Pandora適正と少年少女
龍との戦闘が終わりを告げ、陣地が有った場所へと気を失っている真をこの中で1番軽傷な神楽が背負い戻ってきた。陣地は龍の暴風と戦闘の結果無惨なもので、アメノヒスミノミヤから予備の物資を取り出して再び陣地を作り、待機していた。真を安全なアメノヒスミノミヤへと戻さなかったのは、単純に龍のような強力無比な存在が相手ではアメノヒスミノミヤをもっても守ることは出来ないからだ。それならば、抱えて移動することやそばで守ることが出来るように陣地で休むというのは良かった。
だが、陣地で休んでいるにも関わらず、依然として十二秘奥の面々の空気はピリついており、真を除いた全員が先程の危機を思い出しては、歯を食いしばっていた。
全員の心は一つ、真が気付かなければ全滅していた……。というもの。
つい、先程も龍の生命力を見誤って仕留め切れてはいなかった。結果としては、誰1人欠けることもなくPandoraを実地で使える適正の持ち主が判明したとはいえ、警戒していた真がブレスを大盾で凌がなければ漏れなく全員がこの世からチリ一つ残さずに消されていただろう。いくら重要な任務とは言え、このメンバーが全員無事で終わるのが優先だ。
だからこそ、全員を守った真が倒れた時には、普段は冷静な内田が琴音と同じ、それ以上に焦って駆け寄ろうとしたことに驚かなかった。むしろ、2人であの龍を相手にしていたのだから内田が急いで無事なのかを確認したくなるのも無理はないだろう。
さて、その琴音はというと、周囲を警戒しながら爪を噛むという普段の優等生兼ツッコミ担当のような明るさは無く、駆け寄って行ったときの声も上ずって震えて、唇からは噛み締めすぎて血が溢れていた。
流石にこれで、真から離すというのは駄目だろうと、見かねた神楽が真のそばに居させることにした。
幸いにも、現在いるメンバーのなかには2人、回復が行える光属性持ちの神楽と内田がいる。尚、琴音も光の人形を召喚すれば援護として出来なくもない。
どちらかが真の治療に当たるとして、琴音とどちらで2人欠員が出てしまう。
だが、幸いにも神楽のPandoraである神風は人化できる。神楽の武器は予備をアメノヒスミノミヤから持ち出しているので、欠員するのは1人だけということにできる。
「真さん……」「血を流しすぎていたからな、命に関わりかねない《継続回復光》」真の体を見れば、あちこちの皮膚に切り傷が出来ており、中でも、肋骨の辺りが内出血を起こしていることから、いくつかの骨が折れているようにも見受けられる。それらの傷を労るように琴音はゆっくりと静かに包帯を巻いていく。
一方で、魔導を使い真の負った特に酷い傷を癒している内田は13歳という多感な時期にも関わらず、自らこの世界に飛び込んできた真が実は転生者であることを知っている唯一の人間だ。
それでも転生者だからと言って13という年齢で命を賭けることは無いだろう……。自身と比べて華奢な体を見てよりその思いを深めていた。
真の治療が続き、一通り傷を癒すことに成功し、後は魔力の回復と意識の回復を待つばかりになった陣地で、Pandoraである神風は何かを察知した。だが、一度も見たことがない、最初に登録されたデータやもとい、学び続けたものには存在しない反応だったことに、顔が曇った。
いや、それだけではなかった気づけばいつの間にか全員の全身が霧に包まれていた。
そして、影が見えた。
『今は遥かな幻想と消えた魔導文明最盛期の宝物庫、されど、それは幻影と化して、時の夢に語られるパンドラの箱に潜みし災厄。その生存者。
ならば、資格は有るだろう。
遥かな昔、ありし守護の神への資格。だがもはや、それは災禍の種だ。だが、過去を超えたイレギュラーならば、断ち切れるだろう。
我らは、資格を持つものを求めよう。
これから……先の未来のために、ぃまをイギるゾン罪の駄目に。
』
神楽達の前に、真が報告する筈だった少年と少女が現れた。だが、その少女の方の体は所々崩れており最後の言葉を言う頃には少女が消えた。
それでも、表情を変えることなく少年は、言葉を続ける。
『資格を得たもの達よ、コレを』
その言葉と共に、周囲を覆っていた霧が消え去った。霧が消えるとそこは何かの施設の奥に居た。天井は崩れておらず、拠点で有るアメノヒスミノミヤから登るためのロープがさながら蜘蛛の糸のように、天井に空いた小さな穴から垂れている。
そんな非常事態に月葉、神楽、琴音、桑原が警戒が少年に向けて、Pandoraを向けた。
真のそばにいた内田は、先程消え去った少女を観察していた。
「神楽、それはホログラムだ!何故かは分からないがここでは無い何処かから発信されているぞ」
『あの地へと』
ホログラムだと判明した少年の手に、手品のように現れた何かのカードが手から落ちる。
カラン
「な、何⁉︎」
現実にカードが落ちた。
衝撃的な光景に内田は思わず、ありえないと呟くいた。現実に存在しない筈のカードが何故、実体を得て現実に落ちたのだ。並一通りの衝撃ではなかった。
だが琴音は、何か彼らの消え方がやけに心に残った。
「何にせよ、今すぐに撤退開始!」
理解できなかったことに一抹の恐怖を覚えていた神楽が即座に撤退命令をだした。
幸いなことに、ロープが切れるなんてことはなく、全員が無事にブリッジへと戻ることに成功した。
「神楽、東瀛に戻る。それでいいな?」「頼むよ、全員衝撃に備え」
『距離、E20S80H100これより、移動を開始します』
「「⁉︎」」
本日は2話投稿します




