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第41話 ヒント

「…では、皆さんいらっしゃいますね?」


地下を抜け、地上に戻ってくると、リプラはこちらを向き、人数を確認していた。


「…はい、大丈夫ですね。

…後は、イーネさん次第ですか…。」


「…癪ね、あんなやつ次第だなんて。」


リムさんは、不満そうにしていた。

…それはそうだろう。

…イーネさんも、あんなに露骨に狙わなくてもいいのに…。


「…そ、それで…イーネさんが戻ってくるまで、出来る限りの事をやるって言っていたけど…具体的には、どういったことをするの?」


俺は、リムさんの機嫌を直すために、話を変えようと、リプラにそう話しかけた。


「そうですね、先程の、地下のような場所がないか、もう少し探してみましょう。

もしかすると、同じような空間が見つかるかもしれません。」


「……そうね、後、一応、また空間が消えないように、地下への扉と地面の間に、クナイを挟んであるわ。」


地下への扉を見てみると、確かに、リムさんが言った通りに、クナイが挟んであり、完全には閉まっていない状態だった。


「…では、ここの地下の様子も確認しつつ、周りの様子も確認しましょう。」


リプラは、そう言うと、周りの地面を確認し始めた。


「…じゃあ、私達も、探してみようかしら。」


「……………ああ……。」


他の皆も、各自探し始めたので、俺も地面を調べてみる事にした。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


しばらく、他の地下が無いか探していたが、その時、俺は地下を効率よく探せるかもしれない方法を思いついた。

セクタの『サーチ』だ。あれを上手く使えば、地下の魔力も分かるかもしれない。


「…あ、セクタ、『サーチ』を使ってもらいたいんだけど…。」


「えっ?…いいけど、『サーチ』は、地下までは届かないよ?」


セクタは、俺の提案を不安そうに聞いていた。


「ああ、それで思ったんだが、地下で『サーチ』を使ったらどうなるんだ?」


「…地下で、『サーチ』?」


「…うん、効果範囲は地上だって聞いたけど、もし地下で使ったら、地下の様子もわかるんじゃないかと思って…。」


俺の言葉を聞くと、セクタは悩み始めた。


「…地下で使った事がないから、分からないな…。

…地下で使う、か…。」


「…じゃあ、試しに…やってみる?」


「…う、うん…!」


俺は、セクタの返事を確認した後、皆に一声かけ、地下への扉が完全に閉まらないように気をつけながら、セクタと共に地下へ降りた。


「…じゃあ、やってみるよ…『サーチ』…。」


「…。」


セクタは、『サーチ』を使ったと思ったら、無言になり、眉間にしわを寄せていた。


「…………。………、………?」


そして、地下をウロウロとしていた。


「…セクタ、えーっと、結局、上手くいったのか…?

それとも、ダメだったのか…?」


「…うーん、何だか、薄らと何かを感じる気がする…。

…こっちかな…?」


俺の問いが聞こえたのか、聞こえていないのかは分からないが、セクタは、表情を変えることなく、地下の入口がある方から離れ始め、壁の方まで行った。


「…やっぱり、こっちの方から、少しだけ魔力の様なものを感じる気がする…。」


「…なるほど…それなら…皆に伝えて、その場所を確認してみるか…。

…距離は、分かったりしない…?」


「距離か…うーん、ハッキリとは分からないけど…遠くはないみたいだけど、そんなに近くもない…という感じかな…。」


「じゃあ、ハッキリと分かるのは方角だけか…。」


「…そうだね…。」


セクタは、頷いた。


「…じゃあ、戻ろう。

…方角だけでもわかるかもしれない。」


「…うん。」


こうして、俺達は、地上に戻り、地下であった事を皆に伝えたのだった。


「…なるほど、方角ですか…。」


「…うん、薄らと、こっちの方から魔力を感じるって…。」


リプラは、セクタが、魔力のようなものを薄らと感じると言った方角を眺めていた。


「…でも…こちらは…。」


リプラは、困惑していた。

…そりゃそうだ、その方角の先は…池が広がっているだけ…。

…魔力を感じた場所は、池の…底…って事になるもんな。


「…しかし、可能性がない事はないですね、一番、発見が難しい場所ですから、何らかの方法で、そこに何かを隠しているとしても、納得は行きます。」


「…うーん、でも、問題は、どうやって、池の底に行くかなんだよな………えっ?」


…皆で、池について話し合っていると、どこからか声が聞こえた。


「……………ぐっ……。」


「…イーネ、さん…?」


声が聞こえた方を向いてみると、そこには…傷だらけのイーネさんがいた。


「……ちょっと、なぁ…まあ、色々とバレてさー。

…何とか、ここまで…戻ってきたんだよ。」


「『ヒール』っ…!!

えっと、リプラ…さん、あの、会社でお父さんがくれた、あれ、えっと、包帯、出して…ください。」


セクタは、焦りなりながら『ヒール』を放って、リプラから包帯を受け取っていた。


「…ああ、いーよ、自分でやるからさー。

…『ヒール』でだいぶ楽になったし。」


イーネさんはセクタから包帯を奪い取ると、手早く巻いた。


「…それで、何があったの?」


「………まあ、さっきも言った通りだよ。

…あの集団に着いて行って、色々と探っていたら、ちょっと色々とバレちゃったんだよー…。

…あいつも、仲間に誘ったのは半分本気、半分冗談、って感じだったみたいだしー。

…それで、まあー、何とか帰ってきたという訳。」


イーネさんは、そこまで言うと、何かを取り出した。


「…まあ、タダで帰ってきた訳じゃーないからねぇ…。

…これは、どこかで使うリモコンみたいだけど…。」


「…それって、もしかして…。」


…もしかしたら、このリモコンを操作することで、池の水が抜けるような仕掛けがあるのでは無いか、と俺は思った。


「…ん?…使う場所の心当たりでもあるのか…?」


「…ああ、うん、まあ…。」


俺の呟きを聞いたイーネさんは、こちらの方をじっと見てきた。

…何だか、少し嫌な予感がするな…。


「…なるほど、それじゃ有料だ。」


イーネさんは、軽くそう言い捨てた。

…なんとなく予想はしていたが、やはりそうだったか。


「値段は五百だ。

…これぐらいだったら、良いだろ?」


…五百…何だか、イーネさんにしては安い要求だな。

…いや、まさか、五百と言っておいて、要求を飲んだ所で、その下に、ゼロが大量に並ぶんじゃ…。


「…ん、何だ?

…ああ、大丈夫だ、五百は、正真正銘500だ。」


俺が、あまりにも不安そうにイーネさんの方を見ていたからか、イーネさんは、そう言った。

…うーん、それなら、俺達があまりにもお金を払わないから、額を出来る限り下げているのか…?


「…ツイト様、お金を払う必要はありませんよ。」


俺がそう悩んでいると、リプラは満面の笑みを浮かべていた。


「…あー、じゃあ三百。」


「………。」


イーネさんは、価格を下げたが、リプラは笑みを浮かべたまま微動だにしなかった。


「……じゃあ、百…。」


「………。」


イーネさんは、更に価格を下げたが、リプラは、相変わらず笑みを浮かべたままだった。


「…じゃー、五十、三十五、十…五…一…あー、はい、分かりましたよぉ、もう君らには、絶対にお金を払わないといけないっていう状況以外の時はお金の交渉はしないから!」


イーネさんは、値段を下げても、全く反応を変えることがないリプラを見て、お金の交渉するのを諦めた様子だった。


「…で、ちょっとこっちに来てくれないかなー。」


「…?」


しかし、イーネさんは、リプラを茂みの影の方へ連れていき、こちらには内緒で何かを話していた。


「………じゃあ、そういう訳で。」


話が終わった後、イーネさんは、何かのリモコンを、リプラに渡していた。

…ということはつまり、お金以外の何かを渡す、契約を結んだという事だよな…。

…一体、どんな契約をしたんだ……?


「…ツイト様、どうかされましたか?

…さっそく、リモコンを使ってみましょう。」


「あっ、ああ、うん。」


リプラは、何食わぬ顔でリモコンをこちらに渡してきたので、俺は、気にしないことにした。

…しかし、このリモコンに、池の水を抜く仕掛けがあるんじゃないかと思ったが…スイッチが尋常じゃない程ついているな…。

…全部一気に押して、変な仕掛けが作動したらまずいから、さすがに今回はやめておこう。

…押す順番があったりするのか、特定のボタンを押すのか…分からないな。


「…イーネさん、このスイッチの、押す順番は…分かったりしない?」


「いや、分からないな。

私も、本気で仲間になったつもりは無いってことがバレて、どうせ逃げるんだったら、何か奪ってこようと思って、適当に目に付いた物を奪ってきただけだしー。」


「…なるほど…。」


リモコンのスイッチに関しては、イーネさんも、知らないようだった。


「…うーん、でも、こんなにスイッチがついていて、順番があるのなら、忘れないようにしているとは思うのだけれど…。」


リムさんも、リモコンを見ながらそう呟いた。

…忘れないように、か…。

…メモを取ってある、とか…?

…いや、メモはあまり現実的じゃないな。

この世界には魔法やスマホもあるのに、わざわざメモを取る必要は無いだろう。

…きっと、あえてメモをとる意味は無いはずだ。


…魔法か…そうだ、このスイッチに、何かしらの魔法が仕込んであって、順番が分かったりしないかな…。


「リプラ、このリモコンに、魔法がかけてあったりしないかな…?」


「魔法、ですか…。

…魔力を込めて、魔法が発動すれば、かけてあるという事になりますが…必ずしも『リモコンを押す順番が分かるような魔法』が発動するとは限りませんよ?」


「…なるほど。」


…俺は、リプラの言葉を聞いてハッとした。

…確かに、魔法で何か分かるようにしていたとしても、わざわざその魔法をリモコン自体にかけるだろうか。

…むしろ、それなら、こんな風に盗まれた時の為に、爆破する魔法とか、そういったものをかけている可能性の方が高いもんな…。


「…うーん。」


…しかし、今できる事といったら、それぐらいだよな…。

…他に、方法もないし…。


「ん?」


…そんな事を考えていると、どこからか、声が聞こえた気がした。


…待てよ、イーネさんが持ってきたリモコンは、もしかして、敵にとって割と大切なものなんじゃないか?

…イーネさんは、リモコンの使い道が分かっていなかった様だった。

…それでも持ってきたという事は、このリモコンは、どこかに、余程大事そうに保管してあった物では無いかと予想出来る。

…このリモコンが大切なものだとしたら、当然、柄の悪い集団は、探しに来るだろう。


…俺の頭には、そんな考えが浮かんだ。


「…!」


リプラも、同じ考えのようだった。


「…皆さん、おそらく、イーネさんの追っ手がこちらに近づいてきます。

…どこかに隠れましょう。」


「…どこかって…どこに…。」


リムさんは、周りを見渡しながら、困惑していた。

…確かに、この辺りには、隠れられそうな場所がない。

…茂みに身を隠せない事はないが、確実に身体のどこかがはみ出てしまう。

…一時的にやり過ごす事は出来ても、もし囲まれたりしたら、バレてしまうだろう。

しかし、考えている暇はない。


「…茂みです!茂みに隠れましょう!」


俺は、そう呼びかけて、茂みに駆け込んだ。


「………居ねえなあ…。」


「…居るとしたら、ここだと思ったんだけどな。」


茂みに隠れてすぐに、柄の悪い男が二人、池の周りにやってきた。

…柄の悪い男らが、こちらに気づいた様子はない。

他の全員も、無事に周りの茂みに身を隠せたようだった。

しかし、ここからどうするかだな…。

このままここでじっとしていても、きっとバレてしまう。

リモコンは今一応俺が持っているが…これを操作して何とかする事は不可能だろう。

…一応、『スタン』で不意打ちは出来るが、それは最終手段にしておこう、騒ぎを聞きつけて別の柄の悪い人が来ても困るからな。


「…こっちの方も探してみるか…。」


「そうだな…。」


…まずい、こっちの方に来そうだ。

…やっぱり、『スタン』を放つしかないのか…?


「やあ、勇者様ー。」


…俺が、『スタン』を放とうとした時、背後から急に声が聞こえた。


「………うわ……………っっ!!」


思わず叫びそうになってしまったが、俺は必死に抑えた。

…一体何をしているんだ、イーネさん。


「…今から、そのリモコンの押す順番を聞き出すからさー。

聞こえた瞬間あいつらの動きを止めてくれよー。」


「…え、それは…。」


「…『あのリモコンって、そんなに大事な物なのかな…。』」


イーネさんは、俺の言葉を無視し、柄の悪い男の声をまねて、そう呟いていた。


「…おい、今の言葉、あの…方の前では言うんじゃねえぞ。」


「…ん?」


「『正直、リモコンより、魔法で操作する方が、すごいと思うんだけどなぁ。』」


「…おいバカ、だからやめろって。

…お前も、持たされているから分かるだろ?

…魔法だと、解き方が分かれば一発で解かれちまうが、こうすれば、解き方を分散させるから…。」


「ちょ、ちょっと待て…。

…俺は、今、何も…言ってないぞ。」


「…えっ?」


「………『スタン』!」


「「ぐわああああっ!」」


イーネさんは、柄の悪い男らが、倒れるのを、満足そうに見ていた。


「…いやあ、まさかこんなに上手くいくとはねぇ…。

…で、あいつは、『持たされている』とか、『分散』とか言っていたからー。

…多分、あいつらは、別々の工程が書かれた物を持ってんだろうなぁ…。

…なるほど、これが、4番目の工程で、こっちが…。」


その後、素早く倒れた二人に駆け寄り、持ち物を漁っていた。

…何だろうか、上手くいったのは良いが…少々、ズルいような気がする。

…って、待てよ、一人一人に、別々の、工程が書かれた物を持たされているなら…。


「…取り敢えず、危機は脱しましたね…。」


…と、俺が色々と考えているうちに、イーネさん以外の皆も、こちらの方に集まって来ている様子だった。


「…イーネさん、何をしているんでしょうか。」


「…ろくな事じゃないって事は確かね。」


「…………。」


「…やだなー、ろくな事じゃないなんて。

…せっかく、スイッチの押す順番のヒントを見つけたのにー。」


「…あ、そう言えば、その、スイッチの押す順番のヒントって、その二人だけじゃ、全部揃ってないよね…。

…まさか…。」


俺がそう言うと、イーネさんはニヤリと笑った。


「…もちろん、分かるまでヒントを貰うつもりだよ。」


「…あっ…。」


「…もちろん、勇者様にも着いてきてもらうよ。

…じゃないと、面倒な事になるからね。」


「…えっ?」


イーネさんは、突如、俺の腕を掴むと、引っ張った。


「…あ、ちょっと、待って…。」


俺は、よく分からないまま、イーネさんと、スイッチの押す順番のヒントを探しに向かったのだった。

今回も読んでくださり、ありがとうございます。


まだ寝ていないので土曜だと言い張りたいですが、無理がありますね。


次回も、よかったら見てください!

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