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前世の過ちを今世で活かす。そして君の存在を次元を超えて証明する。  作者: 茉莉レイ


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第15話 辛い時最初に浮かぶのは幼馴染の名前

「みんな本当にごめん。全て話すよ」


 4人はきっと様々な感情を持っているだろう。

 それが怒りなのか恐怖なのかは分からない。


 天空のタイマーのカウントダウンの下で、4人はただ私が話し始めるのを待っているだけであった。


「私が風山紫伊香なのは嘘じゃない。けど、前世の記憶があるんだ」


「前世?」


 穂乃果が疑問に満ちた顔で口に出した。


「うん。私の前世はリカネアという高次元の星の住民だった。そこには高度な科学技術と魔法が浸透していたの」


 4人が話についてきているか不安だったが、軽く相槌を打ってくれた。


「そして地球に豊富な資源があることが分かって、その星の住民達が次元を超える技術を用いて地球に侵攻しようとしている。その序章がこの前の異常事態なの」


 次元開通の開発者などの情報はあえて伏せた。

 琳寧のせいにはされたくなかった。


「ということは、さっきの化け物はリカネア? の住民で、俺たちを襲ってきたのか?」


 千住君の理解の速さには驚かされた。


「待って、じゃあ紫伊香の前世もあんな化け物みたいだったの?」


 穂乃果の質問は尤もであった。

 リカネアには化け物が住んでいると思うのも無理がない。


「私は前世でも今と同じような人間だよ。私の記憶にはあんなクリーチャーみたいなやつはいない。これに嘘はないよ」


「もしかして風山さんも魔法を使えるのか?」


 千住君の問いかけにドキッとしたが、もう隠すことはできなそうだ。


「うん。使える。ただ地球だとマナを回復できなくて寿命を減らしたり、何らかのリスクがあるの」


「どうして! なんで魔法使えるならもっと早く私達を、康介を助けてくれなかったの!」


 泣きじゃくっていた小雪が貯めていたストレスを全てぶつけるように吐き出した。


 私は同意してしまう。

 大切な人が消えぬ傷を負ってしまうのを防げたんじゃないかと。

 

「私だって見捨てたわけではないの」


「じゃあ何で……どうして……」


 小雪は虚無になっていた。

 

「私は前世の記憶が流れてきたけど、まだ上手く体が順応していないの。そして時間操作魔法をあの化け物に相殺されて戻せなかった」


 小雪は何も言わず俯いていた。


「記憶がさらに戻ったら、康介を治せるかもしれない」


 確証はなかったが小雪を元気付けるためにそう言った。


「本当に! 絶対治してね!」

 

 一気に元気になった。


「一方的に責めちゃってごめんね」


「いいの、気持ちはわかるからさ」


 小雪は生気を取り戻し、頬の血色が良くなった。


「大体は把握した。とりあえず作戦を立てよう」


 亜紀の一言に全員が同意し、作戦を立て始めた。

 

 現在残り時間5分である。



 作戦会議終了と同時にタイマーが0になった。

 

 それを知らせるように森中に、童歌と不協和音を合わせたようなチャイムが鳴り響いた。


 天空のタイマーは6:00と表示された。

 6時間のサバイバルゲームが始まったのだ。


 5分間の作戦会議で話し合った内容は単純だ。


 私の魔法で4人を保護し、ある程度の防御力を与える。

 

 そしてそこら中に落ちている木にマナを注ぎ込み、魔力を持った武器として各自に渡す。


 ただそれだけでは反射神経面を強化できなかった。


 そのため私の時間操作魔法を元に戦うため、私が中心でそれを4人が囲む陣形をとりカバーした。


 この作戦には穂乃果だけが異議を唱えていた。


 私の魔法を使うリスクについての心配であった。

 

 とても嬉しく思うが、今はそんなこと考えていられないほどの状況であった。


 

 そんな作戦を立てたが、一向に敵のようなものは現れない。

 現れないならそれでいいが……


 もうすでに30分経っていた。


 何も怒らず気が緩み始めてきたタイミングで嫌な音が聞こえた。

 あの音だ。


 琳寧と私が迷い込んだ時聞いたあの音。

 

――キィィ、ギギャアギィィン――


 未だにこの音が何か分からず、不気味であった。


「うるさい何この音!」


「マジで耳が壊れそうだ」


 穂乃果と千住君がよろめき、その勢いで肩を支えてもらっていた康介は転んだ。

 

 小雪は地べたに座り込み耳を押さえていた。


 私も恐怖でいっぱいであった。

 一種の記憶に根付いたトラウマだ。


 走って逃げることはできない状況で、近くに身を隠すところもなかった。

 

 ここで対峙することになるだろう。

 そう覚悟した。


 それとほぼ同時に声の正体が現れた。

 

 私はてっきり赤子の化け物のような見た目をしていると思っていた。


 目の前に現れたのは1人の少女であった。

 身長は130cmほどで、顔立ちや体格は10歳前後のように見えた。


 綺麗な顔であったが、右目に赤と青色の紋章のようなものがある。

 

 そこからものすごいマナ濃度を感じ、私は警戒を強めた。


 それを無視するように小雪が前に出た。


「あなたも迷子で迷い込んじゃったの?」


 私は小雪の肩を掴み、急いで止めようとした。


「何してんの! 早く後ろに下がって!」


 振り向いた小雪の目からは血が流れていて、恐ろしいほどに口角が上がり笑っていた。

 

 それに続くように、穂乃果、千住君もフラつきながら前へ歩いて行った。

 康介は這いつくばりながら同じように進んだ。


 全員あの少女に向かっていた。


 少女を見ると、 目の下にあった紋章が発光し熱を帯びているようであった。


 この現象は間違いなくそれによるものだと確信した。


 土の元素魔法で地面から槍を形成し、攻撃しようとした瞬間だった。


 包装テープを剥がすような音の後、噴水のような音と鈍い音が聞こえた。

 

 全てが終わってしまった。一瞬だった。

 4人の首と体が別々に分かれ、あたりを赤く染めた。


 理解できない現象であった。

 その少女の化け物は耳に障る声で笑っていた。


 私はそいつを消し去りたい気持ちを抑え、取り返しがつかなくなる前に時間を操作した。


 今回はカッコつけて声に出してはいられなかったため、無詠唱で使用し2分前に戻した。


 

——キィィ、ギギャアギィィン——


 対峙する前に戻った。

 私は急いで簡潔に指示を出した。


「今からすぐに化け物が現れる、耳を塞いで目を閉じていて!」


 私は数秒前に4人の悲惨な姿を見たばかりだったため、怒鳴るように言ってしまった。


 ただそのおかげで、全員が従ってくれた。


 攻撃を仕掛けられたのが視覚か聴覚かは分からなかったため、そう指示を出した。


 そして流れは変わらず少女の化け物が現れた。


 たださっきと違い私としか目を合わせられなかったためなのか、少女の顔には笑みではなく怒りを感じた。


 私には幸い、正体不明の攻撃が効かなかった。


 飛びかかってこようとしたが、魔法を使えるものにとっては余裕で対処できる速度である。


 4人が悲しみを感じる前に火属性の中級魔法ヘルファイヤを使用し跡形もなく焼き切った。


——イヤアアアアアアアアアア——


 断末魔は少女の鳴き声のように聞こえ、胸糞悪いものであった。


「なんか聞こえたと思ったらよく分からず、目の前が燃えてるんだがどういうことだ?」


 千住君が不思議そうな顔で聞いてきた。


「実はちょっと前、みんな大変なことになっちゃって時間を戻したんだ! けどもうその原因も片付けたから大丈夫!」


 本人達に無理に起きたこと全て言う必要はないと思い、明るく振る舞い、ぼかしながら答えた。


 全員理解は追いついていなかったが、安心した様子であった。


 少女の姿を見られてから始末してしまうと、紋章の影響だけでなく罪悪感を感じてしまう恐れがあっただろう。

 現に私は罪悪感に苛まれている。胸糞悪い見た目をしているのが悪い。

 そんな風に結論づけた。


 炎から離れるように、身を隠せそうな場所を探しに向かった。

 洞窟からつけてきた印を探したが見当たらなかったため、新たに見つけるしかなかった。

 

 

 20分ほど歩いた。

 康介を支えながらであったため、あまり進めてはいない。

 

 歩きながら、私の頭の中には1つの疑問があった。

 上級魔法の時間操作で2分ほど戻したにも関わらず、何も影響がなかった。

 

 ここに入る前試した時は、強烈な腹痛に襲われた。

 あの時は植物の成長を3ヶ月ほど進ませていた。

 

 2分ほどではどうってことないのかなとか、ここが異空間だからかなとか考えてみたが、答えは出なかった。

 

 現在天空のタイマーは5:00ちょうどであった。

 まだ1時間しか経っていなかった。

 

 私はあんな状況が後どれほど起こるのか、不安と恐怖で精神的に疲れてきた。

 

「琳寧に癒されたいな」


 ただ小さく、ボソッと口から零した。

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