第33話 街へ
「…セクタはな…まあ、ここに来るまでに、見て来たのかもしれないが…良く言えば、何でも吸収する…悪くいえば、他人の影響を受けやすい子なんだ。」
「…なるほど…?」
…まあ、確かに、本当に最初に、セクタと出会った時、セクタは、お父さんからの電話であのガラの悪い人達の復讐の話を聞いて、冒険する事に興味を持った、というニュアンスの事言っていたからな。
…まあ、あの時のセクタが言ったことが本心なのかは分からないが。
…その後は、元依頼主の影響…と言っていいのかは分からないが、冒険での辛いことを、考えていたようだし…。
そういうことなんだろうか。
「ここに居た頃、セクタは、次の社長になってくれ、というお願いも、注意も、何もかも素直に聞いてくれていたんだ。
…資料を渡せば、この会社の社長としてやって行くための勉強もしてくれた。
…だから、今まで、こういった言い争いをした事はなかったんだ。」
「…なるほど…でも、確かセクタって9歳でしたよね…。
…それより前となると…社長としてやって行くための勉強をするには…早かったんじゃないですか?」
「…ああ、私も、早いと思っていたよ。
…しかし、試しに資料を渡してみたら、予想以上に覚えるものだからね…つい、続けてしまったんだ。
…やめたい、という事も、一切言わなかったからね…。
…今考えると、それも、間違っていたのかもしれないけれども。」
「…な、なるほど…。」
…セクタって、そんな才能があったのか…。
…今考えてみると、確かに、リムさんも、高速移動の極意を教えたら、結構習得できていた…と、言っていたような…。
「…まあ、つまり何が言いたいかといえば…セクタは、本気でツイト君に着いていきたいと思っていると分かった、という事だ。」
俺がそんな事を考えていると、トラックさんは、そう言いながら真剣な顔でこちらを見ていた。
…セクタが、俺に着いていきたいと思っている?
…間違いではないと思うが、そうなのか?
俺について行きたいというより、冒険の楽しさを知って、冒険がしたいと思っただけなんじゃないのか…?
と、俺が思っていると、それを察したのか、トラックさんは寂しそうな顔をしながら、微笑み、言葉を続けた。
「…先程も言った通り、私とセクタは、今まで一切言い争いをした事がなかった。
…それは、今までセクタが、私の言う事を、文句のひとつもなく受け入れてくれたからだ。
…私は……受け入れてくれているなら、セクタも、私が言った事を望んでいるんじゃないかと…勝手に思っていたんだ。
…でも、ツイト君に、旅行に行きたいと言っていたセクタが偽物かもしれないと伝えられた時…私は、その考えが本当に正しいのか、疑問に思った。
私は、セクタをしっかりと見ていなかった。
…もっと、セクタの事を…セクタの話を聞いていれば、偽物なんて、すぐに分かったはずだ。
セクタも、もっと話をしていれば、と思っていた事が分かったが…。」
「………。」
…つまりは、どう思っていたかは分からないが、セクタはトラックさんが言う事に盲信的になっていて、トラックさんは、進めれば何でもやるから、それがやりたい事だと誤解していたという事だろうか。
…そして、セクタが偽物かもしれない、となった時に、「私は本当にセクタがやりたい事をやらせてきたのか」と、疑問に思ったわけだな。
…俺がボーッとそう考えていると、トラックさんが突然、喜びとも悲しみとも取れる表情でこちらを見た。
「…それでね、ツイト君。」
「あっ、は、はい!」
「…初めてだったんだよ、セクタが、あんな風に叫ぶなんて。
…ツイト君に出会ってから、何があったのかは分からないが、ツイト君がセクタの何かを変えた事は確かだ。
…君が勇者だと分かった時、私は、君の事を『勇者』と呼ぶか迷ったんだ…しかし、セクタの友達を『勇者』と呼ぶなんてよそよそしいじゃないか。
…また、私は、他でもないツイト君に感謝している。
…もし、勇者が他の人であれば、私は、セクタの本心が、ずっと分からなかったかもしれない。
…だから、私はツイト君を、続けてツイト君と呼ぶ事にしたんだ。」
「…ありがとうございます。…あ、でも、セクタは、俺の事を勇者さん…って呼びますけど。」
…俺は、セクタの友達というところに若干引っかかったが、そう感謝の言葉と疑問を述べた。
…勇者が他の人だったら、セクタの本心がずっと分からなかったかもしれない、か…。
…どうなんだろうな。
「…セクタがツイト君の事をそう呼ぶのは、きっと周りの事を気にしているんだろう。」
…そういえば、初めてカラリと会った時も、カラリにもそういった話をされたよな…。
…周りって、誰なんだろう。…一体、なんの周りなんだ…?
SNSでの周りだろうか。
…そんな事を考えていると、トラックさんは話を続けた。
「…セクタも、きっと、ツイト君が勇者ではなかったら、着いて行ってはいないんじゃないかと、私は思っている。」
「…えっ?…でも、セクタはその…冒険がしたかった様なので…。
それは大袈裟なんじゃ…。」
「…いや、大袈裟ではないよ。
…ツイト君も言っていただろう、セクタは迷っていたみたいだが、話し合った結果、冒険の辛い事などは、仲間がいれば、乗り越えていけるんじゃないかという結論になった…と。
…セクタがそう思えたのは、ツイト君や、他の皆が話し合ってくれたからだろう?」
「…………。」
…確かに、俺はこのままここに留まるのが、セクタが本当に望んでいる事なのか、と聞いたが…。
…話し合ってくれたから…。大袈裟ではない…。
「…実は、最初にセクタの気持ちが分かったあの時、半分くらいは、冒険に行っても、問題ないんじゃないかとは思っていたんだ。
…でも、今まで、本心と本心をぶつけ合った事もなく、旅行の事もあった為、ああしたんだ。」
「…それで…あの叫びを聞いて、本心だという事を確信して、冒険する事を許したという事ですか?」
「…ああ、本心だと確信したと言うよりは…なんと言っていいのか、本心で無いとは思っていなかったが…まあ、少々試したという事だ。
…まあ、これまで、色々と言ってきたが…つまり、これからセクタを、よろしくお願いします…という事だ。
…いくらセクタが乗り越えられると思っていても、冒険に危険があるという事には変わりない。
…セクタが、危ない事をしそうになったら、全力で止めてくれ。」
「…はい。」
「私が伝えたい事は全て言った…引き止めて悪かったね…。
…じゃあ、機会があれば、また…。」
トラックさんは、最後にそう言って、去っていった。
「……………。」
俺も、トラックさんがいなくなるのを待ってから、おそらく、皆がいるであろう空き部屋に向かったのだった。
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「…あっ、勇者様ー、おかえりー。」
空き部屋に戻ると、イーネさんが、何食わぬ顔で俺を迎えた。
「…ああ、勇者さん…お、おかえり。
…セクタ君は、荷物を取りに行ったわよ。」
「………………会社の前で、待っていて欲しい、という事だ。」
「…では、早速向かいましょう。」
…リムさんやブロックさん、リプラはそう言うと、部屋の外に出ようとしていたのだが、カラリは、何やら申し訳なさそうな顔をしていた。
「あの…ツイトさん…置いて行ったみたいになってしまって…ごめんなさい。」
カラリは、部屋から出る前に、俺にそう謝った。
「…私も、ツイト様が何らかの理由で走って来れない事を想定していなかったので…本当に申し訳ないです。」
リプラも、カラリに続いた。
「…ああ、いや、気にしていないよ、俺だって、まさか転んじゃうなんて、思っていなかったし…。」
「…そうそう、転ぶっていうのは、勇者様に非があると思うんだよねー、だから、問題ないよ。」
「…………。」
…俺が話そうとすると、イーネさんが、悪い笑みを浮かべてそう被せてきた。
…いや、まあ、なんだ。…確かに、転んだ俺が悪いとは思うが…イーネさんには言われたくない、という感情が溢れてきている気がする。
「…でも、イーネさんは完全に置いて行くつもりで逃げましたよね?」
「あー、あー、ほら、セクタ君が準備を終わして、会社の前で待ってるかもしれないぞ、すぐ向かおうじゃないか。」
イーネさんはそう言い残し、素早く部屋から出て、おそらく、会社の外へ向かった。
…完全に、話を逸らされた…。
…イーネさんは、置いて行くつもりだったのか…。
「…さすがにリムさんは…あれ、もういない。」
俺は、リムさんに、さすがにリムさんは、置いて行くつもりでは無かったですよね、と聞こうとしたのだが、そこにはもういなかった。
「…素早いな…まあ、聞くまでもない事か…。」
…俺は、まあ、さすがに、置いて行くつもりでは無かったのだろう、結果的に置いていったことになってしまったが、対応できなかっただけか、実行できなかっただけだろうと思い、廊下へ出て、会社の前へ向かったのだった。
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「…セクタ、遅いな…。」
…会社の前まで来たが、そこにまだセクタは居なかったため、ずっと待っているのだが、何だか、来る様子がない。
「…準備に、時間がかかっているのでしょうか。」
「…でも、薬屋に行く前も軽く準備はしていたわよ…?
…こんなに時間がかかるものかしら…?」
「…何かあったのかな。…………っ!」
…そう皆で話していると、会社の中から、足音が聞こえてきた気がした。
「…来たみたい。」
「…!」
俺のその声で皆も会社の方を見た。
「…あっ…勇者さん…皆…待たせちゃって…ごめんなさい…。」
しばらく待っていると、そう言いながら、ガチャガチャと音を立て、フル装備のセクタが会社から出てきた。
「…えっ!?」
「…お父さんが…持って行った方がいいって…。」
「…いやあ…まあ…今つけている必要は…無いんじゃないかな…。
…えっと…それって…どうなってるの?…暑くない?」
「…いや、暑くはないけど…ちょっと、息苦しいかもしれない…。」
「…それはまずいわ!早く外しましょう!」
セクタが、フラフラとし始めたので、急いで、皆の力を借りて、セクタの装備を外した。
「…迷惑をかけてしまって…ごめんなさい…。」
リプラがセクタの装備をしまっていると、セクタは申し訳なさそうに頭を下げた。
「…いや、大丈夫だよ…。」
それにしても…トラックさん、偽物のセクタの事もあってか、かなり慎重になっているな…。
…何だろうか、この装備は…見るからに高そうなんだが。
こんな装備を一式、揃えられるなんて…。
…待てよ、もしかすると、トラックさん、他にも何か持たせていたりするのか…?
「…そういえば、セクタ、トラックさんに持たせてもらったものは装備だけなの?」
「…ああ、いや、これ…。」
俺がそう聞くと、セクタはそっと紙の束のようなものを出した。
…札束っぽいけど、この世界にそういった紙幣のようなものは…あるのだろうか?
…と、一番上に乗っている紙を確認すると、模様があった。
その模様は、お札のようだった。
…何だか見覚えのあるお札のような気がするが、いつ見たものだろうか。
「…こちらは、魔除けのお札ですね。」
俺がそんなことを考えていると、リプラがそれを察したのか、説明してくれた。
…そういえば、そんな感じのものだったっけ。
…確かリプラが…使っていたような気がする。
「…それで、こんなに沢山…貰ったの?」
「…う、うん…。」
セクタは、お札をリプラに渡しながらそう答えた。
「…あ、これも…。」
「…えっ?まだ何かあるの!?」
その後もセクタは、大量の魔石や、大量の便利アイテムのようなものを出し続け、リプラにしまってもらっていた。
「…それで…これで全部かな…。」
セクタが、ものを出し終えて、そう言った時、イーネさんを除いた皆は、やっと終わったか…という顔をしていた。
…いや、トラックさん…流石に心配し過ぎだろ…!
…セクタが本気だったから、冒険するのを許しはしたが、やはり、出来る限りの事はやっておこうと思ったのだろうか。
「…いやぁ、セクタ君…まあ、これからも仲良くしよう。」
イーネさんは、ニコニコとしながらセクタに近づき、手を握っていた。
…イーネさん…完全に、金銭的な面でそう思っただろ…。
「…えっと…じゃあ、ここで、色々あったけど…リカバリー街に、戻るんだよね…。」
「…はい、そうですね。」
…ここも割と短い間だったけど…やっぱり、離れるとなると、何だか、名残惜しい気がするな。
…いや、リカバリー街に行って、すべき事が終わったら、またここに戻ってくる可能性は高いけども…その時は、この会社に回ることは、多分無いだろう。
……。
…しかし、そうも言ってられないよな、池に早く行った方がいいだろう。
「…お待ちください。」
…と、リカバリー街の方に足を向けると、背後からデュアルさんの声が聞こえた。
「…?」
「…セクタさん…出発される前に、言っておく事があります。
…正直、あなたのお父様がこういった選択をされた事は驚きました。
…しかし、社長がそう選択するのであれば、その判断を無下にする事は出来ません。
そのため、私は…セクタさん含め皆様を、明るく見送りたいと思います。
…では、セクタさん…今度こそ、お土産話、私にも聞かせてくださいね。」
デュアルさんはそう言い、会社の方へ去ろうとしていたのだが、セクタは、その様子を見て、不思議そうな顔をして、呟いた。
「…つまり、どういう事?」
「…ええ、ああ、お土産話を聞かせてください、という事ですよ。
…ええ。」
「…?」
「……。」
「………………。」
俺は、その発言を聞き、もしかすると、デュアルさんは、お土産話が聞きたい事よりも、もっと言わなければならないことがあるのではないか、と思った。
「…デュアルさん…まあ、違うかもしれませんが、セクタに…本当はもっと言いたいことがあるのではないですか?」
俺は、多分そうだろう、と思いつつデュアルさんにそう聞いてみた。
「…まさか、そんな事はないですよ。
…冒険に行く事になったのは、驚きましたが、私は、トラック社長の意思に従うだけです。
…そのため、明るく見送ろうと思っただけです。」
デュアルさんは、顔色ひとつ変えず淡々とそう語った。
「……………。」
これは…つまり、『冒険に行く事になったのは驚いたが、行く事になったのなら応援する』と、そういう事だろうか。
「…?」
セクタは、不思議そうな顔をしたままだった。
「…えーっと、と、とにかく、見送る、と…。」
「…ええ、では、機会があれば、また。」
「…ああ、ありがとう…ございました…。」
「……………旅行…。」
去り際にデュアルさんは、意味深な事を呟いて、いなくなった。
…何だろうか、なんだか腑に落ちないな。
デュアルさんが言いたかった事は、本当にさっき言った事だけだったのだろうか。
…旅行…って言っていたよな、旅行といえば、デュアルさんも最初は、セクタが旅行に行っていたと思っていたんだよな…。
確か、「旅行は楽しめましたか?」と言った後、俺たちの方を見て、「もしかして、ご友人の方も連れて旅行へ行ったのですか?」と言ったはずだよな。
…そういえば、トラックさんは、「セクタが友達と一緒に旅行すると言った」、と言っていたよな…。
…トラックさんは、セクタに友達が出来た、と喜んでいたらしいから、きっと、友達と旅行するらしいと言う事は、旅行するという事を聞いたのであれば、知っているはず…。
つまり、デュアルさんは、何らかの理由で、友達と一緒に、という事を聞き逃したんじゃないかと考えられる…。
友達という単語を聞き逃したのであれば、旅行という単語に何かあったに違いない、さっきも呟いていたから、それはそうなんだろう。
…デュアルさんは、もしかすると、旅行がしたかったのではないか?
…セクタが、旅行に行ったのが羨ましく、詳細をあまり聞いていなかったんじゃないだろうか。
……………なんて、まさか、そんな事はないだろう。
単純に、旅行していたと勘違いしていた事を、謝っておきたかったとか、そういう事だろう。
…仕事が忙しくて、セクタの旅行の事は、あまり聞いていなかった、と…そうだよな?
流石に、今考えていた事ではないだろう。
…うん、きっと。
俺がそんな事を考えていると、リプラが、「では…」と、話を始めた。
「…リカバリー街の池に行く道の呪いが解けたのか、確かめに行き、解けていなかった場合は、もう一度、リカバリー街の宿に連絡し、そこに一旦泊まりましょう。」
「…ああ、それなら、呪いの確認は私がやっておくわ。
…おそらく、勇者さん達がリカバリー街に着いたあたりで、合流できると思うわ。」
リプラの言葉に、そう答えると、リムさんは一瞬にして目の前から姿を消した。
「…早っ!……………。」
俺は、リムさんが消えた後、何気なくブロックさんの方を見た。
「………………何故こちらを見る。」
ブロックさんは、少し困ったような顔をしていたが、こちらに気が付くと、さらに表情を曇らせた。
「…ああ、いや、何でもない何でもない…。」
「………………本当か?」
「…うん…そうだよ。」
「…………………。」
俺がそう言うと、ブロックさんは納得がいかないような顔をしながら、渋々歩き始めた。
…俺は、心の奥底で、暖かい笑みを浮かべながら、歩き始めたのだった。
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「待ってましたよ!勇者様!」
「…元依頼……じゃない、バイトさん、どうしてここに…。」
「…お見送りです!やはり、待っていられなくて…。」
…と、歩いて、リーディングシティを抜けようとした時、都市の出入口で、なにやらバイトさんが待っていた様子だった。
…いや、待っているのは構わないんだが、何故、今、リカバリー街に戻るという事を知っているのだろうか。
…まあ、リカバリー街の池の事を聞いたから、リカバリー街に行くという事には気づいたかもしれないが、タイミングまでは分からないはずだろう。
「…あの、どうして、俺達が、今、リカバリー街へ行こうとしていたという事が、分かったんですか?」
「…ああ、社長に連絡をした時、何だか、悲しい声色だったんで、何かありましたか?よかったら相談に乗りますよ、と言ったところ、セクタさんが、冒険に行ったと聞いたので…急いでここに来て、待っていれば、間に合うんじゃないかと思って!来たんです!」
…確かに、バイトさんがいつトラックさんと話していたのかはわからないが、セクタを待つ時間と重装備を剥がすのに、結構時間を使ったから、つじつまは…まあ、合うのか?
「…でも、待ってましたよね。
もし俺達が先に行っていたらどうするつもりだったんですか?」
「しばらく待って、来ないのであれば、帰るつもりでした!」
「…ああ、そ、そうなんですか。」
確証が持てない事に、そこまでするなんて…熱意が有り余ってるな…。
いや、無謀…と言った方がいいのか?
「…勇者様…俺、勇者様と別れた後、考えたんです。
…そして、思いつきました…。
…俺は、池に、どんなモンスターが、どの辺に生息しているかを、大体知っています。
…俺なら、案内できるんじゃないかと…。」
バイトさんは、目をキラキラと輝かせながら俺にそう訴えた。
「…えっ、あー。」
確か、リプラは元依頼主と区別がつかないから、連れて行かない方がいいって言っていたよな…。
実際、俺も一瞬、元依頼主かと思ったし…。
…でも、なんだか、断りづらいな…。
…そう思っていると、俺とバイトさんの間に、サッとリプラが入ってきた。
「…では、こちらに紙があるので、大体の生息地を描いてください。
…データがあるのであれば、それでもよろしいですよ?」
「…えっ、あっ、ああ、じゃあ、データで…。」
バイトさんは、悲しそうにスマホを取り出していた。
…リプラ…躊躇なくそんな事を言えるだなんて…。
しかし、間違ってケガをさせてしまう訳にはいかない。
…バイトさん、申し訳ないけども、仕方がないんだ。
「…はい、確かに、データが入っていますね。
では、ありがとうございました、バイトさん。」
「…あっ、いえ、では…。」
バイトさんは、データを送り終わると、名残惜しそうにこちらに背を向けて、去っていった。
…その背中は、やはりどこか、寂しそうだった。
「バイトさん…。」
「では、情報も手に入った事ですし、リカバリー街に戻りましょう。」
「なあ、ちょっとそのデータ、見せてくれねぇか?」
「イーネさん……まあ、いいですよ。」
「…なんだ、まあ、って。」
「「「…えっ。」」」
…俺やカラリやブロックさんは、バイトさんの方を見ていたのだが、リプラやイーネさんは、一切バイトさんの方を気にせず、リカバリー街へ行こうとしていた。
「…ツイト様…期待をさせてはいけません。
…行くのです。」
「…まあ、私はどうでもいいかなーって。」
俺達が、驚きの声を上げると、二人は振り返った。
「…あっ、そっか…。」
二人は、一言だけ残して、また、リカバリー街の方に歩を進めた。
俺達も、深く考えないことにして二人の後に続いたのだった。
今回も読んでくださりありがとうございます。
ツイトは名探偵なのか…?
次回も良かったら見てください!




