シナリオ4ーくろがねの城
暦の上ではもう秋に差し掛かろうという頃。しかしまだまだ残暑は厳しく、猛烈な豪雨の後の湿気で本のページも歪んでしまいそうなので、ジョー先輩の部屋のクーラーは全力の除湿運転であった。
「この間のゲームのリベンジさせてくださいよ」
「いや、今日はこれをやろう。この間買ったやつなんだが、ようやく説明書が日本語訳できたんだ」
ジョー先輩はゲームの為なら苦労を厭わない。もくもくと英語マニュアルを翻訳アプリに掛けてプレイヤーに配るための説明書を作ってくれる。
ゲームの準備をしているうちに、本日の参加者が集まってきた。やりたいゲームのリクエストが通らないのは、もういつものことだ。
「ちーっす、お、早いですね」
「こんにちはぁ、今日も暑いですね。これ、おやつここに置いときますので勝手に食べてね」
「地図タイルがやたらありますね。マップ作っていくゲームですか。カルカソンヌみたいな」
テーブルの周りに座布団を配っていると、先輩はさっそくゲームの説明を開始した。
「マップを作るゲームではあるけれど、競りゲーでもあるな」
「交渉するタイプですか。じゃあカタンに近いのかな……」
たくさんの地形タイル。点数チットにコイン。そして斧。
「この斧なんですか? 戦闘もアリってこと?」
「これから説明するけど、戦闘はしない。金とブラフでぶっ叩くゲームだ。その斧は自分の土地タイルをぶっ壊すのに使う」
「一度配置したタイルを除去できるのか」
「違う。配られた手札を競りに出して、『売れ残ったもの』『他人の競りから買い取れたもの』だけが、自分の地図に繋げていける。かならず繋がるように置くように」
城の地形タイルを置くと、試しに一枚の地形タイルを出して、道や山などの絵柄が繋がる事を確かめる。地図が繋がるようにしか置けない。
「場に出せるのは売れ残ったものと買い取ったものね。了解」
「そうすると、効果の高い便利な地形ほど皆が欲しがるので自分では使えない、使いにくくなるわけだ」
「買われちゃうって事ですね?」
「わかります。高額の値札つけてわざと売れ残らせて自分で使うとかなら、できると」
「その場合、売れ残りは自分で買い取るので金がたくさん必要だ。金はどうやって稼ぐ?」
「高額で有用な地形を売る、と」
「そういうことだ」
金が無いと有用な地形が買えないし、自分の土地も安く売る羽目になるわけか。
なかなかに意地の悪い戦いができそうだ。相手の土地も見ておいて、どんな地形をほしがりそうか予想するのも大事だな。これは待ち時間も忙しいゲームになりそうだ。
「でな、この斧は競りに出す地形を売らずに破壊する宣言だ」
「見せびらかすだけ?!」
パシ、パシ、パシ! と試しに三枚の地形タイルを並べると、その一つに斧を置く。
「三枚配られて、一つは必ず破壊しなければいけない」
「自分はいらないけど、相手が欲しがりそうな地形を、これで」
「お前は酷いやつだな!」
「そういうゲームでしょう?!」
「まだ説明あるからな。競りで落として配置した地形タイルはな、道が繋がっているコインは収入になる。あとこっちの牛とかは……」
タイルを置くことができる場所、置いた場合の効果について説明が続く。建物とか牛も重要だぞ。
「これは長考したくなりますね」
「なら、武藤だけ持ち時間制にしよう」
「ちょっと! 酷いですよ!」
「課金で追加の時間を買わせてやってもいい。それなら公平だろ」
ややこしいルールなので、テストとして1ターンだけ回してみた後で本格的にゲームを開始する。
ゲームの勝敗は、このゲームの地形タイルを見てついついアーグルフェルトの地形タイルを思い出して説明を少し聞き逃した武藤がビリになって終わった。
「いや、誰も買わないから引き取らされた地形が自分のマップのドコにも置けない……って局面は初めて見たよ?」
「運悪すぎじゃないですかね?」
「斧で壊しておけばよかったんですよ」
「あ」
運の悪さもあるが、結局は武藤の選択ミスが敗因なのだった。
アイル・オブ・スカイというゲームになります。点数が取れる条件がたくさんあって、なかなか一位が取れないんですよ!




