十年前の事件
十年前の事件の全容と、そこに隠された陰謀とは?
登場人物
伊水亮:大学二回生 鵜飼渚:同じ大学の同級生
鵜飼渚の話はミステリマニアの僕にとっては普遍的な事件に感じられた。
それは都内の中では比較的人気が少ない飲食店で起こった事件であった。事件は閉店間際の店内で起こった。
客はこの店に約二年前から通っている常連で、店長とは大学時代からの友人であった。
客の名前は高田純次、店長の名前は藤本京介というらしい。高田と藤本ははじめは親しげに話していたが、
高田の一言が引き金となって次第にエスカレートし、二人は揉み合いとなり、
何らかの弾みにコンロの火が店に置いてあったプロパンガスに引火して爆発した。
爆発の威力は鉄骨の骨組みのみになるほど凄まじいものだった。店にいた客や従業員は全員死亡。
警察は当初爆発事故として調査していたが、不自然な点はいくつもあった。
店には当時二人を除いて三人の従業員と二人の客がいた。そして、従業員の一人と客の一人はかつて
土木業に勤めており、揉み合いになっていた二人より遥かに大柄だったらしい。
揉み合いになった二人を止めることはできなかったのかというのが一つ目の不審点だった。また、
店は安全性の観点からプロパンガスは厨房から離れた別の倉庫に置いてあり、
倉庫の鍵は店の引き出しに入れてあったらしい。なのになぜプロパンガスに引火する事態となったのか。
これらの不審点を当然警察は見逃さず、事件の可能性も視野に入れて考え始めた。
捜査の後にある人物に辿り着いた。その人物は事件が起こった日の3ヶ月前にアルバイトを辞めた、
長谷部佳代という女性だった。警察は従業員や店長のことを調べるために長谷部佳代に質問を重ねていった。
もちろん疑いの目を向けながら。事件から三日たった後、長谷部は自首した。
長谷部の話によると事件当日に店を訪れて倉庫の鍵を盗み、代わりに型をとった偽の鍵を置いておき、
倉庫から盗み出したプロパンガスを厨房の普段使われていない棚に入れ、
店長と客が口論になっている間に火をつけたライターを投げいれ、その場を離れたらしい。
その5分後くらいに爆発が起こったという。
その証拠に彼女は倉庫の鍵を持っていた。焦りと罪悪感に頭を支配され、もとに戻すのを忘れたらしい。
店は時間帯や人気の少ない地域に位置していたことから、彼女を目撃した人はいなかった。
警察は彼女をこの事件の犯人としてことを進めていったが移送中に突如暴れて逃走、
その後近くの海で溺死体として見つかった。
--ここまでが鵜飼渚が話した十年前の事件の全容だ。話始めの快活な表情とは裏腹に、
鵜飼渚の顔に時折哀しみの表情が溢れたことを伊水は見逃さなかった。
「それで相談って?」伊水が訊くと鵜飼渚は真剣な眼差しでこう答えた。「この事件の再調査がしたい」--
十年前の事件とは何なのか、その全容を書きましたがいかがだったでしょうか。
この事件が物語全般に置いて非常に重要な事件となります。楽しんでいただければ幸いです。
続編をお待ちください。




