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第38話 梯子

「…あ、リプラ…カラリ…。」


部屋から出て、廊下を進んでいると、カラリと一緒にいるリプラと出くわした。


「………。」


二人とも無言でこちらを見ていた。


「………。」


俺も無言で頷いて、宿の共有スペースに向かった。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


既に俺達三人以外は集まっていて、話し合いはスムーズに始まった。


「…で、昨日聞いた作戦をやるのよね。

…彼女の協力を得なければならないというところは、まだ、本当には納得いってはいないけれど、他にどうする事も出来ないものね…。」


リムさんが、イーネさんの方を見ると、イーネさんは勝ち誇ったような顔をしていた。


「…………それで、勇者、暗号はもう、大丈夫なのか…?」


「…うん、暗号はもう呟いたから大丈夫…。」


「後は向かうだけ、という事ですね。」


「………。」


リプラの言葉を最後に、場に沈黙が流れた。


「…では、行きましょうか。」


少し時間が経った時、リプラは沈黙を破った。


「……そうね。」


「……………ああ。」


「「…うん。」」


「…そうだね。」


…リプラの言葉に、俺を含むイーネさん以外の全員がそう返事をした。


「…って、イーネさん…。

…これは、イーネさんが結構カギになっている作戦なんだけど…。」


「いや、どうかなぁ?

まだ、交渉に、応じると言った覚えはないよー?」


俺の呟きを拾って、イーネさんは笑みを浮かべ、段々とリプラの方を向いた。


「…えっ?」


…リプラとの話し合いは、上手くいっていると思っていたんだけどな。

でも確かに、イーネさんは、仕方ない、とは言っていたけど、応じるよ!と言い切ってはなかったな。

…いや、でも、仕方ないって事は、ほぼほぼ応じるって意味だと思うけど…。

条件が、どういう条件であるかは知らないが、仕方ないと言ったということは、まあまあ良い条件だったってことだよな。

どうして今更こんなことを言うのだろうか。

俺もイーネさんと同じように、リプラの方を向いてしまった。


「…………。」


リプラは何も言わず、笑みを浮かべた。


「…………チッ。」


イーネさんはその様子を見て、不満そうにしていた。


…なるほど、少し、条件を有利な方に変えられないかと確かめてみたということか。

…しかし、少し変えたいとは思うが、何も言われなかったら諦めるような条件とは、いったい、どんな条件なんだろうか。

…イーネさんは、お金の契約をしたかったようだから、価値があるが、お金ではないもの…なのか?


…そうだ、魔力…!

…そっか、もしかすると、元依頼主から奪った魔力を貰うという条件かもしれないな。

それなら、昨日の話とも繋がるな。


「…あー、ほら、行くんだろ?」


俺がそう考えていると、イーネさんは、上手くいかなかった事を誤魔化すようにそう言い、宿のドアの方を向いた。


「…そうですね、何も問題がないようで良かったです。

…行きましょうか。」


リプラも、笑みを浮かべたままで、チェックアウトに向かった。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「…ツイト様、メッセージの方は、どうでしょうか。」


「…うん…。」


チェックアウトを終えると、リプラはこちらに来た。

俺も、リプラの言う通りに、『kantsumire』を確認してみると、暗号の返信に、暗号が来ているのがわかった。


「…上手くいっているみたいだ。」


リプラは、俺の言葉を聞くと、そっと歩き始め、宿のドアを開けた。


「………。」


俺も特に何も言わずに、リプラに着いて行った。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「…初めまして、あなたは、勇者様だと小耳に挟みました。

…それは本当なのですか?」


池の手前に来て早々に、初対面の呪いを解こうとしている人からそう問われてしまった。


「えー…ああ、まあ…。」


微妙な返事をしてしまった。


「本物なのですね…。

…勇者様、一つお伺いしたいことがあるのですが、先程の『kantsumire』の不可解な言葉…。

あれは一体何でしょうか…?」


「ああ…まあ特に意味はないですよ。

少し、『kantsumire』の様子がおかしかったので、文字が打てるか確認しただけです。

…ああ、今は大丈夫ですよ。」


俺はとっさにそう言い訳した。


「…なるほど、そうだったんですね。

…少し心配していたので…安心しました。」


「…先輩、もう少しで呪いが解けそうです。

勇者様達は…あっ、もう来ているみたいですね。」


俺が、呪いを解こうとしている人と話していると、俺が話している人より小柄な人が、走ってこちらに向かってきた。

先輩という事は、この二人は呪いを解く専門家だったりするのだろうか。

…って、後輩の方には、もう勇者だと確信されているじゃないか。


「…こちらです!着いてきてください!」


「は、はい…。」


後輩の熱意に圧倒されながらも、俺達は呪いがかかっている場所の目の前まで案内してもらったのだった。

その場所からは黒いモヤモヤが上がっていた


「呪いってこんな感じなんだ…。」


俺が呪いを見ていると、先輩と呼ばれた人は、説明を始めた。


「…呪いを解いてから、また呪いが復活するまで、約十分程です。」


…十分…?

呪いが解かれてからすぐに呪いた復活する…と聞いていた割には、長い方ではないか?と思っていると、先程先輩と呼ばれていた人が、おもむろにはしごを取り出した。


「昨日家から持ってきたのですが…強度はおそらく問題ないと思います。」


…ん…?

あ、そういえば、呪いのことばかり考えていたけど、リムさんは、確か池に行くための橋が壊されたと言っていたな…。

…だから、つまりあれを渡るわけだな。


…大丈夫なのだろうか。


…と思っていると、後輩は、先輩からはしごを受け取った。


「…では、呪いを解きます。」


先輩が、手を前に出すと、黒いモヤモヤは消えて行った。


「…すみません、できれば、誰かに、壊された橋の向こう側に行って、はしごを押さえてもらいたいのですが…大丈夫でしょうか?

…もし、ダメであったら………僕が行きますよ。」


「…いえ、問題ないわよ、私が行くわ。」


「…ホッ、では、お願いします。」


リムさんは、話が終わると、一瞬にして壊された橋の向こうに渡った。


「…えっ?…早…!?」


俺は思わずそう口にしてしまった。

周りを見渡してみると、皆も唖然としている。


「…ほら、押さえているから大丈夫よ。」


「…あっ、そ、そうですよね!

…ちょっとビックリしてしまいましたが…。

…どうぞ、通ってください!」


「…そうですね、行きましょう。」


リプラは、二人の言葉を聞くと、躊躇なくはしごを渡り始めた。


「…ツイト様も、どうぞ。」


「…えっ、あ、ああ…。」


リプラにどうぞと言われてしまったので、俺もはしごを渡ろうとしてみた。


「…っ、いや、えっ?」


橋の下の川はそんなに深くなく、万が一落ちてしまったとしても、ケガをしない可能性もあるような雰囲気だった。

…しかし、はしごは結構揺れる。

…いや、これは、あんまり考えない方がいい。

…下を見ないように、素早く渡ってしまおう。

俺は、そんな事を考えながら、はしごを渡りきった。


…その後、イーネさんとブロックさんも渡り、セクタが残った。


「後はセクタだけか…。」


「…時間は…ゆっくり渡っても、間に合いそうですね。」


「…よし、セクタ……セクタ?」


「…えっ?…いや、うん、渡るよ………。

………………。」


セクタは、渡ると言いつつ、はしごをちょっと触ったり、はしごの周りをウロウロとするだけで、なかなか渡ろうとはしなかった。


「…セクタ、もしかして…渡れない…?」


「………………。」


セクタは、そっと俺達から目を逸らした。


「…セクタさん、大丈夫ですよ!

セクタさんは、『ヒール』を使えますから、万が一落ちてしまっても問題ないですよ。」


リプラの言葉を聞いたセクタは、もっと動きが不審になった。


「…って、リプラ、もっと怖がらせちゃってるよ。

…えーっと、そうだ、セクタ、俺達と常に一緒じゃなくても、トラブルでもなんでも、乗り越えていけるんじゃなかったのか!

…お父さんに…言っていただろう?」


「…乗り越えて行けるとは言ったけど、わ、渡れるとは言っていない…。」


「そんな屁理屈を言っている場合じゃ…。」


「わ、分かってるけど…。」


セクタは、足を前に出したが、渡らずにすぐに引っ込めてしまった。


「……………俺でも渡れたから大丈夫だ。」


「あー、セクタ君、まあ、大丈夫じゃない?」


「…なんか、説得力ある…。」


イーネさんの言葉が一番雑なはずなのに、何故か一番説得力あると感じた。

…ああ、そうか、背か…。


「…ん?勇者様…それは私に言ったのかなぁー?」


自分で勝手に納得していると、イーネさんが笑みを浮かべてこちらの方を見た。


「…ああ、いや、な、何でもないよ…。」


「…本当にぃー?」


「本当本当!!」


「…そんな事やってる場合じゃないでしょ!」


俺が必死にイーネさんに言い訳をしていると、リムさんに怒られてしまった。

…そんな事をやっている場合じゃない。

…それは、ごもっとも。


「…で、でも…もうすぐ十分になりますよね…。

…何か方法は…。」


「…仕方ないわ、強硬手段だけど…セクタ君、はしごに掴まってくれないかしら。

…地面についている場所でも構わないわ。

…後、ちょっと目を瞑って欲しいの。」


「…えっ、う、うん…。」


セクタは、リムさんに言われるがまま、はしごの、地面についている部分に掴まって、目を瞑った。


「…ブロック。」


すると、リムさんは、ブロックさんの顔を見ながら、何かを持ち上げるようなジェスチャーをした。


「……………。」


ブロックさんは、リムさんと交代してはしごを押さえ始めた。


「…そこの…後輩さん?

…ちょっと手を離して欲しいのだけれど。」


「…えっ?」


セクタは、その言葉に驚き、目を開こうとした。


「…あっ、目を開けちゃダメよ、セクタ君。

…いえ、開けちゃダメって事はないけれど、手だけは絶対に離しちゃダメよ。」


「…あ、見ない、離さない、絶対に…。」


セクタは何となく状況を察したのか、先程よりもしっかりと目を瞑り、しっかりとはしごを掴んだ。


「…えっと…じゃあ離しますよ、はい!」


「…ブロック!」


「……………。」


後輩がはしごから手を離すと、ブロックさんははしごを水平に持ち上げ、そのまま後ろに下がった。


セクタがこちら側の地面の方に差し掛かった時、ブロックさんは、はしごを地面に置いた。


「もう大丈夫よ、セクタ君。」


「…あ、よかった。」


セクタは、恐る恐る目を開いたが、地面があった事に安心したのか、すぐに立ち上がりこちらの方に来た。


「…無事渡れたみたいですね…!

では、はしごをこちらに…あっ。」


後輩は、はしごを回収しようとしていたが、こちらに声をかけた瞬間に、黒いモヤモヤがまた発生し始めていた。

…時間は、結構ギリギリだったようだな…。


「…えーっと、では、また、次、呪いが解ける時まで、はしごは預かっていてください!」


「…は、はい!」


「…では、持っておきます。」


「…………………ああ、ありがとう。」


リプラは、ブロックさんからはしごを受け取り、異空間にしまっていた。


「…では、皆さん、無事に池の手前まで来る事が出来ましたね。

…ここから先に行けば、池が見えると思われます。

…作戦は、大丈夫ですね?」


はしごをしまい終えると、こちらに向き直ってリプラはそう言った。


「……うん。」


「…では、行きましょう。」


こうして俺たちは、池に向かったのだった。

今回も読んで下さりありがとうございます。


いよいよ、戦いが始まりそうです。


次回も良かったら見てください。

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