桑原サイド
龍の生み出した竜巻によって吹き飛ばされた桑原だったが、龍との戦いで吹き飛ばされるのは2回目だ。
2回も吹き飛ばされれば、流石に受け身を取ることが出来る。
「いてぇな」
ズキンと肋骨のあたりが強く痛んだ。だが、そんなことよりも直ぐに周囲の状況を確認するために見回す。しかし、周りには他に飛ばされてきたような痕跡はおろか、飛ばされてくるような気配はない。……孤立無援、周りには味方となる存在は誰もいない、しかも俺自身は負傷している。不味いという他ないな。
ふと、足元を見れば、弾丸が埋まっていた。
なんの変哲もない弾丸に桑原は形容し難い嫌な予感を感じた。
寸前、目の前に迫って来た弾丸を素早く取り出したナイフで弾く。
あと少し遅ければ、間違いなく致命傷だっただろう。
……危ねえ、よりにもよって遠距離からの狙撃だ。仲間に銃を使う存在は俺しかいない。こんな場所にいふ狙撃手の正体は恐らく、トップクラスで危険な知能を持つ幻影。だが、そんな幻影は普通はよっぽどの時が必……!そうか、Pandoraを核にした幻影なら知性を有する可能性は十二分にあり得る。第一、ここは禁足地だ。何があってもおかしくは無い。
再び、飛んできた弾丸をナイフで同じように弾き、カウンターに飛んできた方向に銃を打ち込む。
……良い線いったな。長年、というほど長くこの世界にいるわけでは無いが修羅場を潜り抜けてここにいる俺の勘が相手に当たる弾道をとったと伝えてくる。
ガサリ
草を掻き分けたのであろう音を耳が捉えた。間違いなく、良い線だったのだろう、慌てて飛び出て来たとみえる。
音が聞こえた方を身体強化した眼で睨む。チラリと襤褸が視界に写り込んだ。
狙いを定めるまでもなく、相手に向けて撃ち込む。
カキン
幻影は手に持つ白銀の何かで防いだ。
……恐らく…拳銃、いやサイレンサーがついたような長さのロングバレルの拳銃は知らない。だがシリンダーが見えることからリボルバータイプなのは分かる。特徴的な白銀という見た目、形、威力、間違いなくPandoraの写し身そのものだ。
銃撃。
今度は返礼としてこちらの銃をリボルバーモードに変えてから弾丸を撃つ。そこから互いの姿を隠した。
そこからは互いに位置を変えながら、静かな、されど火花が散る命を賭けた弾丸のやりとりを始める。
幻影に眉間を撃ち抜かれそうになれば次の一手で同じように幻影の眉間を狙い弾を撃つ。桑原が幻影への牽制を兼ねた魔導をばら撒けば幻影はアサルトライフル、いや機関銃のように白銀の弾丸をばら撒いた。それが何十回と繰り返され、均衡が幻影へと徐々に傾き始めた。
天秤を傾けた要素は様々、リロードの隙やスタミナ、負傷が原因だ。
「っ!」
僅かに頭を左に傾ける。直ぐ耳元を弾丸が通り過ぎた。余りの正確な弾丸に徐々に冷や汗を感じた次の瞬間にも弾丸が迫って来る。今度は即死する眉間ではなく、足を狙う直撃弾。飛翔する弾丸をナイフで逸らす。
バリイ
余りの威力を持つ弾丸にナイフが砕け、柄を持つ右手が痺れた。
ゴクリと喉を鳴らす。(危ねえなんてもんじゃねえ、当たろうものなら足だろうと腕だろうと問答無用で千切れ飛ぶような威力になってやがる‼︎けどなぁ、俺は全力だが本気の爪を振るっている訳じゃねえんだよ‼︎)
もし、外部の人間が今の桑原を見れば、引くだろう。何故ならニンマリと三日月状の口元になっている。
十二秘奥狙撃担当桑原悠太。通称、一人部隊旧日本、現東瀛国幻葬士特務部隊『十二秘奥』所属、戦闘序列第2位の鷹が今、秘する真の爪を見せる。




