琴音サイド
真が見たのならば陰陽師だと言う姿の幻影と琴音は一人で戦っていた。
琴音が刀を振るえば、陰陽師が使う式神は切り裂かれ紙屑へと変わる。今にも刀が陰陽師に当たりそうなところだけを一見すれば、琴音が有利に見える。が、実際には近づこうとも無尽蔵に出てくる式神と、式神から繰り出される呪術が琴音に幾度も傷を負わせていた。
ゴオッ
「うぐぅ」
今もまた、躱すことが出来なかった燃え盛る火球によって背中から強く吹き飛ばされ、地面をすべる。
地面を滑りながら琴音はどうして一人で戦うことになったのかを走馬灯のように思い出していた……
龍が生み出した竜巻が爆ぜたことによって、とてつもないスピードで吹き飛ばされた琴音たちは、それぞれが別の方向へと飛ばされていた。
琴音は、月葉から教わっていた受け身を冷静にとり、飛ばされてきた方を見ようすると、辺り一面を包む濃霧が存在していた。
……霧⁉︎こんな時に……!真さん達とは離されているし、もしこんな霧の中で敵に狙われたら私は恐らく、勝てない。きっと真さんたちの誰かが見つけてくれるまでに殺される。幸か不幸か、今の私の周りには誰もいないはず。私の中の優先順位は命、秘密、仲間。仲間を優先できないのは汚点だ。でも……。いや今は、一刻を争う判断が要求されている……使うのが一番安全かな。
普段なら使わない魔導を躊躇なく使う決断を下した私は、自分が使うための術式を口ずさむ。
コレの問題は、発音しないにしろイメージだけじゃなくて心の中にしろ決まった言葉を発音しないといけない。真さんにたち十二秘奥に話せるようになれば、コレの秘密がわかるかな……。
「……《召喚魔導》《術式指定:風霊》おいで、シルフ」
リーーン
鈴のなるような音色が響き、私の隣に風のエレメントでできた人形が出来た。これが私の体質によるものと真さんに言った、魔導の正体。
恐らく、特異魔導体質と呼ばれるもの。旧時代、魔導が生まれ解明されていった中でも残り続けた解明することが出来ない、あり得ない魔導の属性、体質の持ち主がいたそうだ。それがきっと両親のどちらかの祖先の中にそんな特異魔導体質の持ち主がいたのかもしれない。あるいは、両方か。
恐らく、先祖返りの私は、適正として教えられた無属性ではなく、そこに存在しないものを呼び出すことが出来る無属性ではない魔導が使えた。
魔素を用いた幻葬士の本部や支部にある転移装置とは違う、別の仕組みによるもの。
両親がつけた属性名が量子属性、魔導系統は召喚。有か無かを選択してそこに存在を呼び出す魔導。ということにしている。実際のところ、私も両親も分かっていない。
出来るのは無機物と、属性の人形と魔導といったものを呼び出すことが出来るだけ。有機物や生物は呼び出せない。そんな魔導だ。
霧がシルフの風の力で晴らされた。晴れた視界に写ったのは何の変哲もない開けた平原だった、龍と出会った場所が少し金属質な地面があったことから考えるとかなり飛ばされてきた、或いは何かの領域かもしれない。いや、恐らくそうだろう。何せ視界の隅に何か歪んで存在している。形は、鳥居のよう。少なくとも、ろくな物ではなさそう。
それでも、私は進むしかない。彼らに追いつくために。




