主人公と受付嬢④
「そんな事より、一つお願いしたい事がありまして」
「……なんですか。私にあなたの生存報告を遅らせた事の説明でもしてくれるんですか?」
「あ~まあ、そっちなら」
「そっち?」
他にもあるんですかとミラさんは睨む。
いや、そんな事言われましても。こっちの方は本当にシャレにならんので。
説明中…………
「貴方はバカですか?」
普通に呆れられました。
「いや、言いたい事は分からなくはないんですよ?」
魔王倒す→英雄になる→色々な立場と責任発生→逃げれなくなる→社会の歯車→BADEND
……嫌だから逃げよ!の流れ。
「なんでそこで取る選択肢が死んだフリなんですか……もっとこう、色々やりようがあるでしょうが!」
「いや、だって方向性は違えど同じ事したのがミラさんですよね」
「……貴方と同じ事と言われるのは釈然としないのですが」
『普通の女の子に戻りたい!』と言い、虹等級を返上し受付嬢になり、こんな辺鄙な田舎も田舎のギルドで働いているのがミラさんなのである。
ちなみにエレノアさんは初めてギルドに行った初日に 『……ねえルーカス、なんでただの受付にあのレベルの人材を置いてるの?人間って、大多数はまともに戦えない基本か弱い生き物だったんじゃないの?人類って、本当は凄く強くて恐ろしい生き物なんじゃ……』 と震えていた。
そういえばあの日から人間世界の常識とか敬語の本とか読んでいた気が……
うむ。
この誤解は俺に損はなさそうだから解かないでおこう。
「そう言えばエレノアの敬語ってミラさんが教えたんですか?」
「?ええ、そうですよ。敬語を教えたと言うよりは、常識を教えてあげたといいますか、あまり使いなれていなさそうな気がしましたので」
多分魔王にしか使ってなかったんじゃないかな……
なんとなくのイメージだけど、魔族って自分の格上以外にはあまり敬語とか使ってないイメージだし。
「敬語を使って優しくしてれば一回り以上の男は大概こちらに甘くなるのでお得ですよと教えておいてあげました」
「それは果たして常識なのでしょうか……」
そして俺には敬語になっても優しくないのですが。
「ルーカスさんと違って『はい、分かりました!』ととっても素直ですし、本当に素直で可愛い妹みたいなものですよ。ルーカスさんも、あの子の素直さを十分の一は真似した方がいいですよ?」
「さいですか」
それ、上下関係を分からされて従順になってるだけじゃ……
まあ、それでも別にいいか。
「俺のこと言えないよね、この人」
「私は普通の女の子に戻りたかっただけです。ヒモの貴方と一緒にしないでください」
ミラはため息をつきながら、受付の書類を整理し始めた。
「大体稼ぎたいなら貴方だって曲がりなりにも3等級の『紫色』の冒険者なんですから、自分が受ければいいじゃないですか。そちらの方が実入りはいいですよ?」
「俺はもう心穏やかに過ごすって決めてるの!魔王討伐の途中で色々魔術も開発して特許もいくつか持ってるし、この間口座見せてもらったら結構な額が定期的に振り込まれる予定みたいじゃん」
「この間の実験の触媒代と失敗の修繕代に消えてたみたいですけどね」
ちなみに特許代は触媒代で全て消えている。
修繕代は今自分の勤勉な奴隷さんが頑張って稼いでくれているのだ、ガンバ!
「というか、自分の消息隠したいんだったら、多分もうバレてると思いますよ?」
「え?」




