全ての始まり
皆さん初めまして、慶燈です。これは僕が初めて執筆したミステリ小説のエピソード1です。これから不定期ですが投稿していこうと思っています。拙い文章ですが楽しんでいただけば幸いです。続きが気になる方はぜひブックマークの登録よろしくお願いします。
登場人物
伊水亮:紅奏大学二回生 鵜飼渚:伊水の同級生 小瀬教授:物理学の教授 多田教授:化学の教授
--「道を開けてください!」看護師たちのけたたましい声が廊下に響き渡る。
オペ室へと運ばれる最中、意識が朦朧としている伊水亮の頭の中である言葉が反芻される。
「ありがとう…」
それは彼が最後に記憶していた言葉だった。--
「然るにこの問題の解答は…」紅奏大学の2回生である伊水亮は「超伝導の利用と課題点」の講義中、
ずっと落ち着きがなかった。それは明日が彼にとって人生で最も大事な日だからだ。
ガリレオシリーズ最新作の発売日である。彼が理工学部に進学したのはガリレオの大ファンだからだ。
彼が小学5年生の読書感想文に選んだ本は彼の人生に大きな影響を与えた。
もちろん当時は意味もよく理解できなかったが、頭脳明晰なガリレオに非常に惹かれ、
彼が最も尊敬する人物の一人となった。
「今回の講義はこれにて終了とします」小瀬教授の声が教室中に響き渡った後、
彼は化学の多田教授がいる第三研究室へと向かった。階段を登っていると、ある女性の声が聞こえた。
廊下で会話しているようだ。「この突起はなぜ必要なのですか?」「いい着眼点だ。それはね…ああ!伊水君」
多田教授は伊水が来ていたことに気がついた。「多田教授、お話というのはなんでしょう」伊水が訊く。
「そのことなんだけど、すまないが5分くらい部屋の中で待っていてくれないか。彼女が質問をしに来ていて、
もう少しで説明し終わるところなんだ。」伊水はこれは20分はかかるかもな、と心の中で思いながら答えた。
「分かりました。課題があるのでそれを終わらしときます。」そう言い残し彼は研究室に入っていった。
教授と話していた女性は伊水と同じく2回生の鵜飼渚だ。伊水とはほとんど話したことはないが、
彼が密かに恋心を抱いている相手である。「君は確か法学部だったよね。なぜこんなことを聞きに来たんだい?」伊水は部屋の中から二人の会話を聞いていた。「実は最近ある事件の資料を読んでいて、
こういう知識も将来役立つかもしれないと思いまして。」鵜飼渚の声は小川のせせらぎのように透き通っている、そんなふうに伊水は感じた。
伊水は超伝導の実用例について調べ始めた。先ほどの講義で出た課題だ。「遅くなってしまってすまないね。
説明に熱が入ってしまって。」多田教授の声で伊水ははっとした。
彼は集中すると自分だけの世界に入ってしまうことがよくある。伊水は壁に掛けられている時計を見上げた。
部屋に入ってから30分経っていた。上がってきたため息を寸前で抑えながら伊水は訊いた。
「話というのはなんでしょうか?」「前に実験をしただろう。その時に出した問い12の答えがAではなく、
正しくはCだったんだ。明後日はテストだろ?これは一刻も早く伝えとかないとと思ってね。」
伊水は頭の中に浮かんだありとあらゆる感情を抑えつけ、「わざわざありがとうございます」と言って、
苛立ちを隠しながら研究室を後にした。
食堂へと向かった伊水は先ほど教授と話していた鵜飼渚が一人で昼食をとっていることに気がついた。
ぼうっと眺めていると彼女と目があってしまった。「まずい」伊水が慌てて目を逸らしていると、
彼女は僕の目の前の席に移ってきた。「伊水君だよね?多田教授からいつも君の話を聞いてて、
君ミステリが好きなんだよね?君に相談したいことがあるんだ。聞いてくれる?」
鵜飼渚は人見知りの伊水とは正反対な人間である。伊水は状況が飲み込めなかったが、
鵜飼渚の勢いに押されて小さく「うん」と答えた。彼女は10年前に起きたとある事件のことについて話し始めた。今思えばこれが全ての始まりだった。




