
「男の子は沢山食べるよね!」
私はそう独り言を言い、2人に感心していた。
そういえば穂乃果が見当たらない。
お弁当コーナーにもお惣菜コーナーにもいなかった。
「みんな穂乃果どこに行ったか知らない?」
「穂乃果なら、トイレ行くって言ってたけどまだ出てきてないか?」
千住君が答えてくれた。
「そっか! ありがとう!」
お礼を言い、私はトイレの方に向かった。
入り口から入って右手にあった。
「穂乃果〜大丈夫?」
返答はなかった。
トイレのドアを見ると全て鍵は空いていた。
そこに穂乃果はいなかった。
もしかしたら行き違いになったかもと思い、3人のところに戻った。
「穂乃果戻った?」
「来てないけど、トイレにいなかったか?」
千住君の返答に焦った。
穂乃果はこのスーパーの中にいないのかもしれない。
あの子が勝手に1人で行動するはずがない。
それはみんなが知っている事であった。
「風山さん! 穂乃果の今いる位置、分かったりしない?」
私以上に千住君が焦っているようであった。
彼女とこんな未知の空間ではぐれてしまった訳だ。無理もない。
穂乃果が持つ武器のマナを感知しようとしたが、見つからなかった。
そんな中、天空のタイマーは2:30を迎えようとしていた。
警戒していたが、今回も何も起こらなかった。
「私が探しておくから、みんなはご飯をまず食べて!」
これで消耗し切ったら本末転倒であるため、私はそう提案し、千住君も同意してくれた。
とても賢く冷静だなと思った。
私は1人で外に出た。
変わった様子は見当たらない。しかし何だか胸騒ぎがした。
穂乃果は一体どこに行ったのか、辺りを見回っても何も手掛かりがなく、胸騒ぎの原因も分からなかった。
ご飯を食べ終え、全員が中央にあった役所のようなものの前で再び集まった。
あれから私を含め4人で探したが、穂乃果は見つからなかった。
「俺はこのまま穂乃果を探すから、気にしないでくれ」
千住君は覚悟を決めたような顔をしていた。
私は単独で行動させたくなかったが、かける言葉が見当たらない。
「一旦冷静になれよ」
康介が口を開いた。
私が言えなかったことを康介が言ってくれた。
「彼女がいなくなって冷静になれると思うか?」
「亜紀が行って何ができる? 今までも風山のおかげで生きてこれたんだろ」
今にも喧嘩が起きそうな雰囲気であった。
周りにいた新しい仲間達と小雪は不安そうに見ていた。
まずい。この状況で敵が来たら一気に崩壊する。
そう思い、間に割って入った。
「私も、みんなも穂乃果を探すのを諦めた訳ではないよ。別々に行動して千住君が死んでしまって、その後に穂乃果が出てきたりしたら、私は辛いよ。今は私のことを信じて。穂乃果は絶対戻ってくると信じてるから」
そう言うと千住君は目に涙を浮かべ謝ってきた。
「ごめん……冷静さに欠けていた。穂乃果は必ず戻ってくる。それを俺が信じないとだよな」
冷静さを取り戻してくれてよかった。
康介にも感謝をしている。
あそこで引き止めようとしなければ行ってしまっていたかもしれない。
何も起きず天空のタイマーは0:30となっていた。
街を抜け、広い公園のような場所に辿り着いていた。
2時間何も起きず全員の緊張感が抜けていっているのを感じていた。
康介は穂乃果がまだ見つからず口には出さないが苛立っているようである。
このまま時間が過ぎればクリアだ。そう考えていると、マナ感知など必要としないほどの膨大なエネルギーを感じた。
当然魔法を使えない地球の住民達も感じていた。
元々暗く不気味さがある空であったが、さらに闇を纏うように濃度が上がり、目の前に雷が落ち青色の炎が広がった。
そこには人のようなものが立っていた。
私1人だけがひどく苦しみ、脳が揺れる感覚と、吐き気がした。
——そこに立っていたのは旧友のローラであった——
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