第14話 絶望へのカウントダウン
自然の香りと低い天井を目の前に、夢から目覚めた。
また、前世での夢だ。
前世への未練のせいかなと私は思った。
「おはよう紫伊香」
穂乃果の声でぼんやりとしていた頭が冷めた。
穂乃果だけだなく、すでに4人は起きていた。
私はだらしないと思われてないかとか、恥ずかしい寝顔してなかったかとか色々不安だった。
そんな考えを無視するように小雪が話しかけてきた。
「おはよ! 昨日は紫伊香が色々頑張ってくれてたから、今日は4人で朝ごはん用意したよ!」
それに同意するように、他の3人も笑顔で頷いており、私の心は温かくなった。
近くに果物の木があったそうだ。
パイナップル程の大きさで、外側はツルツルとしていて、中は透き通った梨のような実であった。
「すごい美味しそうだね! みんなありがとう!」
食べようとすると少し違和感を感じ、感覚を集中させるとこの果実にはマナが含まれていた。
害などは感じないが食べていいものなのか分からなかった。
ただそれを4人にうまく伝えられないだろうし、せっかくの気持ちを無下にする事は出来ない。
いざとなれば上級魔法で時間操作すればいいかと思った。
一口食べてみた。
今まで食べてきた果物の中で最も美味しく感じた。
梨やりんごのようなみずみずしさやジューシーさがありながらも、マンゴーや桃のような濃厚さもあり、とても面白い感覚になった。
「みんなこれすごく美味しいよ! 今までで一番!」
「本当? そう言ってもらえて嬉しいよ」
穂乃果が嬉しそうな顔でそう言った。
4人も食べ進めて行ったが、異常が発生したりはしなかった。
私はなぜこの果物にマナが含まれていたのか分からなかった。
琳寧が残した痕跡なのか、それとも魔法が存在する空間なのか……
考えても分からないなら行動するしかない。
そう考えた私は4人に聞いた。
「ねえみんな、今日はどう進む?」
「とりあえず出口を見つけるのが最終的なゴールだから、何か手掛かりを探しながら歩くしか浮かばないな」
千住君は少しお手上げのように感じながらも、諦めてはいなかった。
小雪と康介はそれに頷くだけであった。
「じゃあ、一応ここに戻れるように目印とか残しながら探索していこうか」
穂乃果の言葉に全員同意し、洞窟を発った。
5人は危険が迫らないか注意しながら森の中を歩いた。
しばらく歩いていた。
だが景色は相変わらず同じで、どこをみても自然物しかなかった。
会話もなく、歩く事に体力を全て使っている中、先頭を歩く千住君が口を開いた。
「なあ、あれなんだ?」
私は刺されている指の方を見るとなんだか色が暗い景色が見えた。
この距離じゃ何か分からなかった。
「なんか怖いよ……戻らない?」
「やっと起こった景色の変化だ、行ってみよう?」
「危なかったらすぐ戻るから……」
怖がる小雪を康介は励ましていた。
康介の言うことには同意せざるを得なかった。
何も収穫がなくただひたすら同じ景色を見ながら歩いていたため、何か変化があることは新たな発見に繋がる可能性があったため無視できなかった。
「みんな行くでいいよね?」
そう穂乃果が言った。
小雪は嫌そうだったが、他のみんなは覚悟を決めた顔をしていた。
「じゃあ行くか」
千住君の一言を合図に全員が歩き出した。
はっきりと見える距離まで来た。
遠くで見た黒みがかった茶色のような景色の実態は、自然物が枯れたり、腐ったり、溶けたりしていた事によるものであった。
「なんか気味が悪いな」
「こんな人工的境界線で、こんな風になるなんて自然に起きることとは考えられない」
「これは人間かそれとも昨日見たような謎の生物がやったのかもな」
千住君と穂乃果は現状を考察していた。
ただ私の頭はそんなことを考える余地がなかった。
この空間からものすごい圧力のかかるマナ濃度を感じた。
早く、この場から離れなければ……
そう思い、戻ろうと後ろを見たが、全ての植物が朽ちていた。
それとほぼ同時に強烈な殺気を感じた。
私以外の4人はその場に立っていられなかった。
「こうすけ……足に力が入らない……」
「なんだよ、これ……」
小雪は康介にしがみつき、康介は取り乱していた。
千住君と穂乃果はパニックになるのを抑え現状を理解しようと努めているように見えた。
私は殺気の正体を見つけようとしたが動きが速く、目で追えない。
目で追うのを諦めマナを追った。
やっと対象が1人であることが分かった。
その瞬間そいつが背後に止まった。
急いで振り返ると、そこにはほぼ人間と同じような構造を持った謎の存在がいた。
違うことと言えば、顔には目がなく、体のところどころが空洞――いや、透明であった。
「お前は何者だ」
私は単刀直入に聞いた。
「ヒ、ヒヒ——ヒャッッヒャッッハハハ」
不気味な声でしばらく笑っていた。
「お嬢ちゃん面白いこと聞くんだな? びびってねぇみてぇだし、というかお前から感じるその強烈なマナはなんだ?」
私はマナという単語を出され焦った。
周りに友達がいたからと言うのもあるが、この謎の存在がリカネアの者だと分かったからである。
「私はただの女子高生だ」
「正体明かす気はねえんだな——まあいい。というかなんで、地球とかいう劣等次元の星の住民が俺のペット達の部屋にいるわけだ?」
その一言で確信した。
こいつはリカネアの時空を操れる高位の存在で、昨日見た化け物はこいつのペットだったと言うわけだ。
まずい。こいつとここで戦うには失うものが多すぎる。
そんな紫伊香の考えを無視するように謎の存在は言い放った。
「簡単に見逃してやるほど、俺は単純じゃねえわけだ。となると1戦そこに転がってる、カスども含めて勝負しようぜ」
一方的に話を進めてきた。
「ふざけるな! なんでそんなことしなきゃいけねえんだよ! てか早くここから出せ化け物!」
康介は気が動転して、喧嘩を売ったのであった。
私が康介を落ち着かせる前に謎の存在が何かをした——
「——いってええええ。どうなってんだよこれ、おい誰かなんとかしてくれよ……」
恐ろしい光景が目の前にあった。
先ほど見た自然物の最後のように、康介の片足が同じような最後を迎えていた。
「こうすけえええ! ねえ何これ、ねえ——」
小雪が発狂するのを妨げるように謎の存在が口を開いた。
「まだ現状理解できねえのか?」
非科学的で絶対的な力に4人は恐怖で青ざめていた。
私は急いで時間操作魔法を使い、こいつに出会う前まで戻そうとした。
「おもしれえな、お前上位魔法使えんのか?」
打ち消された。魔法を相殺されたのだ。
「そんなことはさせねえぞ?」
康介の負傷は防ぐことができないとわかった。
今の私とこいつではレベルが違う。
「それで勝負って何?」
諦めて話を進めた。
紫伊香の言葉を待っていたかのように、謎の存在がニヤリと笑い口を開いた。
「これから1時間やるから好きなところに行けよ。そして俺のペット達に殺されず、6時間逃げ切れれば全部なかった事にしてやるよ」
「全部って?」
私の問いかけを無視するように
「今からスタートだ」
と述べて、空にタイマーのようなものが表示された。
そして謎の存在は私の認識できない速さでどこかへ消えた。
その場の圧迫感は一気に消えた。
私はすぐに康介の元へ向かった。
「康介! しっかりして! ゆっくり深呼吸して」
「迷惑かけて悪いな風山……」
康介の声は弱々しかった。
仕組みは不明だが血はいっさい出ていなかった。
「とりあえず今はここから離れよう」
千住君はそういうと康介のバランスが保てなくなった側を支え、ゆっくりと歩いた。
「うぅ……なんで——」
小雪はずっと泣いていた。
現状は最悪であった。
しばらく歩き、荒地を抜け出した。
天空のタイマーは0:20と表示されていた。
これが0になった時ゲームが開始されてしまう。
「いったんここら辺で休憩しよう」
千住君の言葉に全員が同意し、地べたに座った。
「こんな状況になったんだ。紫伊香。そろそろ全部話して?」
穂乃果が真剣な顔をして私を見つめた。
それは当然のことであった。
さっきの状況で私だけが立っていられたのだから。
「隠すわけにもいかない状況だね。仕方ない。全部話すよ」
私は全てを話す事にした。
完結まで書き切るので、ぜひ面白い、先を読んでみたいと思っていただけましたら、リアクション、ブックマーク、コメント等をしていただけると励みになります!
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