第34話 対策 前編
「…………っ、バレて、ないか?」
リカバリー街へ戻った時、一瞬警戒したが、迎えてくれる者は居なかった。
「…よかった。」
と、俺が安心していると、目の前にリムさんが現れた。
「…勇者さん、池に行ってきたわよ。」
「…わっ!…って、リムさん…本当に、もう行ってきたんですか?」
「ええ、そうね、しかし…何やら、おかしい状況になっているみたいよ。」
「おかしい状況?」
「…勇者さんがいなくなった後、思っていたよりも早く呪いは解けたらしいのだけれど…しばらくすると、また、呪いで道が通れなくなっていたらしいわ。
…呪いを解いても、何故か復活するみたいなの。」
「…復活する…?」
「…ええ、それで、少しの時間だけなら呪いを解くことができるから、通る事が出来ない訳では無いのだけれど、すぐに呪いが復活するから、一度通ると少しの間戻れなくなるそうよ。」
「…なるほど…。」
少しの間戻れなくなる。
俺は、その言葉に少し躊躇いを覚えた。
「…リプラ…えっと、どうする?」
「そうですね…今日は、一旦、宿に泊まって、準備を整えたいと思います。
呪いを解こうとしている人物に、明日の朝、私達が池の道に行ったタイミングで呪いを解いて貰えるようにお願いして、後は宿で過ごしましょう。」
「それなら、前みたいに私が宿に予約を入れて、呪いを解こうとしている人達に事情を説明してくるわ。
だから、皆、宿に向かっても大丈夫よ。」
「…そうですか、それでは、お願い致します。
私は、宿に向かった後、池にいるモンスターについて、バイトさんからの情報に加えて、もっと詳しい事を調べ、アイテムなども整理したいと思います。」
リプラがそう言ったタイミングで、リムさんはまた姿を消した。
「…えーと、じゃあ俺は…宿に行って…。
まあ、休んでいるよ。」
「………………俺も、そうしようか…。」
「…私も、もちろん何もしないで休んでるよー。」
「…僕は…宿に行ってから決めようかな…。」
「わ、私も、行ったら決めます。」
「…全員宿に向かうということでよろしいですね?
…では、行きましょう。」
リプラのその一言で、俺達は、宿の方へ歩き始めたのだった。
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「…あー、そんなに居たわけじゃないし、離れたわけじゃ無いけど、この感じ、何だか、懐かしい気分だな…。」
…しばらく歩いて、見なれた宿屋に着くと、俺からは自然とそんな声が出てきた。
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「…………………って!別に趣味でつけている訳じゃ無いですよ!?」
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…嫌な事も思い出した。
「…では、私は、この前と同じようにカラリさんを護衛しながら、情報を調べていますね。」
「…えっ、それなら私はどうすれば…。」
「ああ、カラリさんは好きにしていていいですよ。
追いかけます。」
「…えっ!?……そ、そうですか。」
…リプラとカラリは二人でそんな事を話し合い、宿の中に入っていった。
「……………俺は、リムが来るまではここに居ようかな。」
「…ほぉー、あいつが来たらどうすんのかねぇ。」
宿に入ろうとするブロックさんに、イーネさんとセクタはニヤニヤと笑みを浮かべていた。
「……………別に。」
ブロックさんは、不満げな表情をしながら、そう言い残し宿に入っていった。
「…ふふっ…………。」
イーネさんとセクタも、それに続いた。
「……………。」
俺は宿の前で、少しの間迷っていたが、皆に続いて入る事にした。
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…宿に入った頃、リプラとカラリは、前に皆で集まった事もある共有スペースにいて、他の皆は部屋に行ったようだった。
「…ツイト様、部屋の鍵をどうぞ。」
リプラは、俺が宿に入って来たのを確認すると、最後に残ったと思われる一本の鍵を渡してきた。
「…あっ、ありがとう…じゃあ、俺は…取り敢えず部屋に…。」
鍵を受け取り、俺も部屋に行こうとしたのだが、部屋の方へ歩く前に、リプラが俺を引き止めた。
「…ツイト様、カラリさんが、エレメンタルブレッドを食べたいと言っているのですが、一緒に行きませんか?」
「…え、えっ!?リプラさん…。」
リプラの言葉に、カラリは若干戸惑いをみせたが、すぐに落ち着きを取り戻した様子で、こちらをまじまじと見ていた。
「………ああ、えっと、俺は…取り敢えず、部屋に居ることにするよ…。
ちょっと、考えたい事があるからさ…。」
断るのは申し訳ないな、と思ったが、なんだかそういった気分になれなかったので、俺はそう二人に伝え、部屋に向かった。
…断った後の二人の顔を見る勇気は出なかったので、一切振り向かずに。
「…ああ、やっぱり、ちょっと申し訳ない事をしたかな…。」
部屋に入った後、俺は、すぐその場にしゃがみこんだ。
「…いや、ダメだ、断ったのなら、しっかり今やらなくてはならない事を、やらないと…。」
しかし、少し考えて、取り敢えず体幹トレーニングをしてみる事にした。
…この行動を選択した意味は、特に無い。
今までや、これからの物事を考えるのに、集中出来るんじゃないかと思ったから、やっているだけだ。
…どうやって元依頼主のようなモンスターを倒せばいいのだろうか。
…池にいるモンスターが元依頼主とは限らないが、元依頼主と同じような能力を持っているモンスターかもしれない。
…違うのであればらそれはそれでいいが、元依頼主だと考えておいた方がいいだろう。
…もう、明日の朝なんだもんな…。
…ギリギリまで戦って、トドメは別の人に刺してもらう…なんて、その方法はもちろん良くないだろう。
そうやって、ずっと逃げ続ける訳にはいかない。
…俺は…モンスターが倒せないわけじゃないんだよな。
…いや、元依頼主の事も、自覚したのは最近だったが…。
…元依頼主のようなモンスターが倒せないと、今まで、気づけなかったのは…レベルアップ施設などのモンスターが、シュワッと消えていたから…か?
…シュワッと消える…。
「消滅…って、ダメだダメだ。」
俺は、心の中で、消滅する死を寛容できるなら、死んだのか、直前でかわして逃げたのか、分からない威力の強い魔法か、相手を消滅させる魔法をリプラに教えて貰って、使おうかと考えてしまったが、なんだかそれはやっちゃいけない気がする。
「…でも…。」
俺は、部屋のドアを少し開け、周りに誰もいない事を確認した後、部屋の隅でこっそりスマホを開いた。
「…あくまでも、魔王軍などに、そういった魔法を持っている者が居るのか…調べるだけ…。」
と、言い訳をしながら、俺は『消滅させる魔法』というワードで検索をかけてみた。
「…えっ!?」
そんなキーワードで一番上に出てきたのは、『存在が確定しつつある禁術 五選』という恐ろしいまとめ記事だった。
…禁術について少し気になった俺は、記事を見てみることにした。
「…何々?…この世界には、様々な理由で封印された魔法が沢山あると思われる。
…この記事では、今、存在が確定しつつある五つの禁術について紹介する。
…一つ目は、『死の禁術』…!?
最初から、とんでもない名前の魔法が出てきたな。
………なるほど。」
…死の禁術は、死、というよりは、蘇生の魔法のようだった。
この魔法は、生まれてすぐに禁術の扱いになり、消されてしまったが、誰かが復活させたという噂があるらしい。
…まあ、当然だろうな。…人を生き返らせる事ができる魔法なんて、消されなかったら大変な事になるだろうし…。
…誰かが、復活させた…もしそれが本当であれば、今この世界に禁術を使える者が居たりするのだろうか。
「…後は、滅の禁術…呪の禁術…闇の禁術…愛の…禁術…?
…禁術は他にもあるらしいけど、存在が怪しいのか…。」
まあ、ここに書いてある禁術も、存在が確定しつつあると書いてあるだけで、本当に存在するとは書かれていないが…。
…しかしなんだか、知っちゃいけない事を知っちゃったような気がするな…。
禁術は一度消されたものや、威力がありすぎて創造主が封印したものが多いようだった。
…ここに書いてある、滅の魔法が、どうやら、俺が検索した消滅させる魔法に当たるようだな…。
「………。」
俺は、画面を、そっとホーム画面に戻した。
「…これは見なかったことにして、なんとかこう…上手く出来ないか考えてみよう。」
…俺は、体幹トレーニングを止め、寝転がって天井を見た。
…どうやって元依頼主を倒そうか。
…なんて…どんなに考えて、方法が思いついたとしても、きっと、その方法を実行して、元依頼主を倒したら、後悔は絶対に残る。
…だからといって、やらなくても後悔するけども。
…でも、考えずにはいられない。
なんとか……何とかいい方法は無いのだろうかと……。
「ツイト様…。」
「…えっ、あー、リプラ!?」
そんな事を考えていると、ドアの方から、リプラの声が聞こえた。
「…どうかされましたか?
…この街に来た時から、様子が少し、おかしいようですが…。」
「…ああ、別に、問題ないよ。」
「…………部屋に入っても、よろしいでしょうか?」
「…えっ、まあ、うん。」
俺は、リプラの言葉を不思議に思ったが、ドアを開ける事にした。
「…えっと、リプラ……あっ、カラリ…。
…どうしたの?」
「…それはこっちのセリフですよ、ツイトさん!
……もしかして、いえ、絶対に、池のモンスターの事を気にしているんですよね!」
「…えっ、そんな事はないよ、ちょっと、体幹トレーニングがしたいなぁ…って、思っていただけで…。」
「…………むっ。」
「…えーと、はい、そうです…。」
誤魔化そうとしたが、カラリが、嘘をつかないで下さい、というような眼差しでこちらをみていたので、仕方なく俺は、二人に正直に打ち明けた。
「…えっと、私、なんて言っていいか分からないんですけど、ツイトさんは…強い気持ちを持っていて…。
それは、当たり前の事ではなくて…。
…えーっと、それで………。」
カラリは、俺を傷つけないようにと言葉を選んでいるようだった。
「…ありがとうカラリ。
うん、何となく、言いたい事は伝わったよ。」
「…ツイト様は、これから、どうするつもりですか?」
「…どう…?」
「…池のモンスターについて調べてみた所、大体は森にいるものと同じでしたが、水の魔法を使うものも居るようでした。
…そして、元依頼主と似たような能力を持ったモンスターも居るようです。
…少々、対策をしておいた方が良いのではないか、という事です。」
…つまり、池にいるモンスターは、ほぼ、元依頼主だという事が確定した、という事か?
「…元依頼主と似たような能力…擬態と分身?
それが、魔王の影響を受けたっていうモンスター?」
「…いえ、池にいる、魔王の影響を受けたモンスターとは別に、分身ができるモンスターがいる、という事です。
…擬態は…どうでしょう、まだ分かりませんね。
…しかし、その、分身ができるモンスターが魔王の影響を受けたと考えれば…元依頼主という可能性は、高いかもしれません。」
「…なるほど、えっと、対策は…したい。
…今のままじゃ、どうにもできないから…。」
リプラは、その言葉を聞くと、頷いて、俺の腕をガッチリと掴んだ。
「…えっ?」
「…先程のツイト様の様子を見て、少々、カラリさんと話し合ったのです。
…一緒に、対策を考えましょう。
…時間は、まだあります、一人でずっと考えているのは、身体に悪いですよ。」
「…あっでも…。」
「…さあ、行きましょう、ツイトさん!」
「…う、うん…?」
俺は、二人に連れられるがまま、共有スペースに向かう事になった。
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「…えっと、それで、対策というのは…。」
「…そうです、元依頼主の対策ですね。
…元依頼主でなくとも、擬態ができるモンスターはいると思われますが、バイトさんから貰った情報と、私が調べた情報を照らし合わせた結果、先程も言った通り、分身ができるモンスターがいる、という事が分かり、魔王の影響を受けたモンスターが、元依頼主である可能性は高くなりました。
…もし、元依頼主でなくとも、おそらく池にいるモンスターは、元依頼主の下位互換的なものだと思われるので、対策して損は無いはずです。」
「…ツイトさん、取り敢えず、今までの元依頼主の使った魔法や、言動を思い出してみましょう!」
「…う、うん…まずは…森で…沈黙を…。」
俺達は、元依頼主がやってきた事を一つずつ思い出し、元依頼主について、まとめ、対策をする事にしたのだった。
今回も、読んで下さりありがとうございます。
…禁術………。
次回も良かったら見て下さい!




