正体不明の敵
俺は今目の前に広がっている光景に固まってしまっていた。〈遠視〉で見える視界の先には全てが石化した村があったのだった。
俺はこのままここにいても調査は出来ないと村の入り口まで近づいた。
村の入り口までたどりつくと俺は〈気配感知〉の範囲を広げ辺りに気配がないかを探した。しかし、わずかな生物の反応すら感知できなかった。
村の中に入ろうとした俺だったが、それを拒むかのように足が動こうとしない。気付けば全身から嫌な汗が噴き出していた。
(本能的に村の中に入ることを拒んでいる?ただ村の中に入らないと調査が進まないからどうにかしないとね。)
これが経験を積んだ冒険者であるなら、すぐにギルドに報告をするのだが、冒険者になって初の依頼である光田はそんなことは全く考えていなかった。
俺はとりあえず村の周囲の調査をしてみることにした。周囲を警戒しながら進んでいると人の石像を見つけた。
その人の顔は恐怖を浮かべたまま石化していた。そのあまりのリアルさに俺は全身に寒気が走り、吐き気がこみ上げてきた。
そして俺は気がついた。その石像の近くには他にも4つの石像があり、その顔は一様に恐怖を浮かべていることに。
俺はついに耐えきれなくなり、その場に吐いた。口の中に広がる不快感に一瞬くらっとなった。
(こいつらはおそらくエリーの言ってた冒険者だろう。俺同様、調査に来てたところを何かに襲われたってところか)
俺の意識がはっきりしてくると、先ほどまで感じていた吐き気はいつのまにか消え去り口の中の不快感だけが残っていた。そういえば前にもこんなことがあったような…
しかし俺がそのことについて深く考えることはできなかった。なぜなら、俺が広げていた〈気配感知〉がこちらに近づいてくる2つの反応を捉えたからだ。
「あっれ〜また、人がいる。」
「ガァッ!」
しばらくして姿を現したのは、12、3歳くらいの見た目の銀髪の子供と白色のドラゴンだった。ドラゴンだけでなく、子供も空に浮いている。
驚いたことに、子供の方の力はドラゴン以上で俺ほどではないと思うがかなり強いはずだ。そして、さっきの言葉とこの村の様子からしておそらく…
「もしかしてあれかな。久しぶりに村に帰ってきたら村がそのまま石化して驚いてたとか。それともこの前の人たちみたいに冒険者の人かな?」
子供は地上に降り立つと俺の方へと近づいてくる。
「この村は君が石化したのか?」
俺はなるべく感情を表に出さないようにしながら聞いた。
「うん。そうだよ。新しく作った魔法陣の性能チェックを頼まれたから人を探していて、そしたらちょうどいいところにこの村があったから魔法陣の効果を試してみたんだ。。定期的にここに来て魔法陣の様子を確認しに来てて、今日で最後のつもりだったんだけど君も運がないね〜」
そう言って子供は腰の剣を抜くと俺に斬りかかってきた。
その速さは想像以上に速く一気に俺の懐に入るとそのまま剣をふりおろしてくる。
俺は足に力を込め思いっきり後方に跳んだ。俺の馬鹿げたステータスのおかげでギリギリの跳躍だったにもかかわらず避けるのに成功した。
「お兄さん、なかなかやるね。今の攻撃をかわすなんて。でも、ドラゴンと僕で同時に攻めたらどうなるかな?」
いつのまにかドラゴンの方も戦闘態勢に入っていた。
やるしかないみたいだな。
俺はネックレスに魔力を込めて刀に変えると刀を構えた。
「お兄さん、なかなか変わった武器を持っているみたいだね〜。まぁ、いいや。それじゃあ、死んじゃえ。」
こうして俺たちの戦いが始まった。




