第17話 魔法はやり直すためじゃなく、突き進むために使いたい
それぞれが手を動かし作業を進めていた。
養生テープを貼る必要がある場所は意外に多かった。
普段ガラス張りになっているところが割れていたため、入り口以外も塞ぐ必要があった。
10分しか残されていなかったため、5人は汗を流しながら手分けして要塞化を進めた。
「風山さん、こんな感じで大丈夫かな?」
全員一通り作業を終えると千住君が聞いてきた。
「うん! バッチリ! みんなありがとう!」
廃コンビニの入口となる場所全てに養生テープのバリケードが設置された。
ちょうど残り2分ほどであった。
「みんな私の作戦を聞いてほしい」
余裕がなかったため、敵についての情報や、養生テープで要塞化する理由など、何も話せていなかった。
だから残り2分で話せるだけ話すことにした。
「まず最初の敵はスタートしてから30分経った5:30付近で現れた。今回の敵はそこから1時間後の4:30付近で現れる。そして今回の敵は複数いて、もしかしたら種類も違うかもしれない。特徴としては姿が見えないんだ」
全員が深刻そうな顔をしている。
無理もない。姿が見えない敵など恐怖でしかない。
「安心して。姿が見えない敵に勝つためにこの要塞を作ったんだから!」
4人の絶望に満ちた目が光を取り戻したように見えた。
「姿は見えないけど、物理的感触はあると思う。だからここに入るにはバリケードを突破する必要がある。そこで私は糊がついている面に着色した粘性のある液体をくっつけた。だから入ってきた時に姿が見えるはず!」
私は自信に満ちた声で言った。
「どこからその液体持ってきたの?」
穂乃果が不思議そうに聞いてきた。
「コンビニにあったものと、元素魔法を複合してね! それこそ科学と魔法の力だよ!」
私の言葉に全員が驚いた後、笑いが起きた。
これから戦うと言うのに緊張感なくしてしまったかなと後悔したが、怯えた顔をより笑顔でいた方が何倍も強くなれると信じ込んだ。
時間だ。
私はマナ感知に集中した。
きっと予想通りならくるはず。
いっそのこと予想が外れて来ない方がいいと思っていた。
しかしそんなことを無視するように、大量のマナが引っかかった。
「みんな準備して! 近づいてきてる!」
準備といっても、4人ができることは限られていた。
私が与えたマナで強化された武器も反応できなければ意味をなさない。
私はそれを考慮して動く必要がある。
マナを感知してから数十秒ですでにコンビニを囲っていた。
コンビニの存在に戸惑っているのか中々動かない。
そう思っていると分散していたマナが正面の方に集まった。
そして次の瞬間バリケードに向かって突っ込んできた。
マナを注ぎ込んだため強固な防壁となっており、何度も何度も破壊を試みていた。
そしてついにバリケードが突破された。
私の予想は的中だ。
敵の姿が明らかになった。
しかし1つだけ予想外のことが発生した。
敵が1人しか見えない。
そしてマナ反応も1つしかなかった。そしてとても濃い。
そう思っていると、突然目の前の化け物が分裂した。
複数種類ではなく、1つが複数になっていたのであった。
焼ける音、溶ける音、雨音や破裂音など。
様々な音と共に分裂していった。
どこまで分裂するか分からなかったが10体ほどで止まった。
元々の大きさと変わらず成人男性の平均値程度の体格だ。
幸いなことに分裂後も姿は顕になったままであった。
マナが分裂していたのはこれが理由かと納得した。
私と違い4人は怖気付いていた。
私はこれ以上時間操作をやり直しのためには使いたくないと思い。
コンビニ全体の空間に時間操作を使った。
全てが止まった。
「みんな聞いて、これを解いた瞬間に私が金属元素を使用して動きを止めるから渡した武器で右肩を狙って! そこにコアがある」
「この状態で風山さんが動いて倒すとかは無理なのか?」
千住君が当然の疑問をぶつけてきた。
「後で話すから! みんな右肩に突き刺して!」
時間が動き出した。
私は一瞬で金属元素を操作し、ワイヤーを作り拘束した。
不安であったが4人全員がそれぞれ1体始末することができた。
康介は片足で飛びかかったため、その後転んでしまった。
私は残りの6体を空間魔法を使い、両手で3体ずつ始末した。
指と化け物のコアの物理的距離を圧縮して突き刺し、内側に小さな爆弾を仕込み始末した。
作戦のおかげで犠牲を生まず突破したのであった。
「——終わった?」
小雪が確かめるように聞いてきた。
悪意のあるマナは感知されなかった。
「全部倒したよ! みんなよく頑張った!」
私の一言に全員が安心し、喜んでいた。
私は先ほどの質問に答えるため、千住君の方を向いた。
「さっき聞いてくれたことなんだけど、時間操作魔法を使用して自由に動き回るには、膨大なマナが必要なんだ」
「色々と難しいんだな」
納得してくれた様子であった。
過去に戻るのと、現実世界の時間を止めて肉体を動かすとではマナの使い方があまりにも違っていた。
前世の私なら上級魔法を様々な使い方ができただろう。
しかし今の私は限界が簡単に見えてしまう。
そんな中でも様々な魔法を使えているのは、この異質な空間のおかげなのかもしれない。
天空のタイマーは4:20を示していた。
1時間1時間がとても長く感じた。
まだ時間があるが、4人の限界も近いと感じていた。
「休めそうな場所探そっか」
私の一言に全員が頷き、必ず来るであろう次の戦いまでの休息を取れる場所を探しに向かった。
完結まで書き切るので、ぜひ面白い、先を読んでみたいと思っていただけましたら、リアクション、ブックマーク、コメント等をしていただけると励みになります!
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