第16話 コンビニと見えない敵
他の4人は知らないだろうがみんな一度死んでしまっている。
つまりこのサバイバルゲームのようなものは、魔法がなければ残酷なものであった。
この空間での魔法の使用が体に及ぼす影響がまだ分からない。
ただ、地球で使った時との違いは感じていた。
さっきの化け物には見た目で油断してしまっていた。
女の子だろうが、子供だろうが注意して挑まなければいけない。
そんなことを考え歩いていると、私達5人は目を疑うものに出会った。
「ずっと、木とか岩とかしか見てなかったのに、なんでいきなりこんなものが出てきた?」
「身を隠すのには使えそうだけど、なんか怪しいね」
千住君と穂乃果がそう思うのも無理もない。
目の前に出てきたのは、廃墟と化したコンビニエンスストアであった。
ここが地球とは違う空間なのは5人の共通認識であったため、なぜここにコンビニがあるのかという疑問が浮かぶのは至極当然であった。
「なんかヤバそうじゃない?」
小雪は近づきたくもなさそうであった。
確かに最初に風景の変化が起こった時も、小雪は近づくのを嫌がっていた。
「小雪の言う通り、避けた方がいいかもね」
私の一言に全員が同意し、廃コンビニを諦めた。
再び5人は身を隠せる場所を探しに向かった。
天空のタイマーは残り4:30となっていた。
あれから30分経っていた。
意外とすんなり終わるかも。
これは安直で、愚かな気の緩みであった。
私の弱みにつけ込むように一瞬で周囲のマナ濃度が濃くなった。
「みんな! 何か来る——」
そう叫んだが、間に合わなかった。
小雪と康介は無惨にやられてしまった。
小雪は青色に輝く炎で消滅してしまい、康介は紙のように薄く潰され、足元の草が赤く染まった。
「くそっくそっくそ!」
私は自分の無力さに腹を立てながら、時間を5分ほど戻した。
しかし今回は少女の化け物の時と訳が違う。
不可解な点が多すぎる。
まず敵の姿を見ておらず、数も分からない。
そして小雪と康介の最後はそれぞれ違っていた。
つまり、同じ種類の敵ではなく、複数種類いることも考えられる。
そして最も危惧していることは私がここで倒れてしまうことだ。
死んだ後に時間を戻すことができるのか分からなかった。
肉体操作魔法は構造が難しく今の状態の私では、扱えない。
エリーの記憶が流れ込んできたが、今の私はどこか制限を受けているように感じていた。
そのため私はここで終わるわけにはいかない。
この4人のためにも、琳寧のためにも。
「みんな聞いてほしい」
具体的な死に方は伝えず、事実をそのまま伝えた。
小雪と康介は震えて今にも泣き出しそうであったが、堪えていた。
千住君と穂乃果は冷静に聞いていた。
「とりあえず私がマナ感知を行うからそばを離れないで」
4人は静かに頷いた。
さっきとは別の方向へ向かった。
たまたま何かの縄張りに入ってしまったということを願った。
そんな期待を裏切るように敵のマナを感知した。
「来るよ! 私の目の前にいて!」
私の視界内にいれば対処できると思いそう指示を出した。
「本当になんかいるの? 私何も感じない」
穂乃果がそう聞いてきたが、答えている余裕はなかった。
マナの動きでしか認知できなかったが、敵はものすごいスピードで動いていた。
しかし実態がいつになっても現れない。
「もしかして!」
ある程度の予測をつけることはできたが、その前に私の視界から4人が消えた。
4人に付与した私のマナも感知できなくなっていた。
「なんなのこれ……クソツ」
怒りの言葉を吐き捨て、仕方なく時間を戻した。
今度はコンビニに辿り着いた時まで戻した。
千住君と穂乃果そして小雪の同じセリフを聞いたことを確認し、私は口を開いた。
「いろいろな不安があると思うけど、行ってみよう」
まずは前提を変えようと思いそう提案すると、案外すんなり受け入れられた。
「もしかして時間を戻した?」
穂乃果がそう聞いてきた。
「え? なんで?」
「だって紫伊香すごい追い詰められた顔しているよ」
そう言われて、電波がなく使い物にならなくなったスマホを取り出し、反射する自分の顔を見た。
なんて無様なんだと思った。
目は血走っていて、怒りに満ちた表情をしていた。
「あ、あはは、私すごい顔してたね、ごめん!」
「私達には力がないかもしれないけど、頼れることは頼ってほしい」
「ありがとう穂乃果!」
穂乃果は悲しい顔をしていた。
私は悔しかった。
4人はごく普通の人間で、魔法などは使えない。
どんなリスクを抱えてでも私が守らなければならない。
しかし方法が見つからず、永遠にこのゲームが続くもののように感じられてしまった。
そんな風に考えながらコンビニの中を見ていると、散乱していたが食べ物以外は袋に入り残っていた。
その中の1つに現状を解決する手助けになりそうなものがあった。
養生テープである。
「みんな聞いて! このテープでこのコンビニに入ることができるところ全部塞いで!」
「これが今必要ってことだよな?」
「うん!」
「分かった。みんな急いでやろう! 康介は下の方を頼む」
「任せろ」
千住君はリーダーのようであった。とても頼りになる。
その一言でみんなが考えるよりも先に動き出した。
残り10分で天空のタイマーは4:30を迎える。
過去2回と同じならここに現れるだろう。
「この廃コンビニを、勝利するための要塞にしてやる」
そう1人で呟き、要塞化を進めた。




