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青春アレルギー男、恋愛脳女を嘲笑う  作者: 十日兎月


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13/23

十三話 陽キャのノリには付いていけん



 質問はまだ続く。

「そうだったんだ~。サユって塾だとどんな感じだった~?」

「そうねー。最初に会った時は物静かなイメージだったかな。今もそうだけど、昔から大人っぽい子だったから、初めて話した時はちょっと気後れしちゃったのよね~」

「わかる~。なんかノリが合いそうにないっていうか、サユを見ていると自分が子供っぽく思えちゃうんだよね~」

「それそれ! ウチも同じ理由であんまり話したいって思うタイプじゃなかったんだけど、実際に話してみたらけっこう変な子で面白かったのよね~。今はもうイケメン狂いの変態って感じでしかないけれど」

 言って、紗雪に目をやりながら苦笑する光守。

 当の本人はこっちの会話なんて端からどうでもいいと言わんばかりに、依然として爆食いしている大空をうっとりとした面持ちで眺めていたりするが。

「そっか~。サユって昔からこんな感じだったんだね~。そういえばサユに初めて話しかけられた時も『姫奈さんって見た目は可愛い系だけど、下着は意外とセクシー系よね。もしかして部屋着も肌色成分多い系?』なんて言われてびっくりしたことがあるよ~」

 おっさんか。

「あははっ。紗雪らしい~。でも言われてもみれば、ウチの時もそうだったわね~。塾の休憩時間にノートを整理していたら『ねえねえ。さっきの先生ってけっこうイケメン系じゃなかった? わたしのパンツをあげたら付き合ってくれるかしら?』って話しかけられたのが最初だったし」

 痴女か。

 さすがにこれは水連寺も衝撃だったようで、光守と姫奈の話を聞いてあっけに取られている様子だった。

「え……紗雪さんってそういう人だったの?」

「萌、もしかして引いちゃった?」

「そんなことはないけど……」

 そう言いつつ、水連寺の笑みは引きつっていた。気持ちはわからんでもない。

「まあ、普通はそういう反応になっちゃうかもしれないわね。でもウチにとってはすごく面白かったのよ。だって普通は好きな人に下着をあげるなんて言わないじゃない? あの時は勉強尽くしでストレスも溜まっていたせいか、げらげら笑っちゃったわ」

 紗雪は不思議そうに首を傾げていたけれど、と笑みをこぼしながら光守は続ける。

「だから今もこうしてたまに会っては遊んだりしているわけ。あの子と一緒にいると退屈しないから」

「それ、すごくわかる~。ヒメもサユと一緒にいる時はいつも楽しいから~」

 笑顔で語る二人に、水連寺は興味深そうに「そうなんだー」と頷きを繰り返す。

「私、麗華ちゃんにこんなお友達がいたなんて全然知らなかったよ」

「紗雪はちょっと特殊だから。萌とは少し相性が悪いかもって思って……」

 いや、水連寺に限らず、大抵の人間は相性が悪いと思うぞ?(俺も含めて)

「私、紗雪さんと話すの、普通に楽しいよ? 二人の話を聞いてちょっとびっくりはしたけど……」

「そ、そう? それを聞いて安心したわ。色んな意味でおかしい子だけれど、これからも仲良くしてあげくれたら嬉しいわ」

「ウララン、ばっさり言いすぎ~。だいたい合ってるけれど~」

 と、光守の言葉にクスっと失笑する姫奈。

 こいつら、今日会ったばかりなのに、よくここまで会話が弾むな。基本的に陽キャは嫌いだが、こういうところは素直にすごいと思う。

「逆に、姫奈さんはどんな感じなの?」

「姫奈でもいいよ~。ヒメもモエモエって呼びたいし~。ていうか、もう呼んでるし~」

「えっと、じゃあ姫奈ちゃんで」

「うん。モエモエ~」

「えへへ。なんかちょっと恥ずかしいね……」

「ね~」

 なんだこれ? 見ていて全身がむず痒くなってくるのだが。

 青春アレルギーとはまた違った痒さというか、見ているだけで壁に頭を打ち付けたくなるというか。いわゆる共感性羞恥というやつなのかもしれない。別に知りたくもなかったわー、こんな気持ち。

「それで、姫奈ちゃん。姫奈ちゃんは普段どんなことをしているの?」

「特別なことはなにもしてないかな~。友達と一緒に買い物に行ったり、こうしてカラオケにも来たりとか、だいたいそんな感じ~。部活とか塾に行っているわけじゃないから、時間はわりとある方なんだよね~」

「えっと、付き合っている男の子とかはいないのかな? 姫奈ちゃん、可愛くて愛嬌もあるから、すごくモテそうに見えるんだけど……」

「今はいないよ~。だからサユに誘われた時、新しい出会いを求めるのもありかなって思って、こうやってカラオケに来てみたんだ~」

「あ、男の子と付き合ったこと自体はあるんだね」

「当たり前だよ~。女子高生だもん~。モエモエは一度もないの~?」

「う、うん。そういうの、まだよくわからなくて……」

「わからない~? それなのにこうしてカラオケに来たの~? 男の子を紹介してもらっているのはヒメたちの方だけど、それだったらここに来る理由もなくない~?」

 姫奈の当然とも言える疑問に、水連寺は「あっ……」と小さく声を漏らして固まった。気が緩んだあまり、うっかり口を滑らせたってところか。

 しかも言い訳すら思いつかないのか、見るからに視線を泳がして動揺している。あれじゃあ不審がってくれと言っているようなものだ。

 ま、俺には関係ないことだけどな。助ける義理もないし、このまま静観させてもらうとしよう。



「も、萌は同じ部員として一応来てもらったのよ! ほら、ウチたち恋愛研究部だし!」



 と、言葉に窮する水連寺を見かねてか、光守が上擦った声でフォローに入った。

「あ、そっか~。そういえば部活の一環でもあるんだっけ~? それでモエモエも来たんだね~」

 あっさり納得してくれた姫奈に「そ、そうなのよ~」とほっとした笑顔で相槌を打つ光守。水連寺の方も助けに入ってもらって安堵したのか、ひそかに胸を撫で下ろしていた。



「あれ~? でも、ちょっとおかしくない~?」

 だがしかし、安心するのはまだ早かった。



 今の話を聞いて新しく疑問が浮かんだのか、姫奈がまた矛盾を突いてきた。



「だったら、どうしてモエモエは恋愛研究部に入ったの~? そこまで恋愛に興味がないのなら、恋愛研究部なんて普通は入ろうとしないんじゃない~? だって『恋愛』を『研究』する部活なんでしょ~?」

「そ、それはあれよ。萌の社会勉強…………みたいな?」

 光守の苦しまぎれに出たと見える曖昧な言い方に、姫奈は小首を傾げて、

「社会勉強~? それってどういうこと~?」

「ほ、ほら、いつかは好きな人ができるかもしれないじゃない? 今はまだいいかもしれないけれど、大人になってから初めての恋愛をするのって色々大変そうだし、だから部活を通じて恋愛のいろはを学ぼうとしているわけよ」

「そうなんだ~。モエモエって頑張り屋さんなんだね~」

 姫奈の褒め言葉に「そんなことないよ~」とぎこちなく笑みを返す水連寺。

 嘘を吐いているわけではないが、真実を話しているわけでもないため、良心が痛んでいるのかもしれない。

 まあ正直に「他の部活を乗っ取るつもりが、なぜか乗っ取り相手と勝負をすることになってしまい、その関係でこうしてカラオケに来た」とは言えんわなあ。どう考えても頭がいかれているとしか思えない理由だし。

「それじゃあ他の子たちはどうなの~? モエモエと同じ理由~?」

「ウチは萌の付き添いって感じね。鳴は……家の門限が厳しくて、それで他の部よりも早く帰れるからって理由で入ったみたい」

「そっか~。鳴くんって見た目は体育会系なのに、どうして恋愛研究部みたいな文化系に入ったのかなって不思議に思っていたんだけど、そういう事情があったんだね~」

 実際はそれだけじゃなくて、人数合わせのために買収されたようなものだけどな。

「けど、本当にヒメたちを紹介してもよかったの~? 鳴くんみたいなイケメンだったら、同じ学校でも狙っている女の子とか多いじゃない~?」

「その点は大丈夫。ウチらの学校では全然モテてないから」

 そりゃそうだ。実際は女子なのだから。

 女子高だと同性にモテそうな容姿はしているけどな。

「へえ~。なんか意外~。あ、それでヒメたちを紹介したの~? 他の学校の女の子だったらワンチャンがあるかも的な~?」

「そ、そうそう! 鳴とはけっこう長い付き合いなんだけど、見た通り食い気しかない感じでしょ? だからつい将来が心配になってきちゃって、それで紗雪と連絡を取って、彼氏のいない女の子も一緒に誘ってもらったのよ。ねえ、萌?」

「えっ。う、うん。そんな感じ……かな?」

 こいつら、また適当な嘘を吐きおって。あとでまた疑心を抱かれても俺は知らんぞ。

「そっか~。まあサユは気に入っているみたいだし、鳴くんも嫌がっているわけじゃないから、わりとお似合いのカップルになれるかもしれないね~」

 相変わらずこっちのことなんて気にもせず飲食ばかりしている鳴と、その隣で甲斐甲斐しく世話を焼く紗雪を見ながら、微笑ましそうに目尻を緩める姫奈ではあるが、真実を知ったら一体どんな反応を示すのやら。

 少なくとも紗雪のショックはでかいだろうな。そのあたり、光守はちゃんと対策を打ってあったりするのだろうか?

 もしもこのまま紗雪が大空に告白でもしたら、それこそ大問題になってしまう気がしてならないのだが。

 ま、別にどうでもいいか。俺のせいじゃないし。

真実を知った紗雪が光守にどんな行動に出ようが、俺は傍観に徹するだけだ。だって俺に非はないのだから。

「あ、でも~、このままだとヒメだけフリーで終わっちゃうのか~。それは少し寂しいかも~」

 そう言ってから。

 唐突に姫奈が俺の肩に身を寄せて来た。

「ねえ、影山くん~。影山くんも今はフリーなんだよね~? よかったら、試しにヒメと付き合ってみる~?」

「いや、けっこう」

 間髪入れずに断った。

「ちょっと影山! いくらなんでもすぐに断るなんて失礼でしょうが! ほんとありえないんだけど!」

「麗華ちゃんの言う通りだよ。影山くんは真面目に答えただけかもしれないけれど、今のは冗談で返さなきゃ。いくらなんでも初めて会った男の子に──それも影山くんみたいな陰気そうな人にいきなり告白するはずないでしょ?」

「その陰気そうな奴が、芸人みたいな返しができると思っているのか? つまらない冗談で場を寒くするくらいなら、普通に断った方がマシだろうが」

 テーブルの上のコップ(ちなみに中身はコーラ)を手に取りながら、俺は続ける。

「仮に真剣な告白だったとしても、どのみち断っていたけどな。あんなコンビニに行くみたいなノリで好みでもない女と付き合えるか。アホらしい」

「あ、アホらしいって……。あんた、もうちょっと言い方ってもんがあるでしょう!? 少しは悪びれなさいよ!」

「どうもすみませんでしたゲェェェェップ!」

「きゃあああ!? ウチの目の前でゲップするんじゃないわよ! コーラ臭い~!」

「くぷぷー! ざまあwww」

「……影山くんって本当に最低だよね。女の敵って感じ」

「あざーっす! マジ光栄っす!」

「「全然褒めてないから!」」



「わ~。なんかびっくり~」



 と。

 俺たち三人のやり取りを見て、終始あっけに取られていた様子の姫奈が、なぜか小さく拍手しながら口を開いた。

「ウラランとモエモエもそうだけど、影山くんって意外と毒のあるタイプだったんだね~。もうちょっと大人しい子だと思ってた~」

「い、いつもこうってわけじゃないから! 人によって態度を変えることはあるけれど、今のはウチたちの前だけだから! そうよね、萌!?」

「う、うんっ。少し口が悪くなる時はあるけれど、本当は優しい、ようなそうでもないような……?」

 そこは優しい人って言いきれよ。いや、別に自分が優しい奴だとは思わないけれども。

「つまり、ウラランやモエモエの前では素になるってこと~?」

 姫奈の返しに、水連寺は困ったように眉尻を下げて、

「う~ん。素というのとはまた違うような……?」

「説明が難しいわよね……」

「え~? 二人共、もしかして影山くんを紹介したくないとか~?」

「それはない! 絶っ対ありえないから! なんなら今すぐ影山を貰ってほしいとすら思っているから!」

 腕を振って必死に否定する光守に、姫奈は「え~?」と半笑いで眉をひそめる。

「あ、でも、言われてもみればそうかもね~。本当に紹介したくなかったら、ここに呼んだりしないはずだし~」

「そうそう! ウチも萌も、こいつのことなんてなんとも思ってないから安心してちょうだい! 今ならポケットティッシュも付けてタダ同然でプレゼントするわ!」

「勝手に人をバーゲンセールみたいに売りつけるな」

 しかも特典がポケットティッシュだけかよ。カート入りの在庫処分よりも扱いがしょぼすぎる。

「ふふっ。二人のやり取り面白~い。漫才でも見ているみたい~」

「ウチ、こいつと漫才しているつもりは微塵もないんだけど……」

 まったくもって同意見だ。

「でも、ウラランが思っているより、影山くんって面白い方だと思うよ~? ツッコミもしっかりしてるし~」

「だからこっちは漫才をしているわけじゃないっつーの」

 俺が憮然として言葉を挟むと、なにが面白いのか姫奈はニコニコ顔で「けど~」と続ける。

「なんだかんだ言っても、ちゃんと反応を返してくれるよね~。本当に嫌なら無視すればいいだけの話なのに~」

「相手にもよるが、無視するのは性に合わないだけだ。バカにしてきた奴をそのまま放っておくなんて我慢ならないからな」

「……だからあんた、ウチがなにか言うたびに噛み付いてくるの? 男なら、少しは笑って許すだけの心の広さを見せなさいよね……」

 呆れた顔で言う光守。つーか、お前が言うな。

「ていうか姫奈ちゃん、こんな奴が面白いって本気なの? 紹介しておいてなんだけど、こいつほど性根が腐っている男はなかなかいないわよ?」

「ん~。確かにストレートに物を言うタイプだと思うけど、それって裏表のない人とも言えるじゃないかな~? 少なくとも、ヒメはウラランが思っているほど悪いイメージは持ってないよ~」

 へえ。ただの頭の軽そうなギャルかと思えば、案外柔軟な思考をしているじゃないか。

 今の話を聞いて「えー……」と顔をしかめている光守や水連寺に爪を煎じて飲ませてやりたいくらいだ。

「あのー、姫奈ちゃん。さっき影山くんに『付き合ってみる?』って訊いていたけれど、もしかして本気だった……?」

「さあ~? みんなはどう思う~?」

 と、わざとらしいほどのニコニコ顔ではぐらかす姫奈。

 そんな小悪魔めいた笑みを浮かべる姫奈に対し、光守と水連寺は慌てた様子でテーブル越しに顔を寄せ合って、

「ど、どうしよう麗華ちゃん。姫奈ちゃんがもし影山くんに本気だったら……」

「どうしようって言われても……。ウチたちにしてみればありがたいっていうか、恋愛研究部のことを考えるなら応援すべきなんでしょうけれど……」

「でも、相手は影山くんだよ……?」

「そこなのよね~。廃棄物を押し付けるみたいで、良心が痛むっていうか……」

「うん。なんだか申しわけない気持ちになっちゃうよね……」

「お前ら、そういう陰口はせめて俺のいないところで言えよ」

 しかも会話が丸聞こえなんだよ。今までもそうだったが、少しは隠す気持ちを持て。



「あ、そうだ~。せっかくだし、みんなでLINEを交換しようよ~」



 もっとみんなと仲良くなりたいし~、とおもむろに制服のポケットからスマホを取り出した姫奈を見て、光守と水連寺がうんうんと明々として頷く。

「それ、いいわね! ウチは大賛成!」

「私も。姫奈ちゃんとはもっと話してみたいって思っていたから」

「ほんと~? すごく嬉しい~!」

 そう言ってはにかむ姫奈に、光守と水連寺も揃って相好を崩す。

「けど、紗雪と鳴はどうする? たぶんウチたちの話なんて全然聞いてないわよ? さっきから鳴はばくばく食べてばかりだし、サユはそれを見てうっとりとしたままだし」

「サユと鳴くんはあとで交換すればいいんじゃないかな~。で、今はヒメたちだけで交換っていうのは~?」

「そうね。そうしましょうか」

 言いながら、そばに置いてあった鞄からスマホを取り出す光守。

「ほら、影山もぼーっとしてないで、さっさとスマホを取り出しなさいよ」

「は? なぜ?」

「いや、なぜもなにも、スマホがないとLINEの交換ができないでしょうが」

「そういう意味じゃなくて、なんで俺がLINEの交換なんてやらなきゃいけないんだって話だよ。ていうか前にも言ったが、LINEはアプリすら入れていないままだぞ」

「はあ!? あんた、まだ入れてなかったの!? ほんと呆れた……」

 なんでLINEを入れていないくらいで呆れられなきゃならんのだ。わけがわからん。

「え~? 影山くん、LINEやってないの~? どうして~?」

「影山くん、友達のいない寂しい人だから……」

 おいこら水連寺。お前もお前で勝手に人を憐れむな。失礼だろうが。

「それなら影山くん、今日からLINEを始めようよ~。すごく簡単だし~」

「連絡事項は電話で十分」

「影山くん、そういう意味じゃないから。姫奈ちゃんはみんなと楽しくメッセージのやり取りをしたいって言っているんだよ」

「だったらメールでも十分だろ。わざわざ不要なアプリを入れる必要なんてないな」

「ああもう! あんたって奴は、つくづくありえないほど面倒くさい男ね! うだうだ言ってないで、さっさとアプリをインストールしなさい! じゃないと、佐伯先生にこのことをチクるわよ!?」

「好きにしろよ。それくらいのことで佐伯先生が動くとは思えないけどな」

「それはどうかしら。こうして姫奈ちゃんが好意で連絡先を交換しようって言ってくれているのに、それを無碍にしているのよ? これって先生との約束に反するじゃないの?」

「はあ? 反するってどこが?」

「だって、基本的にはウチたちに協力しなきゃいけないはずでしょ? LINEの交換だって姫奈ちゃんたちと仲良くするのに必要なものだし、もしかしたら恋人同士になれる可能性だってあるかもしれないのよ? それなのにLINEの交換を断るなんて、先生にしてみたら約束を破ったようなものなんじゃないの?」

「それは……」

 くっそ。めちゃくちゃ腹立たしいが、反論の言葉が思い浮かばない。実際、光守たちとの勝負を反故にしたと思われかねないだけに。

「ま、どうしてもって言うのなら無理には止めないけれど。あー、楽しみだわ~。あんたの恥ずかしい過去を先生から聞ける日が~」

「くう……っ。わ、わかった。交換すればいいんだろ、交換すれば」

 断腸の思いで、渋々ズボンのポケットからスマホを取り出す。

 そんな俺を横目で見ていた光守が、勝ち誇ったように「ふふん」と鼻を鳴らした。うんこでも漏らせばいいのに。それで次の日から「うんこウーマン」って呼ばれて晒し者になればいいのに。

「まったく、最初からそうやって素直に従えばいいのに。さてと、じゃあさっそく交換しましょうか」

「そうだね。あ、ついでにグループも作っちゃうのはどうかな?」

「モエモエ、ナイスアイデア~」

 などと、スマホを片手にキャッキャと姦しくはしゃぐ女子どもに挟まれながら、俺は今日何度目になるかわからない溜め息を吐いた。



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