607 眠れるお姫さま
あぁ、これは夢だな……。
誰でも、とは言えないが、オレは、夢の中でこれは夢だと自覚するときが多々ある。
まあ、だからと言って夢を操作できるわけでもなけりゃあ、故意に終わらすこともできねー。流れるままに見続けるだけであった。
夢の中のオレは、なんか必死に走ってる。
どこか船の中なのか工場なのかはわからんが、手には未来的な小銃をかかえ、ときたま後ろに向けて撃っていた。
……戦争でもしてんのか……?
夢の記憶なんて覚えちゃいねーが、今生で見るような夢じゃねーよな? でも、この夢、ってか、場面か? なんな見たときあんな……?
必死に走ってると、横を外人の女が追い抜き、なんか突然視界から消えた。なんぞな?
いつの間にか場面は変わり、地下室っぽいところにいた。
そこには無数のなにかが敷き詰められていた。
……卵……?
卵と言うよりはラグビーボールに近い。つーか、これって……。
なにか嫌な汗が流れてくるが、夢の中なのでどうすることもできず見詰めていると、卵がバナナの皮を剥くように開いて行く、
夢の中のオレが未来的な小銃を撃ち、卵を破壊する。
撃ちに撃ちまくっていると、また場面が変わり、なにやら捕まっていた。
目の前にはやはりラグビーボールのような卵がある。
ペキと音が聞こえ、先程は違って雛が殻から出るかのように割れていく。
卵の中でなにかが光る。それはオレを見ている。
──出て来る!
「ベー!」
と、出て来たものが顔に張りついたとこで夢から覚めた。
「……夢、か……」
夢から覚めたとわかるのに、なぜか瞼が開かない。なんなんだ、いったい!?
訳がわからずベッドの上で固まっていると、横でなにかが蠢き、そして、視界が開けた。
「……知ってるパンツだ……」
前に見たことがある大人パンツ……って、プリッつあんか。でもなんでプリッつあんが?
「マスター、おはようございます」
知ってるパンツの横にメイド型のドレミが現れた。
訳がわからないまま上半身を起こすと、そこはオレの部屋だった。
「……あ、ああ、夢か……」
徐々に脳が覚醒し、この状況を理解した。
「プリッつあん、またオレの顔の上で寝てたのかよ」
マイハウスで寝るプリッつあんだが、たまにオレの顔の上で寝ると言う謎習性を見せるのだ。
「ったく。夜な夜な変なものを産み落としてるとか止めてくれよ」
まあ、寝ているオレにそんなことはできないが、なにが起きるかわからない世界。油断はするまい。
ベッドから抜け出し、着替える。
すっきりさっぱりして部屋を出ようとしたが、ドアの前で回れ右。未だプリッつあんを抱えるドレミのもとへと向かう。
「プリッつあん、なんかしたのか?」
いつもならオレと同じくらいに起きるんだが、顔の上で寝るときは、なぜか寝坊するのだ。
「はっきりとはわかりませんが、プリッシュさまは、寂しいのだと思います」
はぁ? 寂しい? なんのこっちゃい?
ドレミに説明を求めるが、ドレミはオレを見るだけで答えない。なんなんだよ、その非難する目は?
いや、ドレミの目はいつもの通り。なんら変わりはないんだが、なぜかそう感じたのだ。
「…………」
なんかよくわからんが、そんな目で見られるのは不本意だし、逆らいがたいものがある。
はぁ~とため息一つ吐き、ドレミの腕の中からプリッつあんを引っこ抜き、頭の上へと乗せた。
「ドレミも来い」
手を差しのべると、メイド型ドレミが猫型ドレミへとトランスフォーム。床を蹴り、オレの腕の中に収まった。
「手間のかかるお姫さまたちだ」
またため息一つ吐き、部屋を出た。




