主人公と受付嬢③
もうちょっとだけ説明会が続きます。
「まあ、しばらくはすんなり昇級し続けるんじゃないですか?クエスト成功率100%ですし、本人の品行も全く問題ないですし、あと一応、第三等級の所有品という信用も一応ありますし……」
「なんで2回そこに一応つけるの?」
ミラは小さく肩をすくめて答える。
「昇級の理由としては、一番のおまけですし……まあ、その信用がなければそもそも冒険者登録ができなかったとは思いますけど……」
「……なんで?」
「いや、だってなにをどう考えても曰くつき物件でしょ、彼女」
「……やっぱ分かります」
「そりゃ、分かりますよ。こんな実力者がこのご時世なんの噂にならないのもおかしいし、魔王討伐して行方不明のルーカスさんが急にお化けみたいに現れたら自分が生きてるのは内緒にしてほしいと言ったりこの急に奴隷の女の子を連れてきたと思ったら『冒険者登録させてほしい』とか……逆にどこを見たら普通だと思えるんですか」
じとりとした目でルーカスを見るミラ。
……言われてみれば、至極当たり前の事だった。
「……まあ、いいんですけどね。昔から面倒くさがりですけど本当の意味で意味のない事はしない人だと思っていますし、私も気持ちはわかりますし」
「わかるんだ」
「私の権力の範疇でなんとかなる範囲でしたし」
「なんとかなるんだ」
「 こんな田舎のギルドならあのクラスの実力者は多少の傷があろうとも囲いたいですしね……どう安く見積もっても実力だけなら『金等級』はあるでしょ、彼女。特にあの魔力の
扱い方と制御の精密さはちょっと異常です……『虹等級』相当って言われても驚きませんよ、私」
スイマセン姉さん。ちょっとどころの傷じゃないんです。言わないけど。
ちなみに事実上の1流冒険者に与えられるランクが2等級の金色の冒険者票(通称:『金等級」』。
1等級の虹色の冒険者票(虹等級)は突出した偉業を成した人のみ与えられる上、
定員が7名と決まっているため、例外中の例外だ。ちなみに定員が埋まった事はないらしい。
うーん、無理!
ちなみにルーカスから見た彼女の実力は『金等級』相当。 魔術戦では100点満点なんだけど、いかんせん魔術以外がからっきしなので懐に入られるとゲームオーバーなんだよな。
逆に言えば、魔術だけなら完全に『虹等級』クラスだと踏んでいる。王立魔術学院とかで研究職に
なったらそこでの功績で多分貰えると思う(完全に名誉職だけど)
流石元魔族四天王。
……あれ、そんな相手を奴隷にして好き勝手している自分って、もしかして危険?
「ちなみに、現役のときのねーさんならどう?勝てそう」
「余裕です。私にとって一番相性いい相手なので。詠唱入る前に懐入って鳩尾蹴っ飛ばしてジエンドですね。
一週間は喋れなくなるはずなので、これで勝ちは揺るぎなくなるでしょう」
即答だった。そして同じ魔術師として、自分もお腹が痛くなりそうな内容だった。
次の新しい魔術開発、物理防御開発にしようかな……
……………………
びっくくぅううううう!!??
エミリア「!!??」(お腹を急に抑えるエミリア)
同行者「どうしたんですか!?」
エミリア「ちょっと、急に鳩尾の辺りに……」
同行者「あたりに?」
エミリア「全速力の馬車の直撃を受けたような違和感が…」
同行者「死んじゃいますよ!?」
エミリア「……ん、大丈夫、もう痛みも消えたから」
同行者「(大丈夫かな、この人……)」
……………………
「にしても倒せると即答とはさすがミラねーさん。
元『虹等級』、二つ名『殲滅』のミラ・ストーンは伊達じゃない」
「やめてくださいルーカスさん。誰にも触れられたくない黒歴史ってあると思うんです」
ミラはその名前を聞くと心底嫌そうな表情をしながら、深いため息をついた。
「いや、『虹等級』なんてトップ中のトップランカーですし、なんで黒歴史扱いなんですか」
そしてなんでいつのまにかギルドの受付嬢なんてやってるんすか。
こちらは凄く助かってるからなにも言わないけど。
「だって私だって年頃の女の子なんですよ!『殲滅』なんて二つ名ついてからなんて、怖がって誰も言い寄ってこなくなったんです!」
泣き顔になりながらむうーっと膨れるミラさん。
「年頃(笑)女の子(笑)」
「表出ろヒヨッコ。生まれて来た事を後悔させてやるよ」
おっと、逆鱗に触れてしまいましたね。すっごい怖い。オーラ出てる。
現役時の口調が漏れてますよ、ミラさ~ん……あ。
「ねーさん、ねーさん」
「あん?」
「ねーさんの覇気で向こうの新人達が泡吹いて気絶してるんですが、それは」
ルーカスがチラリと後ろを指差すと、カウンターから少し離れたテーブルに座っていた新人冒険者たちが青ざめた顔で泡を吹きながら痙攣していた。 一人は目が白目を剥いて気絶して、口から泡を吹きながら椅子からずり落ち、もう一人は顔面からテーブルに突っ伏している。
三人は完全に気絶し、泡を吹いたままピクピクと痙攣している。
ちなみにベテラン冒険者はいつの間にかいなくなってた…
……だから長生きしてるのかね。凄い危機察知能力。見習わないと。多分できないけど。
ミラはハッとして表情を整え、いつもの受付嬢の顔に戻った。
「失礼しました……つい」
「ついで将来有望(?)な新人たちが三人も泡吹いて倒れてるんですが」
「うるさいですよ。貴方が『女の子(笑)』とか『年頃(笑)』とか余計なことを言うから……落とし前、どうつける気だ?あん?」
「今度の夕食、サクラダのトップコース全額おごりでいかがでしょうか」
「これで貸し借りチャラですね♪」
ミラは笑みを浮かべながら眼鏡をくいっと押し上げ、にこりと笑う。
ちなみに費用はエミリアのクエスト報酬から天引きになる。
エミリアの目のハイライトがまた曇る。
「ほら、ルーカスさん。責任持って新人たちにこれ飲ませて起こしてください」
ミラはカウンターの下から気付けポーションを取り出した。
「えぇ~~俺が?」
「もとはと言えば貴方が私の黒歴史を蒸し返すからです!」
「……はいはい。わかりましたよー」
一冒険者と受付嬢の癒着がそこにはあった。 多分表ざたにはならない。




