第12話 火を囲って食べるご飯は格別だ
洞窟に戻ると小雪と康介は寄りかかって眠っていた。
「あれだけいろんなことあって歩き回ったし疲れるよね」
私はマナの異変などを感じなかったため、2人がただ疲れて寝ていると分かった。
「ご飯できるまで、そってしておいてやるか」
「そうね」
亜紀と穂乃果も微笑みながらそう言った。
食料は鮎のみであったが、1匹1匹の大きさは十分にあった。
「火の起こし方ってわかるか?」
「私、分かるよ」
私が魔法を思い浮かべる前に、千住君の問いかけに穂乃果が答えた。
「穂乃果ってキャンプとかしたことあるのか?」
「小さい頃だけどね。じゃあ、枯れ草とか竹とか、乾燥した木を集めに行こ」
亜紀と穂乃果のやりとりが終わり、3人は洞窟を出た。
周りは森であったため、火を起こすための資源は容易に集まった。
鮎に打ち串するための竹は見つからなかったため、平べったい石を何枚か集めた。
大量の成果を洞窟に持ち込み火起こしを始めた。
穂乃果が率先して記憶を頼りに行った。
「まずこの乾燥した木と木を擦り合わせて、摩擦で熱を起こすと火がつくはず……」
そうは言ったが中々火が付かない。
私には火起こしの知識がなかったため合っているかは分からない。
仕方なく2人にバレないように小さな熱源を、木と木の間に生み出した。
「やった! 火がついた!」
穂乃果は嬉しそうに2人を見た。
魔法を発動するのに大きな動作は必要なく、体内のマナ回路から指にマナを送り、軽く指を動かしてイメージさえあれば火は付けられた。
「ありがとう穂乃果!」
千住君はそう言うと、平べったい石に鮎を乗せ焼き始めた。
焦げないようにある程度火から離し焼き始めた。
——ところが私は肝心なことに気がついた。
「そういえば味付けする塩とかないよね?」
千住君と穂乃果は忘れていた事を思い出すように口を開き、首を横に振った。
そんなやりとりをしていると寝ていた2人が起きてきた。
「私コンソメ味のスナック菓子なら持ってるよ〜!」
「おはよう小雪! 本当に! それは使えるかも!」
私は小雪からスナック菓子を受け取り袋の中で細かく砕いた。
千住君と穂乃果は隣同士で座り、静かな森の中で、パチパチと弾ける熱源を見つめ、鮎が焦げないように大切そうに見守っていた。
しばらく時間が経って、千住君と穂乃果が立ち上がりこっちに向かってきた。
「みんな! やっと食べられるぞ!」
千住君の声と、胃袋が歩き出し始めるような美味しい香りに釣られ、焚き火に向かった。
「3人ともありがとう!」
小雪と康介は笑顔でそういうと、私と2人は嬉しく感じていた。
「このスナック菓子を砕いて調味料代わりにしたからかけて食べて!」
私はそういうとまずは自分の鮎にかけ食べてみた。
「コンソメの香りとほのかな塩気が直火の香ばしさと合わさって美味しいよ!」
本当に美味しかった。
キャンプはしたことがなかったため、何だか新鮮な気持ちになり満足感があった。
「確かに美味しい! コンソメもなかなかいける!」
「本当だ美味しいね」
千住君と穂乃果も美味しそうに食べてて味を確信した。
「2人も! どうぞ!」
私は遠慮をしているように見えた小雪と康介に菓子の袋を渡した。
「ありがとう! ——うん! 美味しいね!」
「ありがとうな。——まじだ、美味しい!」
2人の笑顔を見れて私は満足だった。
美味しく焼き上げられた熱々の鮎を食べている途中、穂乃果は手を止めた。
「——明日以降のことはどうする?」
その一言で4人はキャンプにきているわけではない事を再認識させられた。
「そもそもここは日本なのか? 無人島だったりしてな」
「戻ることもできないし、どこに進めばいいかも分からないし……」
千住君は今いる場所を知りたく、小雪はどうしていいか分からない様子であった。
「ここにいても仕方ないし、とりあえず明日また進んでみようか」
私もあの日とは中の状況が違いすぎてどうしていいか分からなかったため、とりあえずの提案をした。
「それもそうだな。今日はゆっくり休もう」
千住君が同意してくれて安心した。
細やかな食事を終え、火事が起きないよう燃料を燃やしきり火が消えた事を確認した。
季節も、気温も分からないが少し肌寒かった。
洞窟の中は多少マシで、燃料の余りの枯草や藁を敷き詰め布団代わりにした。
——ふと私は思った。
男女のカップル2組に私1人ってなんか人権ないような。
「俺と康介はこっちで寝るから3人はそっちの方で大丈夫?」
「おい、何勝手に……」
私を気遣ってかは分からないが、千住君は康介を強引に連れて行った。
「今日は女子会だね!」
小雪は嬉しそうにこちらを見た。
彼氏がいる女子2人との女子会は少し疎外感を感じた。
そんな考えを消し飛ばすように小雪が切り込んできた。
「紫伊香は彼氏いないの!!」
私は困った。目を輝かせる小雪になんと言えば良いのか。
とりあえず嘘はバレると思い全部は言わないが事実を述べた。
「好きな人なら……」
すると作戦でも立ててましたとよ言わんばかりに穂乃果も参戦した。
「紫伊香を惚れさせるとはどんな人だろ?」
「惚れさせるとか恥ずかしいこと言わないで!」
なんだか急に恥ずかしくなってきた。
顔を真っ赤にして、枕の代わりに枯れ草に顔を埋めた。
「私紫伊香とあんまり話したことなかったけど、スポーツできるしルックス最強だし、身長高くてスタイルいいもんね!」
確かに小雪とはあまり関わりはなかった。
この異空間で打ち解け、仲良くなれた気がしていた。
だからこそ急に褒められ少し照れた。
「そ、そんなことないよ! それより2人の彼氏との馴れ初めを聞かせてよ!」
話の流れを変えようと、2人のことを聞いた。
「私は大したことないよ? 2年生の体育祭の後康介の方から告白してきて、良いよって」
「私は、3年の頃委員会の仕事を2人でやってた時に好きって言われて」
小雪と穂乃果はサラッと当たり前のように恋のエピソード1を語っており、こっちが逆に恥ずかしくなったが、憧れもあった。
「なんか理想的でいいね!」
「私達のことなんかより、紫伊香の話を聞きたい! だよね?」
「うんうん」
2人はどうしても私の恋の情報を全部抜き取るつもりだった。
私が好きなのは琳寧であったが、2人は琳寧の記憶が消えているだろうし、覚えていたとしても女の子が好きという事に理解を示してくれるか不安があった。
「色々と複雑なことが絡みすぎてるんだよね」
「言いづらい事は無理して言わなくて良いからね!」
「ありがとう小雪」
小雪は臆病だが優しさは誰よりもあるように感じた。
この2人になら話しても良いかと思い1つだけ情報を渡した。
「2人にだけに話すね! 男子には言わないでよ?」
「分かった」
2人は声を揃えて言い、頷いた。
「——実は、私が好きなの女の子なんだよね」
2人は一瞬目を見開き、驚いた表情を見せたが、すぐに優しく微笑んだ。
「それって言うのすごく勇気いるよね。私それすごく素敵で良いと思う!」
「好きに性別なんて関係ないよ」
心臓の鼓動で頭がくらくらしていたが、自分の外側へ出し、2人に受け入れられ少し心がスッキリした。
けれども琳寧のことまでは言えなかった。
盛り上がりの後少し間が合いて、穂乃果が口を開いた。
「もしかしてそれって琳寧?」
その一言で私の心臓が耳の内側にあるように鼓動が聞こえ、頭が回らなくなり、真っ白になった。
小雪は首を傾げ、私と穂乃果だけの空間に切り離されたような感覚になった。




