第三席と第四席への呼び出し
白い壁に、手すり、ピッピッと電子音が一定の速さで鳴り響く。ここは幻葬士支部内に存在する幻葬士専門の病院。今、ここで一人の少年が知り合いの少女の手を借りて退院する準備の真っ最中だ。
「ようやく、退院出来るな」この少年、真は転生者だ。そして自分を鍛えたことで昇格してしまった、その結果は、前々回にラスボス一歩前のボスである敵幹部と殺し合いになってしまい大怪我を負ってしまったのが原因で凡そ3日間、寝込むことになってしまった。
「師匠……その状態で冗談は言わない方がいいと思います」この男、真のことを師匠と呼んでいる少女、有原 琴音は真の怪我のレベルを知っている以上、真が冗談を言っているように聞こえたらしい。
「まぁ、確かにそうだけどな、流石にこれ以上寝ているのは我慢できん」真にとっては冗談でもなんでもなく、ただひたすらに動けないのは厄介だった。仮にも、A級幻葬士?にして特務部隊十二秘奥の第三席を務めている、そこに学校生活もあるのだ。休みが続くのはどちらも不味い。
「その怪我を無視して戦おうとした師匠が悪いです」最も事情を全て知らない琴音からしたらいつの間にか大怪我していた師匠が心配でしかないことなのだ。
「大人しくしていて下さい」
「……其は小さき鎖の間《鎖ノ小迷宮》」流石に何を言っても自分の言葉は聞いてくれないと悟った真。それなら自分が動くのをサポートできる小迷宮を作った。効果としては……出したいところに鎖を出すという魔導。ちなみに攻撃等で出した鎖は暫くすると砕けるが、この迷宮系統は砕けなかったり移動特化にしている分、初期攻撃力は皆無だったりする。まあ、戦闘になったら攻撃効果を付与して戦うのだが……
いずれにせよ、かなり強引な方法で移動しようとする真を見てた琴音は自分の常識を疑ってしまった。何せ、戦闘用の魔導を移動用にしているのだから。あまりの衝撃に目を見開いて呆然と鎖で手すりを作った真を見てしまう。そこで、ようやく神楽から言い渡された真の監視任務を思い出した。
「あーしまった⁉︎師匠駄目ですって!」思い出した琴音は真を必死に止める。
だが…
「これで動けるから問題ない」琴音が動けないことを心配して止めていたと思った真としてはこれなら大丈夫だと思ってしまっている。
実際は神楽からすぐに行動しようとしてしまう真を休ませてくれと言われた琴音としては全然違うことを言っているのだが……
そんな止めようとする琴音と退院しようとする真がそれぞれ強引な手段を模索し始めた、そのとき
プルルル プルルル
真が使う第三席専用のスマフォンから通信が入った。
「……これは…確か、公共呼び出しの音だったか?」なお、ここで真が呼び出し音に対して疑問を抱いた理由を説明しておこう。
まず、第三席専用のスマフォンには呼び出し音にはいくつか音声パターンが分かれている。一つが隠密行動用の秘匿回線による呼び出し音。もう一つが公共の場で使える公共回線による呼び出しだ。他にもいくつかあるが…今回は初めて聞いた後者だったので真はすぐに断言出来なかった。
「えぇ、神楽さん私に師匠を止めるように言っていたのに⁉︎」
一方で、琴音は別の理由で驚いていた。神楽からは連絡があるまで監視しているようにと任務なしまで言い渡されたのに、目覚めてすぐに連絡が来てしまっている。これでは自分が何の為に真を止めようとしたのか分からない。
「おい、そんなこと言われてたのか⁉︎」
「あ」
「神楽の馬鹿野郎。まぁ、いい琴音取ってくれないか?」
「は、はいどうぞ」
「さて、内容は……」
『 第三席へ
今日で君が退院出来るように手を回した。そこで本来なら君には支部の十二秘奥用の部屋で退院祝いのパーティーをしたいのだが……君が怪我をした今回の件。想定より遥かに厄介だった。よって現場にいた君にも話をしてもらうという案が出てきた。君にも第四席にも悪いが病院からこちらに来てもらえるか?もっとも、拒否権は一部を除いて認められないが……。良い返事を期待する。』
「えーと、師匠……」
「なんだ?」
「拒否権あるんですね⁉︎」
「一部だけど、あるみたいだなぁー」
「こういうのって普通は無いんじゃないですかね」
「うちの支部って変な所でホワイトよりもクリアだからな」
「透明ってレベル超えてません?」
「まぁ、行くぞ」「はい!」
主人公と出会うまであと僅か。




