泡沫の夢
今回の話は繋ぎです。ご了承ください
気づいたら迎えていた学校というか学園の入学式と案内を終え、授業概要などを簡単に説明されると、入学一日目の学園は終わりだった。初日だからこんなものなのだろう。
今回不安視していた、かなり広大な学園で迷子になってしまう可能性は低そうだった。移動はもっぱら転移で、余計なところへ歩いて行かなければ迷う可能性はない。
もっとも、ゲームには、学校の授業なんて描写されることはなかったからこの世界の学校生活にはまだ、不安がある。
また、幾人かと話して分かった事であるが、どうやら俺は少し近寄りがたい雰囲気があるらしい。どうも俺の態度が大人過ぎるのが原因だとか。
「じゃあね、村田さんに狩谷君、市川さん」
村田さんと狩谷君には普通に話せるようになったが、市川さんはまだ少しよそよそしさがある。まあ社会人だった頃の経験則から言えば、話してるうちに慣れるだろう。
むしろ市川さんのように少しオドオドした人の方が、一度仲良くなった後に深い関係になりやすいと思う。だが、ここは学校だ。学年が上がってしまう以上、上手くいくかは分からないが。
帰ると言っていた孤児院の仲間である先生達と啓太と合流し、花びらが舞い散る桜道を歩いて行く。
「なあ真よ。今日って……初日だよな、仲良くなるの早くないか?」
自分と迎えに来た先生しかいないためか、他の人の前で被っていた兄貴らしさを啓太兄は捨て去ったらしい。
ただ褒めてるのか、拗ねてるのか、羨んでいるのか判断が付かない微妙な言葉をいただいてしまった。
「いやまだ挨拶程度の仲だよ。いずれは、もう少し仲良くなりたいかな。目標はクラス全員の連絡先を知るまでだけど」
知ってると何かあったときに便利なんだよな。ただ後々の集まりとかだと幹事役にされやすいのと、みんなを呼び出すときに使われるが。いや、今はグループ全員にメッセージを送れるから、さっさとクラス内グループを作って……いや、絶対連絡先教えたくないなんて奴が出るかもしれないし、掲示板みたいなのを作るのが一番良いのか。
「俺には難しそうだわ……信頼出来そうな人は見つかるかね……」
どこか弱気な啓太の言葉は何故か自分の言葉のように聞こえた。
「僕は啓太兄を信頼してるし信じてるよ?」先の思いを振り払うように言葉を返した。
「いや、もちろん真のことは俺も信頼してるし。俺以外にってこと」
ふむ。ならばさっさと信頼できそうな人と仲良くなって紹介すべきか。いや、現時点で言っても信頼できる人は今のところはゼロではない。
目星を付けた俺は動きやすい服に着替えると、明日使う荷物を今のうちに準備する。そして窓の先に見える雲一つ無い空をぼうっと見つめていたが、なんとなく外に出ないのはもったいない気がして、普段より少し早いがランニングに行くことにした。
走りやすいとは言えない坂道を登り滝の裏まで走る。そして俺はそのまま滝から引き返し、走りやすいランニングコースへ戻る。
何十周走っただろうか。
鍛え始めてから初めて、息が切れ始めくたくたになった頃、滝のところで型の訓練をしようと戻る。そして滝壺から少し離れたところで第三、第四のナイフの同時生成の訓練をした。
訓練を終えて最近魔導で出せるようになったベンチで座る。
「もう少しで、資格認定か……」
滝壺の音にすぐ掻き消されるような声で呟く。俺にとってはようやくゲームの世界であると実感することが出来る可能性が残されている職業。
その資格認定が後、数週間後に行われる。歳も10歳からという中々、低めの人間でも受けられるらしく先生にはバレないように受ける用意も出来た。
「……それにしても、魔導と幻葬士以外に全くもってゲーム要素が見つからないなー」
そんなことを呟いたその時だった。
俺の体がいつの間にか水の中に落ちていた。
息が漏れ、思考が途切れ始め俺は
ーーー
「ゲボッゴホッ」
気管に詰まった水を吐き出して、水に浸かっていた目を擦る。
どうやら、浴槽の中で寝てしまったらしい。
溺れて見た夢は、今でも鮮明に思い出せる。というかつい先日も通っていた学園の記憶。
最近は、あまり話していなかったなとため息をついて浴槽をから脱衣室に向かう。
「思い出か…」




