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第26話 主神ドリルを模倣するのじゃ!

 


 他の人たちが笑った目で私を見ている。


 私は回った!


 そう、まるで自身がドリルになったかのように、斜めから水面を突き破り、まわりながら息継ぎをしてまた沈んでいく。


 「なっ!」


 コーチの目が釘付けになっている。


 「これぞわれらが主神が授けし伝統の技、フレクシス掘削機スペシャルじゃ!」


 「何が掘削機だボケーーーーー!」


 「ああ、首長がなぜごりごりというひじのひんまがる音はするのに、国語の教科書に載っている「メキメキと」という効果音が実現しないのかと艱難辛苦にさいなまれる作文が苦手な坊やに、地べたに這いつくばっている掃除のおばちゃんが『そんなことに気を遣っているほど暇ならスモモのドリンク買ってこい! 今すぐにだ! 英語でライ・ナウ!』と文句を垂れるように水の底に沈んでいく!」


 久々に登場したゼノムスが満足気にその様子を実況した。


 「せっかくだから、この女性の様子も実況しましょう。」とメイゲス。


 「ああ、ベジタリアンのくせにやざくれて健康に反したタバコを吸いまくっているという行為を繰り返すホームレスが、拾ってきたミニトマトを落としたために、丸くておいしそうだった身が、地ならしのおやじが小刻みに上下させる機械の隙間に入ったため、グチャチャチャチャチャチャというみだらな音を発した後に、もはやパパパパパパパパンと乾燥した音を響かせるように女性が回転して余分な脂肪を燃焼させていく!」


 私は確かにその時泳いでいた。


 でも、それはやせなくちゃとか、この人たちを見返してやりたいとかじゃない。


 こんなに自分が楽しめたことって、ホントに久しぶりだって思えたことが不思議だった。


 そのとき、このおじいちゃんはタダ者じゃないって、私は気が付いた。


 「河野。 はははっ、何だその泳ぎ方は。 自己流か?」


 「はい。 船のスクリューをイメージしました!」


 よく見るとコーチも笑っている。


 普通なら、そんなやり方認めない、ちゃんとやれって言いそうなのに…。


 そうか、そうだったんだ、コーチも水泳が好きだから笑ってるんだ。


 この人には泳ぐことの楽しさが理解できているんだ、だから!


 「おじいちゃん!」


 「なんじゃ。」


 私は思い切り息を吸って、このおじいちゃんの手を握って思いを口にした。


 「おじいちゃんの仲間に入れてください! 私、あなたからもっと多くのことを学びたいんです。 だから見返りになんでもお手伝いします!」


 とんでもないことになった。


 じじいの野心に満ちた笑いが、俺をそのとき震撼させたのだった。


 

 寒い日々が続くからこそ、ドリルの放熱で冷たい壁をぶち壊すような覚悟を抱いてもよいのでは、と最近思いました。

 そろそろこれを読んでいるあなたのタフ度も限界? いやいや、私はもっとタフな人を知っています。一体この人はどんな頭の構造をしているというくらいに笑っています。そんな人を見ると励まされて思います、私もまだまだ行ける、と。

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